2015スプリンターズS


転換期を迎えたSS共和国

 今年産駒がデビューしたファーストクロップサイアーにはサンデーサイレンスUSA直仔がなく、2013年に種牡馬入りしたサンデーサイレンスUSA直仔のサクラオールインには産駒の誕生が確認されていないので、2012年生まれの産駒が2014年にデビューしたマルカシェンクが実質的には恐らく最後のサンデーサイレンスUSA直仔の種牡馬ということになる。JBISによるとサンデーサイレンスUSA直仔で種牡馬となったものは1992年生まれから2003年生まれまでの11世代146頭がおり、そのうち日本産で自身に重賞(G/Jpn)勝ちのあるものは下表の74頭。春の天皇賞馬を送ったミスキャストや有能なダート種牡馬エイシンサンディが含まれていないが、よく知られるサンデーサイレンスUSA系種牡馬はおおむねカバーできている。これだけの大勢力でも、重賞勝ち産駒が2桁に達したものを太字にしてみるとわずか10頭に絞られる。浸透と拡大の時期を過ぎて、選択と集中のフェーズに入りつつあるといえるだろう。
 ディープインパクトは重賞勝ち産駒の数でも最後方から先頭のフジキセキまでごぼう抜きしてトップに立っている。2008年生まれの初年度産駒以来、2013年生まれの現2歳世代まで、毎年平均150頭近い産駒が血統登録を受けているので、ほとんどの産駒が中央入りすると仮定すると、厩舎1軒につき平均0.76頭のディープインパクト産駒がいることになる。普及率がこれだけの高い数値になると、みんながみんなクラシックや中距離G1を目指すわけにもいかなくなるので、一流馬であるためにはスプリント路線に居場所を求めるものも出てくる。このあたりはデュランダルやビリーヴによってサンデーサイレンスUSAが示した生存戦略を踏襲している。下表でディープインパクト産駒の数字が突出しているのは重賞勝ちの数ではなく、重賞勝ち馬の数だからという面もある。ステイゴールドやスペシャルウィークのように少ない一流馬がいくつもG1勝ちを重ねていくのと違って、ディープインパクト産駒はG1・1勝のワンピーク主義(という言葉を即席で作ってみました)が多い。ジェンティルドンナのようにいくつもG1を勝つのはむしろ例外で、桜花賞-G1や東京優駿-G1で燃え尽きる産駒が多いでしょ。最大瞬間風速にかける形だが、それはそれでいいのですよ。3頭のディープインパクト産駒のうち、ウリウリだけにはまだG1入着歴がない。ディープインパクト産駒の一流馬でG1に勝つべき器であれば、大一番でのギリギリの勝負で出すべきギリギリの力を温存しているということになる。ディープインパクト×フレンチデピュティUSAの組み合わせは秋華賞馬で先週のオールカマー-G2も快勝したショウナンパンドラと本馬のほか、弥生賞-G2のカミノタサハラやレパードS-G3のボレアスなど多様な活躍馬がいる。これら4頭が勝った重賞6つのうち、1番人気によるものはボレアスのレパードS-G3だけだから、フレンチデピュティUSAの穴馬傾向は母の父に回っても健在ともいえる。母ウィキウィキはダート1200mで1勝、祖母リアルナンバーARGはアルゼンチンでG1フィリベルトレレナ大賞(ダート1600m)など5勝、3代母ヌメラリアは亜1000ギニー勝ちという貴重な南米G1ファミリー。この牝系に潜む血はサンデーサイレンスUSAの持つアルゼンチン血脈やウインドインハーヘアIREの古風な英国血脈と呼応して、良い働きを示しそうだ。


