2017有馬記念


ネオユニヴァースの土壇場力

 穴の定義を単勝5番人気以下とすると、1997年からの20年間で馬券圏内に食い込んだ穴馬は23頭。年平均1.15頭いることになる。下表に示した穴馬一覧の血統をざっくり把握するとサンデーサイレンスUSA系とノーザンダンサー系の占める割合が高い。いまどきG1でも下級戦でも人気馬でも穴馬でも傾向としてはそのようなものだろうが、サンデーサイレンスUSA×ディクタスFR×ノーザンテーストCANという配合のステイゴールドが種牡馬として長くこのレースを支配した点を見ても、サンデーサイレンスUSA的な瞬発力だけでなく、ノーザンダンサー的なパワフルなスピード持続力が求められるとはいえる。これら穴馬のボスといえるアメリカンボスUSAは単勝116.9倍13番人気でマンハッタンカフェの2着となったが、その母の父はノーザンダンサー直仔のディキシーランドバンド。ダート向きの性格も強いディキシーランドバンドはわが国で菊花賞馬デルタブルースや阪神ジュベナイルフィリーズ-G1のレッドリヴェールの母の父となったほか、今年も娘の仔は小倉2歳S-G3のアサクサゲンキUSAやローズS-G2のラビットランUSAが活躍している。ストリートセンスとモナルコス、2頭のケンタッキーダービー馬の母の父ともなっている。◎サウンズオブアースは一昨年の2着馬でもあり、既に実績を残しているが、今回は当時より更に人気薄となることが予想される。父のネオユニヴァースは2010年の勝ち馬ヴィクトワールピサを出しており、今年の春にはネオリアリズムが6歳で香港のクイーンエリザベス2世カップ-G1を制し、早熟説を払拭してもいる。ドバイワールドカップ-G1を制したヴィクトワールピサにせよ、極悪馬場の日本ダービーを勝ったロジユニヴァースにせよ、力任せに大仕事をやってのける馬力はサンデーサイレンスUSA系随一といえる面があり、今回のように上位拮抗でしかもそれが強力という場面では、穴馬としての期待をかけやすい存在といえる。半兄のドミニカンはゴーンウエスト系エルコレドール産駒でケンタッキーダービー-G1の前哨戦となるブルーグラスS-G1に勝った。セクレタリアト産駒の祖母サンライズシンフォニーの曾孫にはレイヴンランS-G2のマダムカクタスがいる。3代母ウィンブルドンスターの子孫はチリに渡って活躍し、曾孫にチリ銀杯-G1のケリドマチト、玄孫にアルベルトソラーリマグナスコ賞-G1のニエタケリダが出ている。4代母は名牝クリスエヴァートで、同馬はエイコーンS-G1、マザーグースS-G1、CCAオークス-G1のニューヨーク牝馬三冠を制し、子孫にはチーフズクラウンからリーチザクラウンまで多くの活躍馬が出た。5代母ミスカーミーの曾孫が2002年に13番人気でシンボリクリスエスUSAの2着となったタップダンスシチーUSA。同馬はその後ジャパンカップ-G1や宝塚記念-G1に勝ち、ケンタッキーダービー馬ウイニングカラーズも属するこの一族の名声を更に高めた。


