2016マイルチャンピオンシップ


同期のあの名牝に追いつけ

 11月10日に発表されたワールドベストレースホースランキングによると、日本にいるM=マイル部門の世界ランカーはレーティング129で4位タイのエイシンヒカリと124で7位タイのモーリスの2頭。ブリーダーズCの結果を受けてのランキングながらBCマイル-G1勝ち馬のツーリストは120の33位タイ、前年の同レース勝ち馬で今年2着の牝馬テピンは121で25位タイにとどまっている。今年は欧州にもマイルの大物は現れず、エイシンヒカリとモーリスが芝M部門では世界のトップ2ということになっている。それらは12月の香港を目指すので、今回はチャンピオン不在のチャンピオンシップとなるが、活発な国際交流が行われている限りは、年によって世界レベルの戦いになったりローカル王者決定戦になったりといった変動はいつでも起こりうる。
 もうひとつ今回の特徴は若者不在といおうか、出走馬の平均年齢が5.94歳と芝のG1にしては高い。このレースは2012年から2014年まで2008年生まれ世代が3連覇しており、昨年モーリスがその流れを止めた。それでも今年8歳を迎えた2008年世代は3頭が出走してきて意気盛んなところを見せている。オルフェーヴル、ロードカナロアといったスーパースターを生んだ世代はそれ以外も豪華で、その名残が今も続いているわけだ。しかし、世代のレベルとしてそれに優るとも劣らないのが翌2009年生まれで、ジェンティルドンナ、ゴールドシップ、世界王者ジャスタウェイから今年もG1に勝って引退したストレイトガールまで、活躍の場が多彩な上にピークが高く息も長い。それより下の世代はこれら2世代の大活躍に明らかに割を食っており、モーリス、マリアライト、エイシンヒカリを擁する5歳世代がようやく反撃に出ている。8歳馬の勝利はカンパニーの例があるとはいえ、ダノンシャークのカムバック賞やスノードラゴンの2階級制覇はさすがに難しいと思えるので、5歳対7歳の戦いと見るのが妥当なところ。世代限定G1勝ち馬2頭の5歳勢に対するに7歳勢はビッグネーム不在といわざるを得ないが、強い世代は次から次へと強い馬が現れてくることも確かで、今回はそのラストチャンス的なタイミングでもある。
 下表のように古馬混合G1だけを示すと、意外にディープインパクト一色ということにはならないのが面白いが、ディサイファはジェンティルドンナ、ヴィルシーナの強力牝馬以外に牡馬にも天皇賞(秋)-G1のスピルバーグが出た世代のディープインパクト産駒。1600mは1戦未勝利だが、その安田記念-G1では6着といっても5着イスラボニータからはハナ差で2着モーリスからも0秒1差しかない。モーリスとゴールドアクターの両輪で進撃を続ける種牡馬スクリーンヒーローの父は誰もがご存知の通りグラスワンダーUSAだが、本馬の祖母トリビュレーションはグラスワンダーUSAの母アメリフローラの1歳違いの全妹に当たり、米国芝の秋の重要な牝馬限定戦クイーンエリザベス2世チャレンジC-G1に勝った。グラスワンダーUSAの全妹ワンダーアゲインが米G1に2勝しているほか、5代母ソアリングの子孫にはグローリアスソングやデヴィルズバッグをはじめ多くの名牝名馬が出ていて、この一族は仮にグラスワンダーUSAがいなくても名門と呼ばれるに十分なファミリーだ。母の父ドバイミレニアムは10戦して英ダービー-G1の9着以外9勝した名馬で、種牡馬としては1世代を残したのみで病死した。直父系は孝行息子ドバウィが起点となって発展しつつあるが、数が少ないだけに母の父としての重賞勝ち馬は本馬のみ。そんな血がディープインパクトとの組み合わせで存在するだけでも貴重で、G1勝ちを果たせばモハメド殿下のこれまでの莫大な投資も報われるのではないだろうか。


