2016皐月賞


明るい未来へ夢の旅

 3強の皐月賞というとウイニングチケット、ビワハヤヒデ、ナリタタイシンの1993年が思い出されるが、このときは3番人気ナリタタイシンが勝ち、2番人気ビワハヤヒデが2着。1番人気のウイニングチケットは4着に敗れた。ナリタタイシンの単勝オッズは9.2倍なので2強+1と見るのが正しく、どうも印象があとから補正されている面もあるようだ。個人的な印象に沿って話を進めると、次は1998年。スペシャルウィークが1番人気(1.8倍)3着、セイウンスカイ2番人気(5.4)1着、キングヘイロー3番人気(6.8)2着の決着だった。これに従い1番人気が2倍台の支持を集め、なおかつ3番人気でも6倍台というのが標準的な3強と仮定して、そのような1998年基準に適う3強対戦となったのは、1999年のアドマイヤベガ(1番人気、6着)、ナリタトップロード(2番人気、3着)、マイネルプラチナム(3番人気、9着)、2002年タニノギムレット(1、3)、ローマンエンパイア(2、14)、モノポライザー(3、16)、2009年ロジユニヴァース(1、14)、リーチザクラウン(2、13)、アンライバルド(3、1)の3例。特に2009年は3強と呼ぶにふさわしい印象があったが、かなりボロボロに崩れている気がしないでもない。一方、ここ3年は1〜3番人気が3〜5倍に収まっていて、結果も比較的平穏なので、それだけ正確なオッズ形成がされるようになってきたのか、あるいはたまたまなのか、これは経過を観察したいところ。いずれにしても、この時点の3強を基点により強固な3強が再編成されていく年もあるし、具体例は出さないが、あの春の3強は何だったのかという場合もある。
 今年の場合、注意すべき点は、3強であれ4強であれ、それらの父はディープインパクトとキングカメハメハであり、これらは種牡馬ランキングの不動のツートップだとはいえ、こと皐月賞ではディープインパクト産駒が2011年以降(0.2.2.12)、キングカメハメハ産駒は2009年以降(1.1.1.13)で、勝ったのは昨年のドゥラメンテが最初にして唯一の例。こういった皐月賞の特殊な点はディープインパクトとキングカメハメハ産駒が多数を占めるからこそ、頭の片隅に置いておきたい。差し当たって2012年にワールドエースとディープブリランテのディープインパクト産駒の人気馬2頭を内からスルスルと交わして勝ったのがゴールドシップであったことを思い出すと、このような場面で一撃が期待できるのはステイゴールドの血。今年は直仔はいないが、最初のG1勝ち産駒ドリームジャーニーが初年度産駒をここに送り込んできた。◎ミライヘノツバサは母の父が米2冠馬シルバーチャームUSA、祖母が2001年の最優秀2歳牝馬タムロチェリー。シルバーチャームUSAは2014年に種牡馬を引退して米国に帰り、タムロチェリーは早世して、残した唯一の牝駒がこの母タムロブライトという細い糸でつながってきたかのような血統。しかし、下表の通り4代、5代と遡った牝系は豪華なもので、とりわけピルサドスキーIRE、ファインモーションIREの存在が光る。シルバーチャームUSAの米三冠を阻んだ馬がタッチゴールドだが、同じゴールドでもステイゴールドならラトロワンヌ血脈を豊富に持つシルバーチャームUSAとの相性はいいはず。この牝系はノーザンダンサー系種牡馬によってスイッチが入って2000年代に成功したが、ノーザンダンサー系の次にくるものといえばサンデーサイレンスUSA系だろう。前走が条件戦だった馬の連対は1994年にナリタブライアンの2着となったサクラスーパーオー以後ないが、雨の影響が残る中山なら一発があっていい。


