2015優駿牝馬


春の眠りから覚めるハーツクライ

 桜花賞-G1は6頭出しのディープインパクト産駒か、3頭のマンハッタンカフェか、はたまた2頭のステイゴールドかと多頭数出走の種牡馬にばかり気をとられていたら、キングカメハメハ産駒で唯一の出走となったレッツゴードンキが逃げ切った。ディープインパクト向きの流れやステイゴールド向きの馬場といったケースは少なくないし、そういった見極めも大切ではあるが、競馬が個々の戦いであることをときには思い出さなければならない。今回はマンハッタンカフェ産駒が4頭、ディープインパクト産駒5頭、ステイゴールド産駒2頭、キングカメハメハ産駒は2頭。どれを選ぶか。ここが学習能力の発揮のしどころである。昨年の勝ち馬ヌーヴォレコルトを送ったハーツクライ。その産駒がポツンと1頭おりますね。ハーツクライ産駒はこの春、昨年同様にダイヤモンドS-G3と中山記念-G2に勝って順調な滑り出しを見せたが、さすがに昨年はでき過ぎというべきか、ジャスタウェイによる世界ランキング1位の大パフォーマンスなどは毎年あることではないので、夏が近づいてクラシックが長距離に転じるこの時期から活躍のチャンスが広がると考えるのが妥当だろう。ディアマイダーリンは惜しいところで重賞未勝利かつG1初出走と常識的には物足りない実績だが、こういったポジションから一躍トップに飛び出すのは、ジャスタウェイしかり、ヌーヴォレコルトしかり。母オネストリーダーリンUSAも米国で3歳3月にデビューしてコツコツと4勝を積み上げ、4歳12月にダリアH-G2で3着となって引退した。3番仔のイリフュータブルはエンシャントタイトルS-G1・2着などのあるスプリンターとなった。祖母リラクタントゲストはビヴァリーヒルズH-G1、ウイルシャーH-G2など米の芝重賞に勝ったほかダートでも活躍し、孫にフェブラリーSのゴールドアリュール、根岸S-G3のゴールスキー、曾孫にマーチS-G3のソロルが出た。ヴェイグリーノーブル産駒の3代母ヴェイグリーロイヤルの子孫にはマスキットS-G1・2着のダウアリーやドバイワールドC-G1・2着のダイネヴァーやブリーダーズCダートマイル-G1のファーゼストランドなど多くの活躍馬が出ている。祖母の父ホスティージはニジンスキー直仔のアーカンソーダービー-G1勝ち馬で、ニジンスキー系×ヴェイグリーノーブル牝馬の組み合わせにはホスティージと同い年の英ダービー馬ゴールデンフリース、わが国でも紅梅賞のフレンチパッサーなどがいるが、リラクタントゲストの場合はプリンスキロ、ナスルーラ、ハイペリオン、ノーザンダンサーとオーソドックスな米欧血脈を積み重ねたことで、後に現代的な血を受け入れる良い下地ができていた。キングマンボを配された母はヌレエフとニジンスキーを経由したノーザンダンサー4×4に加え、ナシュアとネヴァーベンドを経由したナスルーラ5×5にもなっていて、キングマンボの暴力的ともいえるパワーを整った方向に持っていくことに成功している。ハーツクライとの組み合わせになると、トニービンIREとヴェイグリーノーブルに共通するハイペリオン血脈の存在感が際立ってきて、これは恐らく2400mで力の争いとなったときに物を言うだろう。


