2016桜花賞


春陽に光るエンブレム

 ダイワメジャーは種牡馬生活5年目となる2012年に244頭に種付けし、翌2013年に生まれた産駒は163頭が血統登録された。いずれも現時点で生涯最多の数字で、これはエピセアロームの小倉2歳S-G3からカレンブラックヒルのNHKマイルC-G1に至る初年度産駒の早期の活躍に後押しされたもの。そのような量の増加が素直に成績アップにつながるのもこの種牡馬の美点で、2015年度は初めてディープインパクトを抑えて2歳種牡馬ランキングの首位に立った。その原動力となったのが牝馬の活躍で、それより前の4年間、ダイワメジャー牝駒による2歳、3歳の世代限定重賞は2011年小倉2歳S-G3のエピセアローム、2012年フェアリーS-G3のトーセンベニザクラ、2013年アルテミスSのマーブルカテドラルの3頭による3勝しかなかったが、下表の通りこのクラシック世代は昨年から2頭で3つの重賞に勝ったほか、2着2回、3着1回と活躍している。
 その中心的存在であったメジャーエンブレムは、産駒初の2歳G1勝ち、3歳初戦クイーンC-G3での圧勝と、これまでのダイワメジャー産駒とはクラスの違う強さを見せている。母キャッチータイトルは日本海Sなど芝2000〜2200mで5勝を挙げ、その産駒で本馬の全兄にあたる現役のメジャープレゼンスはダート1800mで2勝、芝2500mでも1勝を挙げている。母の2代目に並ぶサドラーズウェルズとレインボークエストはともに1990年代の欧州種牡馬界の中心的存在で、常勝サドラーズウェルズに時として対抗勢力として立ち向かったレインボークエストという構図があり、後者はわが国でも天皇賞(春)のサクラローレルを出している。ダンチヒ系ポリッシュプレセデント産駒の3代母ハーレディシップはディアヌ賞-G1(仏オークス)2着馬で、産駒ディグニファイは仏オマール賞-G3勝ち馬。4代母の産駒には仏サラマンドル賞-G1のロードオブメンがいる。父のスピードをドッシリとした欧州血統の母が支える形で、こういった構成の快足馬はスピードだけでなく底力も備わっていて、距離延長にも耐える。ディープインパクト産駒が圧倒的に強いこの舞台でも、昨年の2歳戦線同様速さで圧倒することが可能と思える。ダイワメジャーの妹のダイワスカーレットの再来というイメージで捉えて間違いではないだろう。


2013年生ダイワメジャー牝駒の活躍
年月日場競馬レース距離馬場着順馬名人気オッズ馬体重増減
2015.7.26函館函館2歳S-G3芝12002メジャータイフーン38.04700
7.26函館函館2歳S-G3芝12003ヒルダ1025.2462+6
8.3新潟新潟2歳S-G3芝160012ファド1145.5474-2
10.31東京アルテミスS-G3芝16002メジャーエンブレム12.2494-2
11.7東京京王杯2歳S-G2芝140010ヒルダ1125.4452+2
11.7京都ファンタジーS-G3芝14005タガノヴィアーレ717.75260
12.13阪神阪神JF-G1芝16001メジャーエンブレム12.54940
12.13阪神阪神JF-G1芝160011メジャータイフーン1464.24700
12.13阪神阪神JF-G1芝160013クードラパン818.7478+4
12.13阪神阪神JF-G1芝160016ジェントルハート16122.2478-4
2016.1.11中山フェアリーS-G3芝16004クードラパン48.0482+4
2.13東京クイーンC-G3芝16001メジャーエンブレム11.3498+4
2.13東京クイーンC-G3芝16006ナックビーナス13123.9514+4
3.5阪神チューリップ賞-G3芝160015クリノラホール15322.7434-4
3.13阪神フィリーズR-G2芝14001ソルヴェイグ827.2460-6
3.13阪神フィリーズR-G2芝140017クードラパン614.8480-2
3.21中山フラワーC-G3芝18006アオイサンシャイン715.3502-8

