2016菊花賞


桜木に菊の花咲く

 ヴィブロスの勝利により秋華賞-G1・3連覇を果たしたディープインパクト産駒は、初年度産駒が3歳に達して以降のこの6年で秋華賞に21頭が出走し、4勝2着2回となった。下表1の通り牝馬限定戦に強く、牡馬混合戦でも牝馬が強く、1200m以下と3000m以上に勝ち鞍がない。牡馬の3000mでの争いとなる菊花賞は先週から一転して苦手分野であるのは確かで、下表2にある3度の馬券圏内突入は苦手なりにがんばっていると見るか、2着は2度あるのでそろそろ勝ち馬が出ても不思議ではないと考えるか、2通りの捉え方ができる。
 東京優駿-G1、優駿牝馬-G1、ジャパンC-G1では機会のほぼ半分にあたる3勝を挙げているので、東京2400mが得意なのは間違いないが、長距離2400mをこなせたからといって超長距離のカテゴリーとなる3000mをこなせるかというと別の話で、ディープインパクト自身が菊花賞と天皇賞(春)に勝ったからといって産駒が超長距離をこなせるということにもならない。これが菊花賞の難しさの一面であり、今まで息を潜めていた超長距離適性というちょっとした特殊能力を備えた馬が台頭する理由だろう。
 そんなわけで、5頭のディープインパクト産駒が強力なのは認めても、一角を崩す隙はどこかにある。こういう場合、特に超長距離ではステイゴールドの血が頼りになるわけだが、ひとひねりしてステイゴールド後継のドリームジャーニー産駒ミライヘノツバサの一撃に期待する。ドリームジャーニーは中山での朝日杯FSと、有馬記念-G1、宝塚記念-G1に勝った。自身の菊花賞は成長の踊り場にあったのか5着に終わっているが、菊花賞馬でもあるオルフェーヴルの全兄であり、その母の父メジロマックイーンは1990年の菊花賞馬。間接的に菊花賞とリンクしているのがなかなか良い。母のタムロブライトは3戦未勝利だが、祖母タムロチェリーは2001年の阪神ジュベナイルフィリーズの勝ち馬。母の父シルバーチャームUSAは貴重なバックパサー直系で、1997年のケンタッキーダービー-G1とプリークネスS-G1を制し、ベルモントS-G1では米三冠を得る寸前にタッチゴールドの強襲にあって大魚を逃した。管理したボブ・バファート調教師はその18年後に三冠達成を果たすわけだが、種牡馬としてのシルバーチャームUSAは米国でプリーチンアットザバーなど重賞勝ち馬3頭が出て、日本では10年間の供用で北海道2歳優駿2着のスティールキングが出るにとどまった。種牡馬成績の悪いものが母の父となって良い例はあまりないのだが、少ない例となり得る可能性がシルバーチャームUSAの血統にはあって、父系のバックパサー、母の父ポーカーという名門ラトロワンヌ系から出た2頭の祖父はいずれもブルードメアサイアーとしての功績によって後に名を残す存在。ラトロワンヌの血はサンデーサイレンスUSAとの組み合わせによる効果を期待できるのみならず、メジロマックイーンの父系祖父メジロアサマの牝祖がラトロワンヌであることともつながっていて、整合性の高い配合に映る。祖母の父セクレトUSAはノーザンダンサー直仔の英ダービー馬で、E.P.テイラーの生産だから、父の持つノーザンテーストと共通する。E.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサーの近交は近ごろの活躍馬によく見かけるパターンだ。ファインモーションIREやピルサドスキーIREと同じ名門出身の4代母グラッドタイディングスFRが輸入されて以来、ずっと青森の諏訪牧場で過ごしてきた牝系だが、諏訪牧場というと40年前の菊花賞を生産馬グリーングラスが勝っている。両者に特に血統的な共通点はないが、グリーングラスは10月24日中山の鹿島灘特別600万下芝2000mで3勝目を挙げ、中2週で菊花賞に臨んで12番人気ながらテンポイントとトウショウボーイを退けている。


1)ディープインパクト産駒の
国内芝GT勝ち
レース勝利数
高松宮記念 
桜花賞☆☆☆☆
皐月賞
天皇賞(春) 
NHKマイルC
ヴィクトリアマイル☆☆
優駿牝馬☆☆☆
東京優駿★★★
安田記念
宝塚記念
スプリンターズS 
秋華賞☆☆☆☆
菊花賞 
天皇賞(秋)
エリザベス女王杯☆☆
マイルチャンピオンシップ★★
ジャパンC☆☆☆
阪神ジュベナイルF☆☆
朝日杯フューチュリティS
有馬記念
★は牡馬、☆は牝馬の勝利

2)苦戦が続く菊花賞のディープインパクト産駒
年度
馬場


馬名母の父騎手タイム前走 着順
2011
33トーセンラーLycius蛯名3.03.5セントライ2
105フレールジャックNureyev福永3.04.5神戸新聞杯3
2012
410ベールドインパクトドクターデヴィアスIRE四位3.03.5神戸新聞杯10
63ロードアクレイムトニービンIRE福永3.03.8神戸新聞杯2
712ダノンジェラートPivotal三浦3.03.9セントライ3
92マウントシャスタフレンチデピュティUSA川田3.04.2神戸新聞杯3
108エタンダールモンジューIRE松岡3.05.0セントライ4
1113ニューダイナスティDynaformer浜中3.05.4セントライ9
1316アーデントKaldounMデムーロ3.05.9セントライ8
2013
25サトノノブレストニービンIRE岩田3.06.0神戸新聞杯3
48ラストインパクトティンバーカントリーUSA川田3.06.3神戸新聞杯7
1413インパラトールStorm Catリスポリ3.08.2西宮S16002
1717ヒラボクディープStorm Cat蛯名3.10.2セントライ13
2014
69サトノアラジンStorm Cat浜中3.01.9神戸新聞杯4
85トーセンスターダムエンドスウィープUSA武豊3.02.1神戸新聞杯7
1012ワールドインパクトPivotalブドー3.02.2セントライ10
2015
22リアルスティールStorm Cat福永3.03.9神戸新聞杯2
53サトノラーゼンIntikhab岩田3.04.4セントライ7
1213アルバートドックUnusual Heat藤岡康3.05.3神戸新聞杯7

 ディーマジェスティは母の父がブライアンズタイムUSAであり、秋を迎えていよいよブライアンズタイムUSA的な馬になってきたように見えるので、ディープインパクト産駒の周りに巡らされた超長距離の壁を越える可能性は一番高いのではないだろうか。サンデーサイレンスUSA系とブライアンズタイムUSA系の組み合わせによる菊花賞制覇というとスリーロールス(父ダンスインザダーク)の例もある。サドラーズウェルズ産駒の祖母シンコウエルメスIREの産駒にはステイヤーズS2着、エリザベス女王杯3着のエルノヴァがおり、3代母の産駒には英・愛ダービーのジェネラス。春以上の強さを期待できる。

 この距離になって▲エアスピネルは春の実績馬のなかで最も嫌われそうだが、母はラインクラフト、シーザリオと同期という辛い立場で秋華賞を勝ち、近親の多くの活躍馬のうちには菊花賞馬エアシャカールもいる。軽視不可。

 ジョルジュサンクが不気味。ヴィクトワールピサには多様な引き出しがありそうだし、母の父ラムタラUSAとサンデーサイレンスUSA系の組み合わせは春の天皇賞馬ヒルノダムールを思い起こさせる。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2016.10.23
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