2015桜花賞


三者三様の競い咲き

 1991年の桜花賞は5戦無敗のイソノルーブルが1番人気だった。もう1頭の無敗馬、3戦3勝のシスタートウショウは4番人気であり、ノーザンテーストCAN産駒のノーザンドライバーとスカーレットブーケが差のない2、3番人気に並んでいた。5番人気が函館3歳Sとシンザン記念で牡馬を負かしたミルフォードスルーで、6番人気タニノクリスタルがのちに日本ダービー馬を産むとはその時点で誰も知らないが、京都で行われたその年は色とりどりの華やかさという点で桜花賞史上屈指だった。結果はシスタートウショウが4戦無敗で桜花賞馬の座に就いた。

 ナスルーラとノーザンダンサーの争いだった当時とは違い、今どきの大レースらしくサンデーサイレンスUSA系の覇権争いでありつつも、今回はカムバックしたマンハッタンカフェが主役としていつものディープインパクト対ステイゴールドに割って入っている。マンハッタンカフェはレッドディザイアやジョーカプチーノが大活躍した2009年に総合リーディングの座に就き、その後はトップ10から落ちないが5位より上になることもないという隠然たる力を持った実力者の地位にある。牝馬のG1勝ちは下表にある通りひとつだけだが、レッドディザイアがブエナビスタと同期だったという不運は思い出しておくべきだし、それ以外の産駒にも札幌記念のフミノイマージンや桜花賞-G1・3着のトレンドハンターなど才能豊かな牝馬が少なくない。ステイゴールドは初期にはむしろ牝馬に多く活躍馬を送ったものの大物は牡馬ばかりで、阪神ジュベナイルF-G1に勝ったレッドリヴェールは昨年の桜花賞-G1・2着のあとは伸び悩んでいる。牡馬では強い馬ほどややこしいことになる傾向があるだけに、牝馬で強いと別の方向により難しくなってしまうのかもしれないが、ひとまずクラシックの最初の段階であれば、それほど心配する必要はないのかもしれない。不安も抱えたこれらに対してディープインパクトの優等生ぶりは圧倒的。G1全25勝のうち17が牝馬によるもので、桜花賞-G1は目下4連勝中。パーソロン産駒の優駿牝馬4連勝に並んでいるので、今回勝てば同一クラシック連勝記録の単独トップとなる。

 個々の実力はともかく、種牡馬別に均すと比較上3頭のうちでもっとも人気がないのがディープインパクト産駒。下表にはJRAで行われたG1における回収率も示したが、これだけ活躍が目立っていてなおかつ100%を維持しているのは、人気薄による勝利もある程度多いためだ。また、この世代はダノンプラチナ、ショウナンアデラと牡牝揃って最優秀2歳馬を送り出しているので、これまで以上の豊作との可能性もある。桜花賞-G1を境にジョワドヴィーヴルを超えてジェンディルドンナが大きく育ったように、今回不在のショウナンアデラを凌駕するものが現れるのも豊作世代ならあり得ることだ。アンドリエッテはアンブライドルド産駒の祖母がレディーズH米-G3(ダ10F)勝ち馬。そこにシルヴァーデピュティがかかったのが母で、ミスタープロスペクター3×4にデピュティミニスターを被せた現代米国的配合のひとつの典型ともいえる様式をとっている。シルヴァーデピュティというと、日本では菊花賞馬オウケンブルースリの母の父であり、ダート王カネヒキリの母ライフアウトゼアUSAの全兄であるという程度の成功例しか思い出せないが、デピュティミニスター系らしい高速ディーゼルエンジン的な個性はしっかり伝える快足型血統。アンブライドルドとディープインパクトの組み合わせに宝塚記念2着のダノンバラードがいたことと合わせて、渋化の避けられない馬場にも合うと判断できる。


