2015皐月賞


よみがえるミエスクの衝撃

 父ディープインパクト、母の父ストームキャットの組み合わせには2010年生まれからアユサン、キズナ、ラキシス、ヒラボクディープが現れ、これらは桜花賞-G1、東京優駿-G1、エリザベス女王杯-G1など3つのG1を含む8の重賞を勝った。JBISサーチの集計によると、これまでデビューしたディープインパクト産駒では、先週(4月12日)時点のデータで母の父がストームキャットのものが登録頭数44、出走頭数28、勝ち馬頭数24、2歳勝馬頭数10、重賞勝馬頭数5と出走頭数以外ほとんどの項目で首位にあり、質量ともに最大勢力となっている。逆にというか同様にというか、母の父ストームキャットがもっとも好成績を挙げているのも父ディープインパクトとの組み合わせであり、これは近年ではステイゴールド×メジロマックイーンの組み合わせに次ぐ優れたニックスといっていい。

 1年おいて現3歳世代から現れたディープインパクト×ストームキャットの重賞勝ち馬リアルスティールは、3代母が名牝ミエスク。地元フランスを中心に1600mのG1で大活躍し、米国ではブリーダーズCマイル-G1の連覇も果たしたこの名牝は繁殖牝馬としてもきわめて優秀で、G1勝ち馬を抜粋ただけで下表のボリュームになる。特筆すべきは大種牡馬キングマンボを出したのみならず、昨年のブリーダーズCマイル-G1勝ち馬で日本での預託生産が話題となったカラコンティーまで途切れることなく活躍馬を送り、誕生から30年にわたって名門の輝きを維持していること。昨年のヨークシャーオークス-G1勝ち馬タペストリーの全弟ジョンエフケネディは先週の今季初戦バリサックスS-G3で3着に敗れて英ダービー1番人気の座を滑り落ちてしまったけれど、まだ巻き返すチャンスは十分残されていて、日英両方でいとこ同士、ミエスクの曾孫がクラシック制覇という快挙も十分にありえることだ。祖母は父がミスタープロスペクターなので大種牡馬キングマンボの全妹にあたり、そこに日本最良のニックスを重ねているわけだから、隙のない名血といっていい。


ミエスク系の豪華絢爛
MIESQUE ミエスク(牝、鹿毛、1984年生、父Nureyev)ブリーダーズCマイル-G12回、
   ジャックルマロワ賞-G12回、ムーランドロンシャン賞-G1、イスパーン賞-G1、英1000ギ
   ニー-G1、プールデッセデプーリッシュ-G1、マルセルブサック賞-G1、サラマンドル賞-G1
 KINGMAMBO キングマンボ(牡、鹿、1990、Mr. Prospector)ムーランドロンシャン賞-G1、
   セントジェームズパレスS-G1、プールデッセデプーラン-G1
 EAST OF THE MOON イーストオブザムーン(牝、黒鹿、1991、Private Account)ジャ
   ックルマロワ賞-G1、ディアヌ賞-G1、プールデッセデプーリッシュ-G1
 ムーンイズアップUSA Moon Is Up(牝、鹿、1993、Woodman)
 |サンイズアップ Sun Is Up(牝、青鹿、1998、サンデーサイレンスUSA)
 | カラコンティー KARAKONTIE(牡、鹿、2011、Bernstein)ブリーダーズCマイル-G1、
 |    プールデッセデプーラン-G1、ジャンリュックラガルデール賞-G1
 |アマーニAUS AMANEE(牝、鹿、2008、Pivotal)セクウィニS-G1
 Monevassia モネヴァッシア(牝、鹿、1994、Mr. Prospector)
  RUMPLESTILTSKIN ランプルスティルツキン(牝、鹿、2003、デインヒルUSA)モイグ
  |  レアスタッドS-G1、マルセルブサック賞-G1
  |TAPESTRY タペストリー(牝、鹿、2011、Galileo)ヨークシャーオークス-G1
  ラヴズオンリーミーUSA Loves Only Me(牝、鹿、Storm Cat)
   リアルスティール(牡、鹿、2012、ディープインパクト)共同通信杯-G3

