2017朝日杯フューチュリティS


カメハメハ王朝は続くよ

 暮れに東西に別れて行われていた3歳ステークスは1991年に牡牝混合戦が朝日杯3歳Sに一本化され、阪神3歳Sが牝馬限定の阪神3歳牝馬Sとなった。中山競馬場での朝日杯は2013年までの22年間その形で行われ、そのうち11頭の勝ち馬が3歳以降にG1級レースに勝った。単純に割合で比較すると1991年から昨年まで26年で10頭の阪神ジュベナイルフィリーズよりも中身が濃かったのではあるが、2014年に阪神に移ってからの3回の勝ち馬からG1勝ち馬は未だ出ておらず、ダノンプラチナが富士S-G3に勝ったのみという結果。まだ3回なので何ともいえないとしても、今のところは中山時代の水準に達していない。もっとも、2歳戦の価値を3歳以降の出世の度合によって計るのが必ずしもつねに正しいわけではなく、オーストラリアのように2歳でゴールデンスリッパーSに勝って引退、種牡馬入りという文化もある。たとえばフジキセキは不可抗力により結果的にそのような形での種牡馬入りとなったが、例外的な存在であるのは確かで、やはりオーストラリアのように馬産が短距離主体でないと、あえて2歳戦に全力投入ということにはなりにくい。ただ、2歳戦全力とはいかないまでも、早熟で、ひたすら速く走ることに秀でた資質は種牡馬選択の上でも大切な要素。そういった選抜は朝日杯FS-G1が果たすべきものであり、ホープフルS-G1にはクラシックへの助走としての性格がある。そのように2つのG1に割り振るべきところ、2000mを中山、1600mを阪神外回りとしたのはちぐはぐな印象が拭えず、その歪みが朝日杯に強く出たとはいえるのではないだろうか。
 キングカメハメハはローズキングダムとリオンディーズの2頭の朝日杯勝ち馬を含め、これまで10頭の2歳重賞勝ち馬を出している。今年は直仔の出走がないが、大物後継種牡馬ロードカナロアが2頭の産駒を送り込んでいる。◎ステルヴィオは父の産駒として最初に勝ち上がり、今のところ最長距離のレースに勝った。種牡馬としてのロードカナロアは自身のようなスプリンターをそこそこ出すとしても、より多くの産駒が将来的には汎用性の高いキングカメハメハ系らしい成長を見せると想像される。ファルブラヴ産駒の母ラルケットは2歳時にデビューから2連勝して阪神ジュベナイルフィリーズに挑んで10着。3歳時にクイーンCで3着となった。祖母アズサユミはサンデーサイレンスUSA産駒で父と同じケイアイファームの生産馬。その産駒には阪神ジャンプSのクランエンブレム、新潟ジャンプSのクリーバレンがいて、3代母ファーストクラスの孫にはアイビスサマーダッシュ2着のタカオルビーがいる。4代母スイートコンコルドは名馬シンボリルドルフの全姉にあたる。父系曽祖父キングマンボの母の父ヌレエフと、母の父の父フェアリーキングがノーザンダンサー直仔の叔父とおいの関係にあり、これはキングマンボとサドラーズウェルズ牝馬の組み合わせによって成功したエルコンドルパサーUSAの配合に通じるものがある。


