2017チャンピオンズカップ


斜陽父系の反転攻勢

 1995年にダート交流重賞が設けられて中央と地方の交流が活発になり、重賞の数も増えると、その体系化や格付けを管理するためダート競走格付け委員会が発足した。それが1996年の11月。翌1997年4月から本格的な「ダートグレード競走」が行われるようになり、それから20年を経た今では、一流馬がG1/Jpn1だけに出走して1年を過ごせるような環境が整った。負担重量が増えるなどしてダートの強豪が勝つほどに辛い立場に追い込まれていく1990年代初めまで状況から考えれば結構なことだ。実際に今回の出走馬ではアウォーディーUSA、コパノリッキー、ゴールドドリームの3頭が今年ここまでG1/Jpn1だけに出走して臨む。アポロケンタッキーUSAとサウンドトゥルーは前々走の日本テレビ盃がJpn2だが、下表に示したように今年のこのレースはレースレーティングによって並べると現時点で第3位2位タイとなる。これは芝における京都大賞典-G2や毎日王冠-G2、あるいは中山記念-G2に似た立場にあって出走馬のレベルが高くなりやすいためだ。直近のJBCクラシックやみやこS-G3の結果に目を奪われがちなところ、限りなく1に近い2の成績をあえて見直してみたい。◎アポロケンタッキーUSAはカナダの殿堂入りスプリンター、ラングフールからダンチヒへと遡る父系。芝で繁栄するデインヒルUSA系を別にして、日本ではアジュディケーティングUSA産駒が残り少なくなって直系は風前の灯といえる系統だが、本年本邦輸入後の産駒がデビューしたダンチヒ晩年の傑作ハードスパンUSAは2歳馬が既に中央で8頭が9勝を挙げている。9のうち8勝はダートだから、このあとダートの上級戦が増えてくれば、活躍の場はより広がりそうだ。ロベルト系でもヘイロー系でもそうだが、途切れそうになったところに中興の祖ともいうべき存在が現れることはよくあって、これからダンチヒ直系の反攻が見られる可能性は十分にある。ラングフールは、代表産駒でホイットニーH-G1勝ち馬ローヤーロンが2003年生まれ、カナダ三冠馬のワンドは2000年生まれ、ガゼルH-G1などG1・2勝の牝馬インペリアルジェスチャーは初年度の1999年生まれと、そのあたりから2004年生まれあたりまでが全盛期であり、19歳時の種付けとなる2012生まれの本馬は単独でひょっこり現れた一流馬。オグリキャップやアグネスデジタルUSAにたとえるとちょっとずれるかもしれないが、血統的な脈絡とか流行から外れたように見えるところには共通した部分がなくはない。母の父のゴーンウエストもミスタープロスペクター系ながらミスタープロスペクター系らしくない面も多いつかみどころのない存在で、それでいてその血を継ぐ大物は多い。祖母レイクレディは米国の3歳春先の牝馬のG2として重要なファンタジーS-G2で2着となった活躍馬で、この牝系を5代まで遡って唯一のブラックタイプ獲得馬。父母の系統いずれから見ても、突如現れた一流馬といえる。こういった血統の異色なことのアドバンテージはこのレースに限らず日本のダートの一流馬にしばしば見られる。芝馬が刃物を研ぎ上げるような洗練の方向へ進むのと逆の方向性といおうか、さまざまな雑味も取り込むことがダートで求められる力強さとかタフさにつながるという面もあるだろう。ちなみに、ダンチヒ×ミスタープロスペクターというざっくりとした捉え方をするなら、かつての偉大なスプリンター・デイジュールと同じパターンとなる。 ※アポロケンタッキーUSAは右前肢跛行のため出走取消


今年ここまでのダート重賞ベスト10 (レースレーティング順)
順位RRレース日付場所条件距離1着馬kg2着馬kg3着馬kg4着馬kg
1114.25JBCクラシック111/3大井3歳上2000サウンドトゥルー571170.2ケイティブレイブ571150.2ミツバ571140.6アウォーディー57111
2=114.00フェブラリーS12/19東京4歳上1600ゴールドドリーム571160.0ベストウォーリアUSA571150.1カフジテイク571140.3エイシンバッケン57111
2=114.00日本テレビ盃29/27船橋3歳上1800アポロケンタッキーUSA581160.0サウンドトゥルー581150.1ケイティブレイブ581140.2モーニンUSA57111
4112.75かしわ記念15/5船橋4歳上1600コパノリッキー571170.4インカンテーション571130.5モーニンUSA571120.8ベストウォーリアUSA57109
5112.50帝王賞16/28大井4歳上2000ケイティブレイブ571170.3クリソライト571140.9アウォーディーUSA571101.0サウンドトゥルー57109
6=110.50マイルチャンピオンシップ南部杯110/9盛岡3歳上1600コパノリッキー571170.6ノボバカラ571090.6キングズガード571090.8カフジテイク57107
6=110.50JBCスプリント111/3大井3歳上1200ニシケンモノノフ571120.0コパノリッキー571110.0ブルドッグボス571100.0ネロ57109
8=108.75東海S21/22中京4歳上1800グレンツェント551100.1モルトベーネ561090.2メイショウウタゲ561080.2ショウナンアポロン56108
8=108.75根岸S31/29東京4歳上1400カフジテイク561130.2ベストウォーリアUSA581140.6エイシンバッケン561040.6キングズガード56104
8=108.75武蔵野S311/11東京3歳上1600インカンテーション571120.1サンライズソア551090.4アキトクレッセント561050.4ノンコノユメ58109
※JRA発表の重賞・オープン特別レーティングの暫定値。RR(レースレーティング)は入線順上位4頭のレーティングの平均。太字は本競走出走馬

 スマートファルコン、エスポワールシチーなど一戦毎のパフォーマンスの高さと長期間にわたる強さを両立できるのがゴールドアリュール産駒の一流馬の特長で、今年は上半期にエンプレス杯のワンミリオンス、下半期にもJBCレディスクラシックのララベルなど牝馬にもダートの一流馬が出るようになった。○コパノリッキーは前走で余技のスプリントもそれなりに格好をつけた。どんな形でも力を出せるようになったとすると、3年連続で人気を裏切ってきたこのレースでも、今度は良い方への裏切りがあるかもしれない。

 ▲サウンドトゥルーはフレンチデピュティUSA×フジキセキという現代の主流血統同士の組み合わせ。レジネッタやライラプスなど多くの活躍馬が出たフレンチデピュティ×サンデーサイレンスのバリエーションのひとつと見ることはできる。しかし、その先に隠れた祖母のキョウエイヨシノは準オープン勝ちまでしかないものの、強烈な追い込みを武器にした牝馬で、ごくまれに壷にはまると鮮やかだった。その父プラウドデボネアUSAはエルムSのエンゲルグレーセが唯一の重賞勝ち産駒で大成功したとはいいがたいが、リファールと名牝プラウドデルタの組み合わせという名血は、本馬のパンチ力にもつながっていると思う。

 △メイショウスミトモは天才肌の多いゴールドアリュール産駒には珍しい叩き上げ型。母の父は2001年から8年連続で地方競馬リーディングサイアーとなったアジュディケーティングUSAで、母の産駒ロングプライドはユニコーンSに勝った。祖母の産駒にはフェブラリーSのほか第1回ジャパンカップダートに勝ったウイングアローがいるが、3代目にノーザンダンサー直仔の大物ヌレエフとダンチヒが並んで父系祖父がサンデーサイレンスUSAという配合は現代的で、懐古趣味とはいい切れない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2017.12.3
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