 キングマンボ直仔のキングカメハメハは年明けからしばらく、ディープインパクトを抑えて種牡馬ランキングの首位を走っていた。冬期はダートが多いせいもあるが、春になって一旦はディープインパクトに抜かれたものの、先週の桜花賞をレッツゴードンキが制したことで16億7505万円対16億4383万円の僅差ながら、ふたたびディープインパクトを抜いて総合ランキング首位に立った(JBISサーチ、4月14日現在)。この勢いが続くとすれば怖いのがドゥラメンテ。昨年のこの欄で「キングカメハメハ〜キングマンボなどミスタープロスペクター直系は3着まで」と書かなくていいことを書いたとたんにトゥザワールドが2着に食い込んだので、そろそろミスタープロスペクター系の皐月賞-G1制覇へ時が満ちてきたのかもしれない。母アドマイヤグルーヴがエリザベス女王杯2勝、祖母エアグルーヴは天皇賞(秋)と優駿牝馬に勝ち、3代母ダイナカールも優駿牝馬勝ち馬というボトムラインは名門と称えるだけでは済まない歴史的な存在といっていい。女系の名門にありがちな一族内での牡馬劣勢の傾向がないとはいえないが、ルーラーシップは香港のクイーンエリザベス2世C-G1でG1勝ちを果たし、少し遠いが高松宮記念のオレハマッテルゼもいる。キングカメハメハとサンデーサイレンスUSAの組み合わせは数が圧倒的に多く、そのぶん成功例も多いが、この牝系の格の高さは他と一線を画すもの。

 ネオユニヴァースは2003年にこのレースと東京優駿に勝ち、産駒もアンライバルドとヴィクトワールピサが連勝。サンデーサイレンスUSA系でも特にこのレースに強い面はある。▲ブライトエンブレムはそれら同様にイギリス牝系出身。母ブラックエンブレムは2008年の秋華賞を11番人気で制した。ウォーエンブレムUSA×ヘクタープロテクターUSAのミスタープロスペクター3×4がまず目をひくが、その周辺を固めているのは意外に古い欧州血脈。だからこそこの父との配合によって重賞勝ちまで至った。3代母の孫ナリタセンチュリーは京都記念に勝ち、宝塚記念-G1ではディープインパクトの2着となった。5代母ソヴリンの産駒にはダンテS-G3に勝ちわが国で種牡馬として成功したラッキーソブリンUSAがいて、古くから日本に縁のある血統。

 ディープインパクト産駒の出走が2頭しかないのに、全兄ブラックタイドの産駒がそれを上回る3頭。これは今回の最大の特徴となるかもしれない。昨年の2歳戦からブラックタイド産駒がそれだけの勢いを維持してきたのは確かで、タガノエスプレッソがデイリー杯-G2に勝ち、コメートがホープフルSで2着となり、キタサンブラックは年明けから3連勝。しかも、それぞれまだ底を見せたわけでもない。中でもタガノエスプレッソは母がキングカメハメハ×トニービンIREのルーラーシップ配合で、4代母ライクリーイクスチェインジはトゥザワールドやトゥザグローリーと共通していて、代用品以上の価値が秘められている。

 サトノクラウンの母ジョコンダ2IREは愛国で2歳時に7.5Fと8Fで2勝して7FのキラヴーランS-G3で3着となった。娘のライトニングパールは本馬の全姉で、2歳時にラウンドタワーS-G3、チヴァリーパークS-G1と愛英の6F戦を連勝。父のマルジュは英ダービー-G1でジェネラスIREの2着だから大変なベテランだが、ダービー-G1の次にセントジェームズパレスS-G1を勝っていて8Fがベターだったと思う。本馬の4代母の産駒には父がマルジュのマイエマ(1993年生まれ!)がいて、こちらは12Fのヨークシャーオークス-G1、2400mのヴェルメーユ賞-G1と2つのG1に勝った。母の父ロッシーニはまったくのスプリンターだが、不思議な面のあるミスワキ直仔。判断に迷うところですね。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.4.19
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