朝日杯勝ち馬のその後
場所優勝馬2歳時
戦-勝
その後の主な勝ち鞍
1991中山ミホノブルボン3-3マグニテュードIRE東京優駿、皐月賞、京都新聞杯
1992中山エルウェーウィンIRE3-3Caerleonアルゼンチン共和国杯
1993中山ナリタブライアン7-4ブライアンズタイムUSA東京優駿、菊花賞、皐月賞、有馬記念
1994中山フジキセキ3-3サンデーサイレンスUSA弥生賞
1995中山バブルガムフェロー4-3サンデーサイレンスUSA天皇賞(秋)、毎日王冠、スプリングS
1996中山マイネルマックス5-4ブライアンズタイムUSAマイラーズC
1997中山グラスワンダーUSA4-4Silver Hawk有馬記念×2、宝塚記念、毎日王冠
1998中山アドマイヤコジーン4-3Cozzene安田記念、東京新聞杯、阪急杯
1999中山エイシンプレストンUSA3-2Green Dancer香港マイルG1、クイーンエリザベス2世CG1
2000中山メジロベイリー5-2サンデーサイレンスUSA 
2001中山アドマイヤドン3-3ティンバーカントリーUSAフェブラリーS、JBCクラシック×3
2002中山エイシンチャンプUSA9-3ミシエロUSA弥生賞
2003中山コスモサンビーム7-4ザグレブUSAスワンS
2004中山マイネルレコルト5-4チーフベアハートCAN 
2005中山フサイチリシャール5-4クロフネUSA阪神カップ
2006中山ドリームジャーニー4-3ステイゴールド有馬記念G1、宝塚記念G1、大阪杯G2
2007中山ゴスホークケンUSA3-2Bernstein 
2008中山セイウンワンダー4-3グラスワンダーUSAエプソムCG3
2009中山ローズキングダム3-3キングカメハメハジャパンCG1、京都大賞典G2
2010中山グランプリボス4-3サクラバクシンオーNHKマイルCG1、スワンSG2
2011中山アルフレード3-3シンボリクリスエスUSA 
2012中山ロゴタイプ6-3ローエングリン安田記念G1、皐月賞G1、スプリングSG2
2013中山アジアエクスプレスUSA3-3ヘニーヒューズUSAレパードSG3
2014阪神ダノンプラチナ4-3ディープインパクト富士SG3
2015阪神リオンディーズ2-2キングカメハメハ 
2016阪神サトノアレス5-3ディープインパクト 
太字はその後のG1(級)勝ち馬

 もう一頭のロードカナロア産駒ダノンスマッシュは祖母が1993年のブリーダーズCディスタフ-G1の勝ち馬ハリウッドワイルドキャット。母の父ハードスパンUSAは2008年に米国で種牡馬となりアラバマS-G1のクエスティングやウッドメモリアルS-G1のウィキッドストロング、ランドウィックギニー-G1のルロマンなど南北両半球で8頭のG1勝ち馬を既に出しているが、日本では今年の2歳馬が初年度産駒。ファーストクロップサイアー同士の組み合わせという珍しいケースになった。ダンチヒ系牝馬にミスタープロスペクター系種牡馬という定番配合で、スピードの争いとなれば強い。▲。

 ○ダノンプレミアムは阪神移設後3年で2勝を挙げるディープインパクト産駒。現2歳世代は英国に渡ったサクソンウォリアーがレーシングポストトロフィー-G1に勝っており、ワグネリアンも東京スポーツ杯2歳S-G2に勝った。母インディアナギャルIREは46戦して芝で3勝、オールウェザーで3勝を挙げたタフな牝馬で、愛国のブルーウインドS-G3、リッジウッドパールS-G3で3着となった。その父インティカーブはロベルト系レッドランサムの直仔でクイーンアンS-G2・8馬身差圧勝によりインターナショナルクラシフィケーションで130の高いレートを得た。種牡馬としてはスノーフェアリーIREを出し、母の父としてはディープインパクトとの組み合わせで京都新聞杯-G2のサトノラーゼン、ハーツクライとの組み合わせでチャレンジC-G3のサトノクロニクルを送っている。5代母クリスタルパレスの産駒には英ダービー馬ロイヤルパレス、孫に英セントレジャーのライトキャヴァルリーがいる古くからの名門。

 牝系の格では△タワーオブロンドンも負けていない。祖母シンコウエルメスIREの孫には皐月賞馬ディーマジェスティ、サンタラリ賞-G1のソーベツがおり、3代母ドフザダービーの産駒には英ダービー馬ジェネラス、英オークス馬イマジン、曾孫にムーランドロンシャン賞-G1のムーンライトクラウドらがいる。凱旋門賞連覇のトレヴもこのマルガレーゼン系だ。父レーヴンズパスは芝でクイーンエリザベス2世S-G1、ダートでBCクラシック-G1に勝った二刀流。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2017.12.17
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