今回の3大勢力比較表〜G1実績一覧
種牡馬1着2着3着着外勝率連対率3着率単勝回収率
マンハッタンカフェ458840.0390.0890.16865.9%
ジョーカプチーノ(牡、2006年生、NHKマイルC)、レッドディザイア(牝、2006、秋華賞)、ヒルノダムール(牡、2007、天皇賞(春))、グレープブランデー(牡、2008、フェブラリーS、ジャパンダートダービー) (G1級計5勝、うち牝馬1
ステイゴールド1865840.1590.2120.256112.3%
ドリームジャーニー(牡、2004、有馬記念、宝塚記念、朝日杯FS)、ナカヤマフェスタ(牡、2004、宝塚記念)、オルフェーヴル(牡、2008、有馬記念×2、宝塚記念、菊花賞、東京優駿、皐月賞)、ゴールドシップ(牡、2009、宝塚記念×2、有馬記念、菊花賞、皐月賞)、フェノーメノ(牡、2009、天皇賞(春)、天皇賞(春))、レッドリヴェール(牝、2011、阪神ジュベナイルF) (G1計18勝、うち牝馬1)
ディープインパクト2321171370.1160.2220.308100.0%
マルセリーナ(牝、2008、桜花賞)、リアルインパクト(牡、2008、安田記念、ジョージライダーS)、トーセンラー(牡、2008、マイルチャンピオンシップ)、ダノンシャーク(牡、2008、マイルチャンピオンシップ)、ジョワドヴィーヴル(牝、2009、阪神ジュベナイルF)、ジェンティルドンナ(牝、2009、ジャパンC×2、ドバイシーマクラシック、有馬記念、秋華賞、優駿牝馬、桜花賞)、ビューティパーラー(牝、2009、仏1000ギニー)、ディープブリランテ(牡、2009、東京優駿)、ヴィルシーナ(牝、2009、ヴィクトリアマイル×2)、スピルバーグ(牡、2009、天皇賞(秋))、アユサン(牝、2010、桜花賞)、キズナ(牡、2010、東京優駿)、ラキシス(牝、2010、エリザベス女王杯)、ハープスター(牝、2011、桜花賞)、ミッキーアイル(牡、2011、NHKマイルC)、ショウナンパンドラ(牝、2011、秋華賞)、ショウナンアデラ(牝、2012、阪神ジュベナイルF)、ダノンプラチナ(牡、2012、朝日杯FS) (G1計25勝、うち牝馬17
着順内訳、勝率などはJRAのG1のみを対象に集計

 馬場の回復が早ければ巻き返してきそうなのがクルミナル。ジェンティルドンナと同じリファール4×4の近交は良馬場でこそ生きる瞬発力につながる可能性がある。母クルソラARGは母国アルゼンチンで3歳牝馬のエンリケアセバル大賞-G1(芝2000m)、3歳以上牝馬のアルゼンチン銀杯-G1(芝2000m)に勝っており、祖母カロリカも同国のG2勝ち馬という上質のファミリー。母の父キャンディストライプスはバブルガムフェローの半兄だから、サンデーサイレンスUSAの血との相性も悪かろうはずがない。

 ▲ルージュバックの母ジンジャーパンチUSAは2007年のブリーダーズCディスタフなど3つのG1に勝って米古牝馬チャンピオンとなり、翌年も更に3つのG1勝ちを加え、ゼニヤッタに敗れたブリーダーズCレディーズクラシックを最後に引退した。これもサンデーサイレンスUSA系とデピュティミニスター系の組み合わせで、デピュティミニスター系が徐々に日本の芝にも対応・浸透してきていることが窺える。デピュティミニスターに不足しがちな日本向き軽さを、脇を固める何本ものナスルーラとマームードが補っているように見える配合。

 3戦無敗のキャットコインと、前哨戦圧勝のココロノアイはいずれもステイゴールド産駒。キャットコインは母がゼンノロブロイの半姉で、ココロノアイは3代母が1987年の2冠牝馬マックスビューティ。いずれもステイゴールドの配合相手が年とともにレベルアップしたことの証拠となる血統といえる。とかく油断ならないステイゴールド産駒ではあっても、競馬に一所懸命な3歳のこの時期であれば、素直に力を評価して大丈夫。祖母マックスジョリーも3着と桜花賞に縁が深いボトムラインを考慮して、これら2頭ではココロノアイを上位にとりたい。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.4.12
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