栄光のスピアフィッシュ系抄
SPEARFISH(USA) スピアフィッシュ(牝、黒鹿毛、1963年生、父Fleet Nasrullah)ハリウッド
  オークス、サンタスザナS、サンタイネスS、ラセンティネラS
 KING'S BISHOP(USA) キングズビショップ(牡、鹿、1969、Round Table)ポンティアックグ
 | ランプリ、ミシガマイル&1/8(分割1)、カーターH-G2、フォールハイウェイトH-G3、ラ
 | ウンドテーブルH
 GAILY(USA) ゲイリー(牝、黒鹿、1971、Sir Gaylord)愛1000ギニー-G1
 |Gay Milly(FR) ゲイミリー(牝、鹿、1977、Mill Reef)
 ||Cocotte(GB) ココット(牝、鹿、1983、Troy)
 || GLOWING ARDOUR(GB) グローイングアーダー(牝、鹿、1988、ダンシングブレー
 || | ヴUSA)シルケングライダーS-G3
 || ピルサドスキーIRE PILSUDSKI(牡、鹿、1992、Polish Precedent)ジャパンC-G1、
 || | ブリーダーズCターフ-G1、エクリプスS-G1、愛チャンピオンS-G1、バーデン大
 || | 賞-G1、ブリガディアジェラードS-G3、ロイヤルウィップS-G3
 || ファインモーションIRE FINE MOTION(牝、鹿、1999、デインヒルUSA)エリザベス
 ||   女王杯、秋華賞
 |Glad Tidings(FR) グラッドタイディングズ(牝、鹿、1979、Pharly)
 ||Stop Press(USA) ストッププレス(牝、鹿、1988、Sharpen Up)
 |||STREET POKER(GB) ストリートポーカー(牡、鹿、1998、デインヒルUSA)ヘッセン
 |||  杯-G3、ヴァルターJ.ヤコブスレネン-G3
 ||ミスグローリー(牝、栃栗、1990、サクラユタカオー)
 || タムロチェリー(牝、栗、1999、セクレトUSA)阪神ジュベナイルフィリーズ
 ||  タムロブライト(牝、芦、2006、シルバーチャームUSA)
 ||   ミライヘノツバサ(牡、芦、2013、ドリームジャーニー)
 |GAY HELLENE(IRE) ゲイヘレン(牝、鹿、1982、Ela-Mana-Mou)フロール賞-G3
 ||Athene(IRE) アテナ(牝、黒鹿、1991、ルションUSA)
 || SIDE SADDLE(IRE) サイドサドル(牝、鹿、1996、Saddler's Hall)ロワイヨモン賞-G3
 |Gay Fantastic(GB) ゲイファンタスティック(牝、鹿、1983、Ela-Mana-Mou)
 | GERMANO(GB) ジャーマノ(牡、鹿、1993、ジェネラスIRE)ゴードンリチャーズS-G3
 | MOON SOLITAIRE(IRE) ムーンソリテア(牡、鹿、1997、Night Shift)キングエドワード
 |   BCH-G2
 EMPIRE GLORY(USA) エンパイアグローリー(牡、黒鹿、1981、Nijinsky(CAN))ロイヤル
   ウィップS-G3

 ○リオンディーズは2013年に半兄エピファネイアが2着。母シーザリオは優駿牝馬とアメリカンオークス-G1に勝った名牝で、祖母は愛米で走って米ラトガーズBCH-G3に勝った。その父はサドラーズウェルズだから、父系祖父キングマンボとの組み合わせは擬似エルコンドルパサーUSA配合となる。晴雨兼用で力を出せそうだ。

 テイエムオペラオー、メイショウサムソンからロゴタイプまで、サドラーズウェルズ血脈が強いのもこのレースの特徴のひとつ。▲ディーマジェスティは祖母シンコウエルメスIREが名馬ジェネラスIREの半妹で、その父がサドラーズウェルズ。母の父ブライアンズタイムUSAの直仔にはナリタブライアン、サニーブライアン、ノーリーズン、ヴィクトリーと4頭の皐月賞馬が出た。

 △マカヒキサトノダイヤモンドの2頭のディープインパクト産駒は、サザンヘイローUSAが潜むアルゼンチン牝系という点でも共通している。かつてパセアナやバヤコアといったアルゼンチン出身の名牝が米国競馬を席巻したころからすると、今はアルゼンチンにも北米の血が浸透しており、異系色は薄らいだが、日本に来てディープインパクトとの配合ということであれば、これまでとは違う色や個性が出てくる。ニュータイプのディープインパクト産駒といえる。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2016.4.17
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