明暗を分けつつあるサンデーサイレンス後継種牡馬群
種牡馬生年G/Jpn
勝産駒
種牡馬生年G/Jpn
勝産駒
種牡馬生年G/Jpn
勝産駒
アグネスカミカゼ19930サンデーウェル19920バブルガムフェロー19935
アグネスゴールド19980サンプレイス19950ハーツクライ200114
アグネスタキオン199833サンライズペガサス19980ビッグサンデー19940
アグネスフライト19970ジェニュイン19922フサイチゼノン1997注4
アドマイヤジャパン20020シックスセンス20020フジキセキ199242
アドマイヤベガ19969ジョービッグバン19950ブラックタイド20013
アドマイヤボス19974スウィフトカレント20010ブラックタキシード19962
アドマイヤマックス19993スズカフェニックス20021ペインテドブラック1996注5
アドマイヤメイン20030スズカマンボ20013ペールギュント2002注3
イシノサンデー19930ステイゴールド199421ボーンキング19980
ウインラディウス19980スペシャルウィーク199518マツリダゴッホ20033
ヴィータローザ20000ゼンノロブロイ200011マルカシェンク20030
エアシェイディ2001注1ダイワメジャー20016マンハッタンカフェ199825
エアシャカール19970ダイワレイダース19990マーベラスサンデー19926
オレハマッテルゼ20001タヤスツヨシ19924ミレニアムバイオ19980
キングオブダイヤ19920タヤスメドウ1995注1メイショウオウドウ19950
キングストレイル2002注2ダンスインザダーク199328メジロベイリー19980
グレイトジャーニー2001注3チアズブライトリー19980ヤマニンセラフィム19991
クワイエットデイ20000テイエムサンデー19961ヤマニンリスペクト19970
ゴールドアリュール19999ディープインパクト200253リミットレスビッド1999注1
サイレントディール20000デュランダル19995リンカーン20000
サイレントネーム2002注4トウカイワイルド20020ロイヤルタッチ19930
サイレントハンター19930ネオユニヴァース200015ロサード19961
サクラプレジデント20002ハイアーゲーム20010ローゼンカバリー19930
サマーサスピション19920ハットトリック2001注4
重賞(G/Jpn)に勝って種牡馬となったもののみを対象。産駒は日本産の平地重賞(G/Jpn)勝ち馬のみカウント
注1:韓国で種牡馬、注2:愛国で種牡馬、注3:仏国で種牡馬、注4:米国で種牡馬、注5:新国で種牡馬

 相手はひねってサクラプレジデントが送る2頭の重賞勝ち馬のうちの1頭サクラゴスペル。父は朝日杯FSをわずかクビ差で逃し、3歳になるとスプリングS、皐月賞とネオユニヴァースの2着に連敗したが、札幌2歳S、札幌記念、中山記念と3つの重賞に勝った。それぞれG3級、G2級では最高級の重賞であるところにサクラの良血のお坊ちゃん的な良さが出ているように思うが、スペシャルウィークと同じサンデーサイレンスUSA×マルゼンスキー、牝系はスワンズウッドグローヴGBという名血が真価を発揮するのは種牡馬となってからという面もある。4代母ゴールドディガーは大種牡馬ミスタープロスペクターの母であり、そこに同属のシアトルスルーを配した祖母スループリンセスUSAは、産駒にスルージンフィズ、アイゴットリズムと2頭の米重賞勝ち馬がいる。多様な米国血脈と日本的な血をヘイルトゥリーズン、プリンスキロ、ナスルーラでうまくまとめた配合だけに、得意の中山なら一発がある。

 オンファイアも下表から漏れたサンデーサイレンスUSA後継種牡馬。ブラックタイド、ディープインパクトの全弟だから、自身重賞未勝利組では最高級の良血だ。▲ウキヨノカゼの5歳で復活して重賞勝ちまで至ったあたりは、ディープインパクト産駒のリアルインパクトがオーストラリアで復活した例を縮小再現したようでもあり、ディープインパクト血統の第2のピークの迎え方の良い例となる。祖母の産駒にはワイルドソルジャー、ダノンカモン、クィーンズバーンの3頭の重賞勝ち馬がいて、3代母アキスフォーラックは米G1バニティH勝ち馬。

 リッチタペストリーはデインヒルUSA系×サドラーズウェルズ系の21世紀欧州型配合で、伯父にメルボルンC-G1のメディアパズル。サンデーサイレンスUSA系が意外に苦戦するこのレースでは、これくらい重厚なのがいいのかもしれない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.10.4
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