生年別のG1勝ち数比較

1着
勝率
2着
連率
3着
3率
4着
以下
3(4)歳
上G1
勝馬数
3(4)歳
上G1
勝利数
3(4)歳上G1勝ち馬(( )数字は勝利数)
20139
.055
9
.109
10
.170
137
201212
.055
15
.124
15
.194
17533キタサンブラック、モーニン、クイーンズリング
201118
.065
17
.125
17
.186
22769モーリス(3)、マリアライト(2)、ショウナンパンドラ、ゴールドアクター、ビ
ッグアーサー、レッドファルクス
201018
.055
17
.108
16
.157
27479ラブリーデイ(2)、コパノリッキー(2)、エピファネイア、ロゴタイプ、コパノ
リチャード、ラキシス、メイショウマンボ
200930
.084
26
.156
23
.220
280921ゴールドシップ(4)、ジェンティルドンナ(3)、ホッコータルマエ(3)、ストレ
イトガール(3)、フェノーメノ(2)、ジャスタウェイ(2)、ヴィルシーナ(2)、
スピルバーグ、サンビスタ
200826
.064
26
.127
23
.183
3341217ロードカナロア(4)、オルフェーヴル(3)、リアルインパクト、サダムパテッ
ク、グレープブランデー、トーセンラー、ベルシャザール、スノードラゴン、
ダノンシャーク、エアロヴェロシティNZ、ローマンレジェンド、ホエールキャ
プチャ
国内のG1レースのみ集計(東京大賞典を含む) 2、3歳の世代限定G1は9

 こちらも7歳のフィエロはG1で(0.2.1.4)。ここまで善戦して勝たないのはそういう馬だというしかないが、ディープインパクト産駒にしてはがんばり過ぎないことでG1で繰り返し健闘できている面もある。母は名マイラー・ロックオブジブラルタルIREの全妹だからミッキーアイルに近い血統構成。祖父の代にサンデーサイレンスUSAとデインヒルUSA、1986年生まれの両巨頭が並ぶ構図はフェノーメノやエイジアンウインズと同じだが、そういつまでも見られるものでもなさそうだ。

 ▲ミッキーアイルは祖母が仏米でG3に勝ったアイルドフランスUSA、3代母ステラマドリッドUSAはエイコーンS-G1など米G1に4勝を挙げた。同い年に超名牝ゴーフォーワンドがいて、その間隙を縫っての4勝だからこちらも名牝と呼んでいい。その子孫には阪神牝馬SのダイヤモンドビコーからアッシュランドS-G1のライラックスアンドレースUSAまで多くの活躍馬が出ていて、4代母マイジュリエット、5代母マイビューパーズもそれぞれ子孫が繁栄している名門。そこに配合されたのも祖母の父ヌレエフ、3代母の父アリダーと名種牡馬ばかり。G1ひとつでは終われない良血とはいえる。

 ハーツクライ産駒は京都のG1で未勝利。全然ダメならともかく、キョウワジャンヌ、ウインバリアシオン、ヌーヴォレコルトなどは惜しいレースをしており、特に天皇賞(春)-G1は昨年がフェイムゲームとカレンミロティック、今年はカレンミロティックとシュヴァルグランで2、3着を占め、トータルで2着8回、3着3回だから、これは気づいたとたんに崩れるジンクスに過ぎない可能性もある。マジックタイムは母がブライアンズタイムUSA×サドラーズウェルズのG1仕様。ブライアンズタイムUSA牝馬にサンデーサイレンス系種牡馬の配合からは皐月賞馬ディーマジェスティのほか、天皇賞(春)-G1のビートブラック、菊花賞のスリーロールス、ダート王エスポワールシチーが出た。4代母アズリナはイタリア競馬が元気なころの女王決定戦リディアテシオ賞-G1勝ち馬。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2016.11.20
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