2016チャンピオンズカップ


砂塵の向こうに金の夢

 芝の中長距離ほどサンデーサイレンスUSA化が目立たなかったダート界も、ゴールドアリュールの登場やフジキセキのダート開拓、サンデーサイレンスUSA系繁殖牝馬の増加など、さまざまな方面からそれが進んでいる。そして、それはまたミスタープロスペクター系やノーザンダンサー系などとの協力があってのことで、気がつけばダートもこの主流3系統に集約されつつある。欧州ならガリレオとデインヒルUSA、北米ならプルピットとアンブライドルドとストームキャットというように、いくつかの主流血統の寡占とか、順列組み合わせ構成は今に始まったことでなく、ある程度パターン化されることでその地域の血統の特色が固定されるのはサラブレッドの進むべき方向ではある。また、それとは逆に健康さや環境の変化への対応のために多様性を確保しておく必要もあるので、長期的には集約と拡散のバランスが重要なのだろう。
 下表に出走馬の父系と母の父系をまとめ、過去10年の1、2着馬も該当する枠にはめ込んだ。今の時代にノーザンダンサー系だのミスタープロスペクター系だのといった区分は大雑把に過ぎるとの意見もあろうが、細かくするときりがないのでそのまま進めます。その他×ナスルーラの(1)(1)はワイルドラッシュUSA×トニービンIREのトランセンドの連覇であり、ノーザンダンサー×その他の(2)(2)(2)はカリズマティックUSA×プレズントタップのワンダーアキュートによる3年連続2着なので、それらやや異色の存在を除くと、おおむねサンデーサイレンスUSA、ミスタープロスペクター、ノーザンダンサーの3者の組み合わせに集約される。最大派閥となるサンデーサイレンスUSA×ノーザンダンサーの代表としてにはゴールドドリーム。父ゴールドアリュールはジャパンダートダービー、ダービーグランプリ、東京大賞典、フェブラリーSに勝った名馬。今思えばアドマイヤドンと同期で両者が大レースに勝ちまくるというのも不思議な気がするが、金持ち喧嘩せずというか直接対決は2度しかないので、うまくすみ分けた結果ではある。種牡馬としてのゴールドアリュールはスマートファルコン、エスポワールシチー、オーロマイスターの初年度産駒三羽烏を送り出し、その後もジャパンダートダービーのクリソライト、現ダート王コパノリッキーと産駒の活躍は続き、ダート種牡馬の第一人者としての地位を確立している。母のモンヴェールは10年前の関東オークス3着馬。勝ち鞍は条件級のダート4勝のみだが、4歳秋のダート2100mの準オープンで牡馬相手に3着となっている。その父フレンチデピュティUSAは、最近ではショウナンパンドラやマカヒキの母の父として注目されることが多いが、直仔に第2回ジャパンCダートのクロフネUSAやJBCスプリントのノボジャック、昨年の東京大賞典-G1のサウンドトゥルーがいるように、ダートでの才能が第一という面もある。祖母スペシャルジェイドUSAがコックスリッジ産駒、3代母スタティスティックがミスタープロスペクター産駒で、4代母はニジンスキーの娘でヘンプステッドH-G2などに勝ったナンバー。その子孫には仏グランクリテリウム-G1のジェイドロバリーUSAからメトロポリタンH-G1のコリンシアンまで多くの活躍馬が出ている。5代母スペシャルは産駒ヌレエフ、孫サドラーズウェルズを通じて世界中に影響を及ぼしている名牝。ゴールドアリュールの母の父はヌレエフなので、ヌレエフ≒ナンバーの3×4、E.P.テイラー・ブランドのニジンスキーとヴァイスリージェントの対置など意匠を凝らした配合となっている。この父の産駒には天才型も多く、自分の力だけを出せば相手強化などあまり関係なく勝ってしまう場合がある。


父系と母の父系による組分け
母系\父系サンデーサイレンスUSAミスタープロスペクターノーザンダンサーナスルーラ  その他  
サンデーサイレンスUSA ロワジャルダン
ノンコノユメ
(1)(1)(2)
サウンドトゥルー
(1)
アウォーディー
ラニUSA
 
ミスタープロスペクターコパノリッキー
(2)(1)
カフジテイク
(2)
アポロケンタッキーUSA
モーニンUSA
(2)
 (2)
ノーザンダンサーゴールドドリーム
ブライトライン
メイショウスミトモ
(1)(2)
アスカノロマン
モンドクラッセ
(1)
   
ナスルーラブライトアイディア(1)  (1)(1)
その他(1) (2)(2)(2)(2) 
( )数字は過去10年の当該血統の1、2着馬

 秋の天皇賞馬ヘヴンリーロマンスの産駒がどうしてどれもダートで大変な力を発揮するのかはきょうだいそれぞれに理由がありそうだが、大雑把にいえば、サンデーサイレンスUSAの超一流馬は研ぎ澄まされた刀のようなもので、もうこれ以上鋭くはなれないところまで来ると、次の代では別の方向に伸びる余地を見つけるしかなくなるというようなことかもしれない。アウォーディーはジャングルポケットからトニービンIREを経て7代父がナスルーラ、一方の▲ラニUSAはタピット、プルピット、エーピーインディからシアトルスルーを経て8代父がナスルーラ。欧州の代表グレイソヴリンと典型的米国血統ボールドルーラーなら遠く離れているのだが、それでも兄弟で同じ枠に収まるのだから不思議。アウォーディーは3代目にヌレエフとサドラーズウェルズが並んでいて、エルコンドルパサーUSA型配合の1バージョンといえるが、そのパワーにトニービンIREとサンデーサイレンスUSAの切れ味を加えている。ラニUSAは現在の米国で人気ナンバー1のタピットが父。米国におけるシアトルスルー〜エーピーインディの父系は、外野から見るとえこひいきと思えるような人気を誇り、そしてその人気に応えて実績を残すのだから不思議。タピット産駒には牝馬の活躍馬が多く、牡馬にもハンセンのようなマイラーが多いが、そんな中から2014年のトーナリスト、今年のクリエイターIIUSAと2頭のベルモントS勝ち馬も出していて、アンブライドルドの重い部分が出てそのようなステイヤーとなったのかもしれない。3代母アーカディナが愛オークス-G1・2着馬、4代母ナタシュカがアラバマS勝ちの名牝であるラニUSAも、そういった重厚さが優っていそうで、それは大レースではプラスに働くと考えられる。

 コパノリッキーはあっさり負けても何度でも立ち直ってくるのがいいところ。同じ父のエスポワールシチーは8歳でJpn1・2勝。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2016.12.4
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