そろそろエンジンがかかるハーツクライ産駒〜重賞勝利一覧
日付重賞距離勝ち馬性齢人気オッズ前走着順
2015/03/01中山記念G21800ヌーヴォレコルト牝434.711/16エ女王杯G12
02/21ダイヤモンドSG33400フェイムゲーム牡513.701/25AJCCG212
2014/11/29京都2歳SG32000ベルラップ牡2619.511/16黄菊賞5001
11/09アルゼンチン共和国杯G22500フェイムゲーム牡424.909/28オールカG26
10/18コーフィールドCG12400アドマイヤラクティ牡6-05/04天皇賞(春)G113
09/28神戸新聞杯G22400ワンアンドオンリー牡311.606/01東京優駿G11
09/21ローズSG21800ヌーヴォレコルト牝322.505/25優駿牝馬G11
07/13七夕賞G32000メイショウナルトセン6512.006/07鳴尾記念G311
06/08安田記念G11600ジャスタウェイ牡511.703/29ドバイDG11
06/01東京優駿G12400ワンアンドオンリー牡335.604/20皐月賞G14
05/25優駿牝馬G12400ヌーヴォレコルト牝329.804/13桜花賞G13
03/29ドバイデューティフリーG11800ジャスタウェイ牡5-03/02中山記念G22
03/29日経賞G22500ウインバリアシオン牡612.012/22有馬記念G12
03/02中山記念G21800ジャスタウェイ牡525.310/27天皇賞(秋)G11
02/22ダイヤモンドSG33400フェイムゲーム牡412.901/26AJCCG23
2013/12/21ラジオNIKKEI杯2歳SG32000ワンアンドオンリー牡2713.711/16東ス2歳G36
11/30金鯱賞G22000カレンミロティックセン536.608/04札幌日経OP8
10/27天皇賞(秋)G12000ジャスタウェイ牡4515.510/06毎日王冠G22
08/18北九州記念G31200ツルマルレオン牡5610.207/14バーデン8
08/04小倉記念G32000メイショウナルトセン536.907/13関ヶ原16002
02/16ダイヤモンドSG33400アドマイヤラクティ牡514.301/20AJCCG23
01/21京成杯G32000フェイムゲーム牡3712.612/162歳未1
01/13日経新春杯G22400カポーティスター牡41022.810/21北野10001
2012/11/03アルテミスS1600コレクターアイテム牝212.710/06デイリ杯G24
03/18阪神大賞典G23000ギュスターヴクライ牡4313.402/18ダイヤSG32
02/25アーリントンCG31600ジャスタウェイ牡324.102/05きさらぎG34
2011/04/30青葉賞G22400ウインバリアシオン牡3614.503/06弥生賞G27

 ヴィクトリアマイル-G1に勝ったストレイトガールは母のネヴァーピリオド、フューチャハッピーとも廣崎氏の持ち馬で伊藤雄二厩舎、3代母タイセイカグラも伊藤雄二厩舎でその半姉に同厩舎の桜花賞馬シャダイカグラがいる。皐月賞馬ドゥラメンテの祖母エアグルーヴもご存知の通り伊藤雄二厩舎だから、こういう事実を見ると、長期的な牝馬の扱い、一頭の牝馬を牝系の流れの中で育てていくヴィジョンがいかに大切かが今にしてよく分かる。ココロノアイは3代母が伊藤雄二厩舎の2冠牝馬マックスビューティ。祖母マックスジョリーも同厩舎で、こちらは桜花賞、優駿牝馬ともに3着だった。そこに重ねたステイゴールド×デインヒルUSAは天皇賞(春)連覇のフェノーメノと同じ。2400mで大変身があるかも。

 ステイゴールドが母の父に回ったケースは函館2歳S-G3のクリスマス、京成杯2着のブラックバゴの成功例が既にある。サッカーボーイやディクタスFRがブルードメアサイアーとして良く、それ以上にサンデーサイレンスUSA直仔ということで、母の父としての大きな成果が期待できるのは当然だろう。▲トーセンナチュラルは伯父に函館記念のクラフトマンシップ、アメリカJCCのクラフトワークがいて、3代母シャダイワーデンの産駒に皐月賞馬ダイナコスモスがいる。ミルリーフ、ダンシングブレーヴUSA、サドラーズウェルズらの欧州血脈にくさびのようにステイゴールドが加わったパターンは見た目以上の瞬発力を秘めている可能性がある。

 レッツゴードンキは桜花賞-G1がかつて例のないスローペースだった。このような最後の瞬発力だけの戦いになると、どの馬も速く走れるし、馬が速く走る最高速度にはおのずから限界があるので、多くの場合は着差が開かない大接戦になるのだが、そこで4馬身もち切ってしまった。サンデーサイレンスUSA系牝馬にキングカメハメハのよくあるパターンだが、父系祖父キングマンボと祖母の父ジェイドロバリーUSAの組み合わせがミソ。ミスタープロスペクター×名牝スペシャルを繰り返すことになるパターンは、一昨年の勝ち馬メイショウマンボの血統表にも見出せる。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.5.24
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