2016天皇賞(秋)


光の速さで駆け抜けろ

 10月13日に発表された最新のワールドベストレースホースランキング(1月1日〜10月9日)では1位をカリフォルニアクローム、2位をアロゲイトと2頭の米国馬が占めている。レーティング作成の手法の違いによって米国の馬は飛び抜けた強さに見合ったずば抜けて高いレーティングを得にくい傾向があるのだが、カリフォルニアクロームの場合は8月のパシフィッククラシック-米G1で名牝ビホルダーを5馬身ち切ってI133を獲得、10月のオーサムアゲインS-米G1ではドルトムントに4ポンド与えて2 1/4馬身の差をつけ、M部門でも133の評価を得た。3歳馬のアロゲイトは8月のトラヴァーズS-米G1で13 1/2馬身の独走劇を演じ、その一撃で三冠レース勝ち馬たちを軽々と飛び越してエイシンヒカリに並ぶ129まで急上昇した。芝部門では例年、凱旋門賞が終わるとレーティング変動が落ち着いてくるものだが、今年はこの世界ランキングが発表されたあとも活発な動きがある。英チャンピオンS-G1ではアルマンソル(127)が凱旋門賞馬ファウンド(123)に2馬身差をつけて勝ったので、筆者独断推定では130の大台に乗る可能性が出てきており、オーストラリアではコックスプレート-G1で名牝ウィンクスが牡馬の強豪を4角ひとまくりで交わして短い直線でハートネル(123)以下に8馬身の差をつけて楽勝した。これも130の大台を突破するばかりか、セックスアローワンス抜きでカリフォルニアクロームを超えても驚けないパフォーマンスだった。


世界ランキングトップ9(10/9現在)
ランクレーテ
ィング
 馬 名調教性齢
1133カリフォルニアクローム牡5
2=129アロゲイト牡3
2=129エイシンヒカリ牡5
4=127アルマンソル牡3
4=127ウィンクス牝5
6126フロステッド牡4
7=124ポストポンド牡5
7=124モーリス牡5
7=124ワーザーセン5
※10/13、IFHA国際競馬統括機関連盟発表

 このような圧勝祭り、ぶっち切り合戦ともいうべき今年の流れのさきがけとなったのは誰あろう、我らがエイシンヒカリであったといっても異論は出まい。イスパーン賞-G1の10馬身の着差には英国方面などから異論も出ていて、映像を見ると8馬身くらいが妥当だとは思うが、公式記録は尊重されなければならないし、仮に8馬身でも立派なぶっち切り勝ちには違いない。それも自分の庭で弱い相手を負かしてのものではない。以下にイスパーン賞-G1の成績表を拡大して、出走馬のレース前後の実績を分かるようにしてみた。自身を含め過半がG1勝ち馬で、いわゆる終わった馬はおらず、9頭のうち5頭は、バリバリのG1からソコソコのG1まである程度の差はあるが、いずれもこの一戦のプロモーションに大きく貢献している。表の右端に置いた現在のレーティングを見ても分かるように、仮にエイシンヒカリをどけても、ダリヤンが120、以下着差に応じて漸減というレーティングで違和感のないもので、そうするとそこから8〜10馬身前にいるのだから、低目に見積もっても15点のプラスがあってしかるべきで、エイシンヒカリのイスパーン賞は筆者独断推定レーティング135と見なして大きく外れてはいないと思う。
 サンデーサイレンスUSAもディープインパクトも、その産駒はレース後半の優れた差し脚、一段階上の瞬発力で多くのタイトルをコレクションしてきた。しかし、サンデーサイレンスUSAには1頭だけ異能が光る存在があって、それは金鯱賞で1秒8差の大差逃げ切り、毎日王冠ではエルコンドルパサーUSA完封という離れ業を演じたサイレンススズカだった。ディープインパクトにとっての同様の意味を持つのがこのエイシンヒカリではないだろうか。世界ランキング上位馬が後半でも2段ロケットのようにレーティングを伸ばす今年の流れを見れば、5月版から8月版まで3カ月にわたって世界ランキングの首位を守ったエイシンヒカリにも再上昇のチャンスが与えられているように思えてならない。


2016 イスパーン賞 (仏G1、5/24、シャンティイ、4歳上、芝1800m)
イスパーン賞以
前の主な成績
着順着差馬名性齢イスパーン賞
以後の主な成績
レーティング
重量
2015香港カップG11 エイシンヒカリ牡51戦未勝利129
A Shin Hikari(JPN)58
ガネー賞G1210ダリヤン牡42戦未勝利
2017年より種牡馬
120
Dariyan58
ガネー賞G12着31 3/4シルバーウェーヴ牡4サンクルー大賞G1
フォワ賞G2
118
Silverwave58
ミュゲ賞G241/2ヴァダモス牡5ムーランドロンシャン賞G1
ジャックルマロワ賞G12着
121
Vadamos58
ゴードンリチャ
ーズSG3
5マイドリームボート牡4プリンスオブウェールズSG1121
My Dream Boat(IRE)58
2015ジョッキー
クラブ賞G1
63/4ニューベイ牡4ゴントービロン賞G3119
New Bay(GB)58
2015ウッドバイ
ンマイルSG1
72 1/2モンディアリスト牡6アーリントンミリオンG1116
Mondialiste(IRE)58
2015マイレント
ロフィーG2
81/2ワイルドチーフ牡52戦未勝利115
Wild Chief(GER)58
2015パリ大賞G19大差イラプトIRE牡4カナディアン国際SG1117
Erupt(IRE)58
※レーティングはワールドベストレースホースランキング、そのほか主催者HP参照

 もう1頭の世界ランカー、モーリスは国内戦で連敗中だが、いずれもちぐはぐな競馬になってしまっていて、力の問題や距離適性の問題ではない。同じ父(スクリーンヒーロー)の産駒の有馬記念-G1勝ち馬ゴールドアクターが天皇賞(春)-G1での惨敗からちゃんと立ち直っているように、スクリーンヒーローにはノーザンテーストCANやサンデーサイレンスUSAが入っているぶん、ロベルト系にしては好調を長く維持して、維持できない場合でもそこから立ち直る力が備わっているのかもしれない。

 名目より実質の点でG1昇格が決まった年のそのレースの勝ち馬はG1馬と見なせるとすると、春に大阪杯-G2でキタサンブラックを負かした▲アンビシャスは実質G1馬といっていい(よそではいわない方がいいです)。ディープインパクト×エルコンドルパサーUSAの配合は宝塚記念-G1を制したマリアライトと同じ。マリアライトがディープインパクト牝馬的な瞬発力ではなく力の競馬で強い点を見ると、この配合は牡馬でより良い男性的な血統といえるようにも思う。

 リアルスティールはエイシンヒカリと同じディープインパクト×ストームキャットの組み合わせ。このパターンはほかにも日本ダービー馬キズナ、桜花賞-G1のアユサン、エリザベス女王杯-G1のラキシスを出して成功している。本馬は祖母モネヴァッシアが大種牡馬キングマンボの全妹、3代母ミエスクがブリーダーズCマイル連覇の名牝という隙のない名血の塊。

 2010年代後半を迎えても、穴はノーザンテーストCAN、トニービンIRE、サンデーサイレンスUSAという狙いは有効と思うが、三種揃った唯一の存在は実績馬ラブリーデイだった。本年未勝利の6歳馬なら、意外に穴になるかもしれない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2016.10.30
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