牝馬は長く競走意欲を維持するのが難しいかもしれないので、このレースは3歳が強いのであろうと安易に考えていたが、古馬混合となった1996年以降の19年間で3歳馬が勝ったのは7回。4歳も同じ7勝を挙げていて、残りが5歳の5勝。連覇したのはメジロドーベル、アドマイヤグルーヴ、スノーフェアリーIREの3頭。スノーフェアリーIREを含む2007年生まれの世代はスノーフェアリーIREとレインボーダリアで3連覇を果たしていて、威張っている世代とそうでない世代の間にはかなり強固な壁が存在し、それが2〜3年は維持されるようでもある。また、1998年のメジロドーベルはエアグルーヴを負かしていて、牡馬も含んだ全体の序列とはまた違った牝馬限定ヒエラルキーのようなものがある。
今回出走の3歳〜7歳までの世代別の力を概観する助けとなるかどうかは怪しいが、牝馬の生年別Gレース勝ち数をグラフにしてみた。2012年生まれが3歳馬、2008年生まれが7歳馬である。2歳牝馬と3歳牝馬の限定戦の数は一定なので、世代と性に限定のない重賞をどれだけ勝てるかが大きくスコアに影響する。目立つのはジェンティルドンナ世代(2009年生=6歳)の古馬牡馬混合重賞14勝とハープスター世代(2011年生=4歳)の2歳牡馬混合重賞5勝だ。それぞれジェンティルドンナやハープスター以外にも強い馬の名前が思い出せるので、レベルの高い世代であったことは間違いないが、ここ2年、このレースを連覇しているのは谷間ともいえる2010年世代=5歳なのだ。上の世代が牡馬をやっつけている隙を突きつつ下の世代ににらみを利かせ、獲得した古馬牝馬限定重賞は11。ハイレベル世代に挟まれながらつぶされないしたたかさがこの世代の特徴だ。◎スマートレイアーは過去G1では昨年のこのレースを含め(2)(8)(10)(10)。ディープインパクト産駒の場合、これはG1の壁があると捉えず、まだ完全燃焼していないと考えるのが良い。母の父ホワイトマズルGBを経由してダンシングブレーヴUSAの血が入っているのが強調点。同馬の血は、直仔エリモシックが1997年にこのレースを勝ったほかにも、スイープトウショウ、カワカミプリンセス、リトルアマポーラといったこのレースでの活躍馬にも潜んでいて、終盤の瞬発力を支えている。ダンシングブレーヴUSAが入るということは、ジェンティルドンナをはじめとしたディープインパクト産駒の定番といえるリファールの近交となることでもあり、それに起因する元気の良さの空回りが解消するとすれば、5歳秋を迎えた今回こそという面もある。
3歳のディープインパクト産駒○タッチングスピーチは母リッスンIREが英2歳G1フィリーズマイル勝ち馬。祖母の産駒セコイヤは2歳時にモイグレアスタッドS-G1に勝ち、孫には英・愛2000ギニー-G1などマイルG1・4勝のヘンリーザナヴィゲーター、曾孫にはBCターフ-G1のマジシャンがいる豪華な良血で、3代母の孫ドルフィンストリートFRはフォレ賞-G1などに勝ち、安田記念でも3着となった。サンデーサイレンスUSAとサドラーズウェルズ牝馬の組み合わせによる重賞勝ち馬がヘブンリーロマンスとボーンキングの2頭しかいなかったように、この組み合わせも一発長打型かもしれないが、ローズSで示した破壊力はG1レベル。外回りで見直したいし雨が降ればなお良し。
▲ヌーヴォレコルトはヴィクトリアマイル-G1を落としてから足踏みが続くが、ハーツクライ産駒ではジャスタウェイが4歳秋になって天皇賞(秋)-G1制覇を契機に世界一への急上昇を始めた。それに似た軌跡をたどるとするなら、もともとの実績はジャスタウェイ以上ともいえるのだから、それ相応の高みにまで上る可能性はある。血統表3代目に並ぶトニービンIREはクィーンスプマンテの父系祖父であり、ヌレエフはフサイチパンドラの母の父。近いところには祖母の産駒にエルフィンSのゴッドインチーフ、曾孫に兵庫ジュニアGP2着のオヤコダカがいる程度だが、3代母の子孫には愛1000ギニー-G1のハーフウェイトゥヘヴンをはじめ多くの活躍馬がおり、5代母ネイティヴストリートに遡る名門。
フレンチデピュティUSA産駒のG1級勝利は6回あり、そのうちクロフネUSAのNHKマイルCとJCダート、アドマイヤジュピタの天皇賞(春)-G1、エイシンデピュティの宝塚記念-G1が前哨戦からの連勝だった。△ノボリディアーナの鮮やかな府中牝馬S-G2勝ちは軽視不可。ただ、残りの2回、ピンクカメオのNHKマイルCは桜花賞14着のあと、レジネッタの桜花賞はフィリーズレビュー3着から臨んだものだったので、連勝でG1級制覇の法則は牡馬に限られる可能性もあるが、フレンチデピュティUSAも歳を重ねているので多少は傾向に変化が出てもくるだろう。母スターリーロマンスがフジキセキの全妹で、父と母の父サンデーサイレンスUSAの組み合わせはレジネッタと同じだから懐かしささえ感じさせるが、ライラプス、アンブロワーズ、サイレントプライド、カラダレジェンドなどの重賞勝ち馬を送り出すニックスだ。
マリアライトはジャパンダートダービーのクリソライトの半妹であり、神戸新聞杯リアファルの半姉。弟が菊花賞に勝っていればここで本命に抜擢という可能性もあったが、それでも5連勝でJCダートを制した叔父のアロンダイトを含めて、ある日突然強くなる傾向を秘めたファミリー。ディープインパクトとエルコンドルパサーUSA牝馬の組み合わせからはほかにラジオNIKKEI賞のアンビシャスも出た。わずか3世代が残されただけのエルコンドルパサーUSA産駒の繁殖牝馬は最も若くても来年で13歳を迎える。全部で60頭を切って、今や貴重な存在となってしまった。