2016朝日杯フューチュリティS


ステゴ牝系から現れた戦闘神

 2009年に産駒レッドディザイアやジョーカプチーノらの活躍によりリーディングサイアーの座に就いたマンハッタンカフェは、ランキング登場3年目以降トップテンから外れたことがない名種牡馬だった。その一方で2歳ランキングでは2008年5位、2009年7位、2014年5位のほかは11〜20位あたりを上下しているので、サンデーサイレンスUSA後継種牡馬群の中でも3歳以降に力を発揮する傾向が強い。そういうわけで2歳の特別や重賞に勝つのは毎年1頭か2頭というのが通常営業だった。ところが、今年は9月からここまでに3頭の特別勝ち馬を出している(下表)。最近はルージュバックに代表されるように牝馬の活躍が継続して目立っているので、牡馬ばかり3頭というのが珍しいし、それらが揃ってここに出走するのも珍しい。マンハッタンカフェ産駒が朝日杯フューチュリティSに3頭出しとなるのは中山時代の2009年に一度あり、そのときは3着ダイワバーバリアン、4着ガルボ、13着ツルマルジュピターと人気以上の成績を残している。ところで、阪神ジュベナイルフィリーズ-G1に勝ったソウルスターリングはフランケル産駒として世界最初のG1勝ち馬となったが、母のスタセリタFRはディアヌ賞-G1(仏オークス)など仏米G1・6勝の名牝であり、牝系を辿っていくとどこまでも頭文字Sが続くのはシュレンダーハン牧場のSライン、名牝シュヴァルツゴルトの9代孫であるためで、その由緒正しい牝系にこそ注目する必要がある。シュヴァルツゴルトといえば日本ではブエナビスタと、そして、マンハッタンカフェだ。Sライン直系のブエナビスタとマンハッタンカフェ産駒のレッドディザイアが同時期に登場してライバル関係を築いたのは偶然としても、その構図を無理やり現在に引っ張ってくるなら、ソウルスターリングが2歳牡牝G1の一方を勝った年に、もう一頭のフランケル牝駒のG1勝ちをSライン出身のマンハッタンカフェが食い止めるという偶然もまたあり得なくはない。
 タガノアシュラは札幌2歳Sで1番人気となり、オリエンタルロックやサンディエゴシチーに続きかけたが流れに乗りそびれて8着に終わった。勝ってマンハッタンカフェ産駒の先輩と同じルートを歩まなかったのはむしろ成功への近道かもしれず、条件特別を勝って態勢を整えてここに臨むことになった。母のレイサッシュはパラダイスクリークUSA産駒で芝1000〜1800mで3勝。祖母ゴールデンサッシュは未勝利だが、ディクタスFR×ノーザンテーストCANの配合で、ご存知サッカーボーイの全妹。産駒には香港ヴァーズ-G1のステイゴールド、ローズSのレクレドールがおり、孫にはジャパンカップ-G1のショウナンパンドラ、神戸新聞杯のドリームパスポート、京成杯-G3のベルーフらがいる。ステイゴールドは種牡馬として中山時代の朝日杯FS勝ち馬ドリームジャーニー、阪神JF-G1のレッドリヴェールを出しているので2歳チャンピオン戦に必要な資質を備えていると考えていいし、そのようなステイゴールドの種牡馬としての成功だけでなく、牝系としても発展を続けているのがゴールデンサッシュ〜ダイナサッシュと遡る牝系の活力の非凡なところ。ゴールデンサッシュに1代挟んでサンデーサイレンスUSA系種牡馬を配したのはショウナンパンドラ、ドリームパスポートと同じ。母の父として挟んだのがショウナンパンドラはフレンチデピュティUSA、ドリームパスポートはトニービンIRE、本馬はパラダイスクリークUSAと、それぞれ穴党向きなのも共通している。


過去にない豊作かもしれない2014年生マンハッタンカフェ産駒
年月日レース名場所距離馬名母の父
2006.11.25ベゴニア賞 500東京芝1600メイショウレガーロCarson City
2007.09.29札幌2歳S札幌芝1800オリエンタルロックMt. Livermore
2008.07.26マリーゴールド賞新潟芝1400ツルマルジャパンStorm Cat
2008.12.14中京2歳S中京芝1800メイショウドンタクMachiavellian
2009.08.22クローバー賞札幌芝1500サンディエゴシチーRahy
2009.09.05札幌2歳S札幌芝1800サンディエゴシチーRahy
2010.10.30萩S京都芝1800ショウナンマイティStorm Cat
2010.10.31くるみ賞 500東京芝1400カトルズリップスリファーズウィッシュFR
2011.12.10黒松賞 500中山芝1200ラフレーズカフェTrempolino
2012.08.25ひまわり賞 九州産小倉芝1200コウエイピースホリスキー
2014.11.01萩S京都芝1800エイシンライダータイキシャトルUSA
2014.11.09百日草特別 500東京芝2000ルージュバックAwesome Again
2016.09.17野路菊S阪神芝1800アメリカズカップコロナドズクエストUSA
2016.10.16もみじS京都芝1400レッドアンシェルStorm Cat
2016.11.13黄菊賞 500京都芝2000タガノアシュラパラダイスクリークUSA
2歳500万特別、オープン、重賞勝ち馬

 この世代の2歳重賞は牝馬限定戦もダートグレードも含めてこれまで16戦が行われ、そのうち半分の8つを牝馬が勝った。牝馬限定戦は4つだから、牡馬混合戦を牝馬が4つ奪った形になる。これはもう牝馬のレベルが特に高いというよりも、古馬G1で当たり前のように牝馬が牡馬を圧倒する程度に牝馬の力を引き出せるようになったこの時代では、これくらいで水準と考えておいていいのかもしれない。それでもミスエルテがここを勝てばそれなりにセンセーショナルなことで、父フランケルにとっては牝馬による2歳G1完全制覇という在外種牡馬初年度産駒として画期的壮挙の達成となる。プルピット産駒の母ミスエーニョUSAは当歳セリで170万ドルで取引された高馬。2歳時に未勝利戦で2着を2度続けたあとソレントS-G3に挑むとこれを6 1/2馬身差で圧勝、続くデルマーデビュターントS-G1も快勝。このとき負かしたブラインドラックはのちにケンタッキーオークス-G1やアラバマS-G1など牝馬G1を勝ちまくることになるが、ミスエーニョUSAは9月末の調教中に右前を骨折して引退してしまった。祖母のマドキャップエスカペードはヘネシー産駒でアシュランドS-G1勝ち馬。3代母の産駒にはバレリーナBCS-G1のドバイエスカペードがいて、大繁栄しているわけではないが、それぞれの代から必ず活躍馬が出るような牝系。フランケルは米国系ミスタープロスペクターとダンチヒを欧州系サドラーズウェルズとレインボークエストで挟んだ形なので、ソウルスターリングのように母が欧州型でも、本馬のように米国血統でもどちらでもうまくいくであろうとは想像がつく。

 2歳種牡馬ランキング首位を目指すディープインパクトは▲サトノアレスに一発が出れば約3200万円差でトップのダイワメジャーを逆転できる。3代母クリムズンセイントはディープインパクトとの相性の良さで知られるストームキャットの祖母である。レッドアンシェルはマンハッタンカフェ×ストームキャット。このパターンは大阪杯-G2に勝ち、安田記念-G1・2着のショウナンマイティと同じ。叔父ナサニエルはキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1の勝ち馬だが、2歳8月のデビュー戦と引退戦のチャンピオンS-G1でフランケルに完敗している。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2016.12.18
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