2017天皇賞(秋)


ノーザンテーストCANを見逃すな

 秋の天皇賞の単勝最高配当は1985年ギャロップダイナの8820円で、これは1983年以前の3200m時代を含めても他の追随を許さない。単勝1.4倍のシンボリルドルフをゴール前強襲した勝ち方も強い印象を残した。大種牡馬ノーザンテーストCANにとっては産駒の唯一のこのレースの勝利ではあるが、これを契機としてときには父系祖父として、ときには母系に潜んで秋の天皇賞に隠然とした影響力を及ぼすことになったのは下表に示したとおり。母の父としてはレッツゴーターキン、サクラチトセオー、エアグルーヴ、ダイワメジャー、カンパニー、トーセンジョーダンの6頭が勝った。もう、ブルードメアサイアーがノーザンテーストCANの活躍馬というと現役では8歳のヒストリカルや7歳のタマモベストプレイがいる程度だが、一昨年の勝ち馬ラブリーデイは4代母の父がノーザンテーストCANだから、まだまだ無視のできない存在だ。

 ◎サクラアンプルールは金鯱賞-G2や鳴尾記念-G3に勝ったサクラメガワンダーの半弟。祖母サクラクレアーは4歳牝馬特別(東)で2着となったノーザンテーストCAN産駒で、春の天皇賞馬アンバーシャダイに似た血統構成。その産駒には1995年のこのレースの勝ち馬サクラチトセオー、エリザベス女王杯勝ち馬サクラキャンドルがいる。トニービンIREの切れ味、サクラユタカオーのスピードをノーザンテーストCANが底支えしたからこそ、それら2頭の兄妹が大レース勝ちに至ったのは確かだろう。そこに重ねた母の父サンデーサイレンスUSA、父キングカメハメハの組み合わせは現代の代表的成功パターンのひとつ。2冠のドゥラメンテ、ジャパンC-G1のローズキングダム、JCダート-G1のベルシャザールらをはじめ、多様な活躍馬がいる。先週の富士S-G3に勝ったエアスピネルとは父、母の父、祖母の父まで共通する。エアスピネルだけでなく、翌日の菊花賞-G1はルーラーシップ産駒キセキが勝ったように、キングカメハメハ系の晴雨を問わない万能ぶりも、この秋のお天気の傾向を考える上で心強い要素。


ノーザンテーストCAN影響下の30年
年度着順人気馬名性齢ノーザンテーストCAN備考
1985113ギャロップダイナ牡5母の父エルセンタウロARG
198726レジェンドテイオー牡4母の父Royal Palace
198839レジェンドテイオー牡5母の父Royal Palace
198933メジロアルダン牡4父アスワンの父母の父ネヴァービートGB
199025メジロアルダン牡5父アスワンの父母の父ネヴァービートGB
199135カミノクレッセ牡4父アンバーシャダイの父母の父コインドシルバーUSA
1992111レッツゴーターキン牡5母の父父ターゴワイスUSA
199225ムービースター牡6母の父父ディクタスFR
199512サクラチトセオー牡5母の父父トニービンIRE
199712エアグルーヴ牝4母の父父トニービンIRE
199824ステイゴールド牡4祖母の父父サンデーサイレンスUSA
1999212ステイゴールド牡5祖母の父父サンデーサイレンスUSA
199935エアジハード牡4祖母の父父サクラユタカオー
200035トゥナンテ牡5母の父父サクラユタカオー
200222ナリタトップロード牡6父サッカーボーイの母の父母の父Affirmed
200325ツルマルボーイ牡5母の父サッカーボーイの母の父父ダンスインザダーク
200439アドマイヤグルーヴ牝4祖母の父父サンデーサイレンスUSA
200614ダイワメジャー牡5母の父父サンデーサイレンスUSA
200736カンパニー牡6母の父父ミラクルアドマイヤ
200822ダイワスカーレット牝4母の父父アグネスタキオン
200915カンパニー牡8母の父父ミラクルアドマイヤ
200927スクリーンヒーロー牡5祖母の父父グラスワンダーUSA
201032アーネストリー牡5祖母の父父グラスワンダーUSA
201117トーセンジョーダン牡5母の父父ジャングルポケット
201221フェノーメノ牡3父ステイゴールドの祖母の父母の父デインヒルUSA
201232ルーラーシップ牡5祖母の父父キングカメハメハ
201511ラブリーデイ牡54代母の父父キングカメハメハ
201611モーリス牡5父スクリーンヒーローの祖母の父母の父カーネギーIRE