有馬記念過去20年の穴馬
年度着順馬名性齢騎手人気単勝
オッズ
母の父
19983ステイゴールド牡4熊 沢1140.8サンデーサイレンスUSAディクタスFR
19993テイエムオペラオー牡3和 田512.0オペラハウスGBBlushing Groom
20003ダイワテキサス牡7蛯 名1381.0トロメオIREノーアテンションFR
20012アメリカンボス牡6江田照13116.9KingmamboDixieland Band
20013トゥザヴィクトリー牝5武 豊617.7サンデーサイレンスUSANureyev
20022タップダンスシチー牡5佐藤哲1386.3Pleasant TapNorthern Dancer
20023コイントス牡4岡部幸829.2サンデーサイレンスUSAEgg Toss
20043シルクフェイマス牡5四 位927.3マーベラスサンデーCaerleon
20053リンカーン牡5横山典634.0サンデーサイレンスUSAトニービンIRE
20062ポップロック牡5ペリエ631.1エリシオFRサンデーサイレンスUSA
20071マツリダゴッホ牡4蛯 名952.3サンデーサイレンスUSABel Bolide
20072ダイワスカーレット牝3安藤勝58.1アグネスタキオンノーザンテーストCAN
20073ダイワメジャー牡6Mデム615.2サンデーサイレンスUSAノーザンテーストCAN
20082アドマイヤモナーク牡7川 田1490.2ドリームウェルFRトニービンIRE
20083エアシェイディ牡7後藤浩1036.1サンデーサイレンスUSAノーザンテーストCAN
20093エアシェイディ牡8後藤浩1132.0サンデーサイレンスUSAノーザンテーストCAN
20103トゥザグローリー牡3ウィリ1475.9キングカメハメハサンデーサイレンスUSA
20112エイシンフラッシュ牡4ルメー726.8キングズベストUSAPlatini
20113トゥザグローリー牡4福 永947.1キングカメハメハサンデーサイレンスUSA
20122オーシャンブルー牡4ルメー1027.6ステイゴールドDashing Blade
20142トゥザワールド牡3ビュイ931.2キングカメハメハサンデーサイレンスUSA
20151ゴールドアクター牡4吉田隼817.0スクリーンヒーローキョウワアリシバUSA
20152サウンズオブアース牡4Mデム59.9ネオユニヴァースDixieland Band

 ○キタサンブラックは3歳時3着、4歳時2着とひとつずつ着順を上げての3回目。4歳以降は2回続けて負けることがなく、3回続けて勝つこともない。手を抜き過ぎることもなく、がんばり過ぎることもない、力のマネジメントがうまくできているということで、このあたりはがんばり過ぎる傾向のあるディープインパクトと違うブラックタイドの良さ。母の父サクラバクシンオーからはテスコボーイGBとノーザンテーストCANの血を受けており、この土着性というか、日本になじんだ血が本馬の活躍に貢献した部分も大きいと思える。なお、サクラバクシンオーの母サクラハゴロモの全兄アンバーシャダイは1981年から3年連続出走した有馬記念で(1.1.1.0)の成績を残している。

 ハーツクライは2005年にディープインパクトを抑えた。4番人気の支持は受けていたが、衝撃の番狂わせという点では並みの穴馬以上の印象を残した。今年は産駒の4頭出し。数でディープインパクト産駒を圧倒しているだけでなく、ジャパンC-G1勝ちのシュヴァルグラン、アルゼンチン共和国杯-G2勝ちのスワーヴリチャード、チャレンジC-G3勝ちのサトノクロニクルと今年終盤を迎えて怒涛の勢いでここに臨む。▲スワーヴリチャードは母ピラミマUSAがアンブライドルズソング×ジェネラルミーティングの配合で、これは相性の良いミスタープロスペクター系×シアトルスルー系のパターンとなる。母の父としてのアンブライドルズソングは日本でもサンデーサイレンスUSA系種牡馬との組み合わせで菊花賞馬トーホウジャッカル、朝日杯フューチュリティS-G1のダノンプラチナを出して成功している。△シュヴァルグランはヴィルシーナとヴィブロスのディープインパクトG1姉妹に挟まれ、それらに遅れながらも肩を並べるだけのタイトルを得た。母ハルーワスウィートはマキアヴェリアン×ヌレエフの字面だけでも高級感があふれ、しかも5代母はカナダの名牝グローリアスソング。このヘイローの牝馬の代表産駒からは子孫にシングスピール、ダノンシャンティなど多くの活躍馬が出ている。ヘイロー3×4×5とたすきがけになる血統表は見た目にも美しい。

 ポリトラックで歩度を伸ばす良馬場仕様の仕上げを施してきたサトノクラウンの巻き返しが怖いが、母トゥザビクトリー、全兄トゥザグローリー、同じくトゥザワールドの3頭が穴馬リストに並ぶトーセンビクトリー、同じキングカメハメハ×サンデーサイレンスUSAの配合で中山の得意なサクラアンプルールにも穴の魅力あり。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2017.12.24
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