 ディープインパクト産駒は5頭でメジャーエンブレム包囲網というか追いかける立場なので包囲はできないとしても、簡単に引き下がるとは考えられない。ラベンダーヴァレイは準オープンの灘Sなどダートばかりで5勝を挙げた長兄キラウエアがキングカメハメハ産駒であるほかは、兄姉がすべてディープインパクト産駒。ボレアスはレパードS-G3に勝ち、マウントシャスタは毎日杯-G3・2着、カミノタサハラは弥生賞-G2に、ベルキャニオンはプリンシパルSに勝った。唯一の姉であるパラダイスリッジは芝2000mで勝っている。フレンチデピュティUSA的資質ということにはなるのだろうが、母クロウキャニオンが兵庫ジュニアGP3着、カーリアン産駒の祖母クロカミIREが京王杯オータムH勝ち馬、ダマスカス系デザートワイン産駒の3代母ミルドUSAの孫には東海Sのハードクリスタルなどが出て、ダート向きの要素と芝向きの要素を交互に重ねた結果でもあるだろう。このきょうだいが発展普及させたディープインパクト×フレンチデピュティUSAの配合は今では大きな実を結び、ショウナンパンドラがジャパンC-G1を制し、弥生賞-G2のマカヒキも遠からずG1勝ちを果たすだろう。このレースでのフレンチデピュティUSAといえば、2008年に12番人気で勝った直仔レジネッタがおり、ひと波乱を願う穴党には貴重な存在。

 ▲レッドアヴァンセは母エリモピクシーが京都牝馬S、愛知杯、福島牝馬Sなどで3着となった活躍馬で、兄たちはリディル(重賞2勝)、クラレント(重賞6勝)、レッドアリオン(重賞2勝)、サトノルパン(全兄、重賞1勝)とすべて重賞勝ちを果たしている。全姉のレッドベルダは未勝利で休養中だが、本馬がエルフィンSに勝っているのだから、牡馬だけが走る系統というわけでもない。母の全姉エリモシックはエリザベス女王杯勝ち馬で、祖母エリモシューテングは忘れな草賞勝ち馬。3代母デプグリーフUSAの子孫には1982年菊花賞2着のパッシングサイアーに始まり、金鯱賞のパッシングパワー、日経新春杯のエリモダンディー、函館記念3連覇のエリモハリアーまで、多くの“えりも”の活躍馬が出ている。母の父ダンシングブレーヴUSAは直仔にキョウエイマーチとテイエムオーシャンがいて、このレースとの縁は深い。リファールの近交となるのはジェンティルドンナをはじめ、ディープインパクト産駒の活躍馬に多く、優れた瞬発力が期待できる。

 シンハライトの全兄アダムスピークはラジオNIKKEI杯2歳S-G3に勝ち、半兄アダムスブリッジは若駒Sに勝った。その母シンハリーズGBは米デルマーオークス-G1勝ち馬で、その前のアメリカンオークス-G1では3着だった。2002年生まれということからも分かる通り、アメリカンオークス-G1の勝ち馬はシーザリオであり、同期生がそれから11年後の日本のクラシックに牡牝の有力馬を送り込んだことになる。シンハリーズGBが英国出身で米国で活躍できたのはその父である国境なき名馬シングスピールIREのお陰。配合的にはサンデーサイレンスUSAと名牝グローリアスソングを経由したヘイロー3×4の成功パターンとなる。

 もう1頭のダイワメジャー産駒の重賞勝ち馬ソルヴェイグは3代母が大種牡馬リファールの半妹。そこにニジンスキー、ヌレエフ、ノーザンテーストCANの日本におけるノーザンダンサー3大血脈を重ねてパワーとスピードを確保つつ、サンデーサイレンス×ジャングルポケットで現代的な決め手を加えた。距離延長でも軽視不可。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2016.4.10
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