 父が重馬場に強いステイゴールド、母の父が芝でもダートでも一流馬を出したフレンチデピュティUSA、祖母の父が不良の1989年弥生賞を大差勝ちしたレインボーアンバーという○レインボーラインは道悪になれば大躍進があるのではないだろうか。3歳時の札幌記念-G2は稍重で勝ったネオリアリズムの時計が2:01.7。そこでモーリスにクビ差まで迫る3着の実績がある。父の祖母の父がノーザンテーストCAN、祖母の父レインボーアンバーの父アンバーシャダイはノーザンテーストCAN直仔だから、ノーザンテーストCAN4×5の近交となり、同4×3のステイゴールド産駒だったオルフェーヴルとその全兄ドリームジャーニーに通じる面がある。半姉アニメイトバイオはローズS-G2でアパパネを破ったものの、G1の本番ではその壁を崩すことができず阪神ジュベナイルフィリーズ-G1・2着、秋華賞-G1でも2着に終わった。本馬の菊花賞-G1・2着、NHKマイルC-G1・3着の成績にも似た匂いがある。3代母レインボーローズの産駒セキテイリュウオーも、中山金杯、東京新聞杯には勝ったが、秋の天皇賞ではヤマニンゼファーの勝った1993年とネーハイシーザーの1994年に連続して2着となっている。ファミリーの限界を突破できるかどうかは本馬次第ながら、人気薄で馬券圏内に突入する傾向があることは気に留めておきたい。

 ▲キタサンブラックはここまでG1で11戦5勝2着1回3着3回の成績。父のブラックタイドはディープインパクトの全兄だが、ディープインパクト産駒にこんなに強くて丈夫なのがいたかというと、牡馬にはいなくて、牝馬のジェンティルドンナがG1で13戦7勝2着3回3着1回という成績を残した。キタサンブラックが今季3戦を全勝すれば、ブラックタイドによるディープインパクト超えが達成されることになる。本馬も実は母の父サクラバクシンオーを通じてノーザンテーストCANの血は入っていて、それがこの3年間のタフネスを支えた要素のひとつではあっただろう。サクラバクシンオーの母サクラハゴロモはアンバーシャダイの全妹であり、前述のアンバーシャダイに似たサクラクレアーの娘であるサクラキャンドルは父がサクラユタカーで3歳限定(当時は4歳限定)2400m時代最後のエリザベス女王杯の勝ち馬だった。だから距離がどうこうではなく、ただ漠然と血統構成が似ていると思った次第。3代母ティズリーUSAの産駒シーズティジーはスーパーダービー-G1で3着となった程度だが、産駒ティズナウはBCクラシック-G1連覇の名馬となり、種牡馬としても大成功した。4代母のティズナは1969年のチリ産でサンタマルガリータ招待-G1など米G1に3勝した。安定性や継続性は低くとも、たまに爆発的な成功を収める傾向のあるファミリーで、何年ぶりかの当たりが本馬だったのだろう。

 ソウルスターリングの前走は初めて逃げる形になり、周りのおっさんたちにはプレッシャーをかけられ、あたふたしているうちに終わってしまった。上位3頭はディープインパクト産駒だから絶対的な切れ味勝負でも分が悪い。フランケル産駒クラックスマンが英チャンピオンS-G1でG1勝ちを果たして風向きも変わってきた。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2017.10.29
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