|
米国三大父系をミスタープロスペクター、ストームキャット、エーピーインディとすると間違ってはいなくても相当古いといわれるところだが、ストームキャット直系の日本での不振はこれまで日本競馬三大謎のひとつでなかったかと思う。ミスタープロスペクター系はこなれるまで時間がかかったし、エーピーインディ系も母国のようには活躍できていないが、ストームキャットは米国のダートと欧州のマイル前後で長く実績を積み上げてきた割には、日本への浸透の仕方が遅い。母の父としてはファレノプシス、メイショウボーラーから、近年はディープインパクトとの組み合わせでキズナやアユサン、エイシンヒカリなどG1勝ち馬を送り出しているのに、直父系としては活躍の場があまりにも限られている。下表にあるとおり、G1級はマイルチャンピオンシップ-G1、朝日杯フューチュリティS-G1、フェブラリーS-G1の3種で5勝を挙げただけだ。しかし、限られているということは、裏を返せば出てきたら狙い撃ちできるということではないだろうか。ヘネシーUSA産駒のサンライズバッカスは2007年のこのレースの勝ち馬。ヘネシーUSAが2001年に日本で単年度供用された際の産駒で、翌年の種付けで生まれたヘニーヒューズUSAは米で2〜3歳時10戦6勝2着3回の成績を残したスプリンター。3歳時はキングズビショップS-G1、ヴォスバーグS-G1の2つのG1を含む3連勝でブリーダーズCスプリント-G1に臨み、そこでスタートで躓き14着に大敗してチャンピオンスプリンターのタイトルを逃がした。しかし、実質的に2006年の米チャンピオンスプリンターといえば3連勝がいずれも圧勝だったこの馬で、ワールドサラブレッドランキングのダートS部門ではBCスプリント-G1勝ち馬ソアズエコーと同じ120のレーティングを得てトップタイとなっている。一度に行けるところまで行く、ピークまでのぼりつめるという気質は結果的にそれぞれひとつのG1勝ちに終わっている日本のストームキャット直系の面々と同様。そういうわけで、実績は多少不足しても勢いを評価すべきではあるだろう。そういった点で◎モーニンは今回がまさに買い時。母ギグリーは不出走、祖母チェーストは米でG3・3着、G1・4着があって2001年のBCフィリーメアターフ-G1にも出走した(バンクスヒルの9着)そこそこの活躍馬。3代母ピューリティと4代母のブラックアイドスーザンS勝ち馬デームミステリューズはデュポン家のヒッコリートゥリー牧場の生産所有馬だから、ニューヨークの名家の名門牝系の出身。3代目にストームキャットとフォーティナイナーUSAが並ぶオーソドックスな組み合わせは名門牝系に重ねるにふさわしいもので、脇を固めるメドウレークとコジーンの存在がここ一番の瞬発力につながりそうだ。 |
|
ストームキャット系の局地的活躍 |
|
STORM CAT ストームキャット 1983 Forest Wildcat フォレストワイルドキャット 1991 |エーシンフォワードUSA 2005 マイルチャンピオンシップ-G1(芝1600m)、阪急 | 杯-G3(芝1400m) ヘネシーUSA Hennessy 1993 |サンライズバッカス 2002 フェブラリーS-G1(ダ1600m)、武蔵野S(ダ1600m) |ヘニーヒューズUSA Henny Hughes 2003 | アジアエクスプレスUSA 2011 朝日杯フューチュリティS-G1(芝1600m)、レ | パードS-G3(ダ1800m) Bernstein バーンスタイン 1997 |ゴスホークケンUSA 2005 朝日杯フューチュリティS(芝1600m) Giant's Causeway ジャイアンツコーズウェイ 1997 エイシンアポロンUSA 2007 マイルチャンピオンシップ-G1(芝1600m)、富士S -G3(芝1600m)、京王杯2歳S(芝1400m) |
|
○スーサンジョイは名門フロリースカップGB系で特に関西に勢力を広げたトサモアーの分枝。1970年春の天皇賞馬リキエイカン、宝塚記念のスズカコバン、ダービーグランプリのテイエムメガトンらがこの分枝に属し、4代母ウーマンパワーの産駒インターボイジャーは札幌3歳Sに勝ち、ニホンピロウイナー×シルバーランド(その父シンザン)という貴重な血を伝える3代母グランドウイナーは寒桜賞など2勝を挙げた。祖母レイナロバリーはエルフィンS3着のある活躍馬で、産駒グランドレイナは紅梅Sに勝ち、レイナワルツはJBCクラシックやフィリーズレビューなどで3着、レイナシンフォニーも3勝を挙げたほかフローラSで4着となった。このきわめて日本的な牝系にジェイドロバリーUSA、ダンスインザダーク、エンパイアメーカーUSAと重ねて、ミスタープロスペクター4×4、ノーザンダンサー4×5、父にインリアリティ4×3、母にニジンスキー3×4とこってりアメリカンテーストで味付けされている。そのせいで1400mに特化して1Fの融通も利かないという可能性はなくはないが、最新の米国三冠馬の父系祖父という栄誉に輝いた父エンパイアメーカーUSAの勢いと、日本の名門牝系の渋太さの合わせ技でがんばれるのではないだろうか。 メジロマックイーンでも春の天皇賞3連覇はならず、アドマイヤグルーヴ(エリザベス女王杯)、デュランダル(マイルチャンピオンシップ)、トランセンド(JCダート-G1)、ジェンティルドンナ(ジャパンC-G1)、ゴールドシップ(宝塚記念-G1)が連覇のあと3度目の壁に阻まれた。昨年の凱旋門賞-G1のトレヴも4着に敗れたし、G1級3連覇は難しいものだが、アスコットのゴールドC-G1ではサガロ3連覇(1975〜1977)、イエーツ4連覇(2006〜2009)の大記録があり、メインストリームのG1でも名牝ゴルディコヴァはブリーダーズCマイル-G1・3連覇(2008〜2010)を達成した。アドマイヤドンとヴァーミリアンはそれぞれJBCクラシックを、ブルーコンコルドは南部杯を3連覇しているし、ホッコータルマエは川崎記念で達成したばかり。できないことはないのである。▲コパノリッキーは淡々と自分の能力さえ出せば強いゴールドアリュール産駒。ペースを乱さなければ3連覇の可能性は高い。 クロフネUSA産駒のもっとも似合いそうなこのレースの勝ち馬がまだ現れていないことは日本競馬三大謎のひとつ……かどうか知らないが、牝馬に活躍馬が多いことは、このタイトルに縁遠かった理由ではあるだろう。対牝馬と対牡馬では同じものさしで力関係が測れないこともあるが、JBCレディスクラシックで1秒1ち切ったサンビスタが昨年のチャンピオンズC-G1で牡馬の強豪全員を完封したのだから△ホワイトフーガがここでも一番前にいても驚けない。母の父フジキセキは直仔にカネヒキリ、娘の産駒に東京大賞典-G1のサウンドトゥルーを送り出す隠れダート血統であり、サウンドトゥルーとは父系も同じ。祖母の父ザフォニック由来のミスタープロスペクターと父系のデピュティミニスターのミックス、4代母グローリアスソングにサンデーサイレンスUSAを重ねた母と、米国と日本の様式を無理なく融合させた血の構成は奥が深い。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2016.2.21
©Keiba Book