2015高松宮記念


真誠少女の捲土重来

 4戦4勝で引退した3歳の春からさっそくフジキセキは118頭の繁殖牝馬を集める人気種牡馬となったが、G1級のレースに産駒が勝ったのは2002年生まれの7クロップ目、カネヒキリ3歳時のジャパンCダートだった。翌2003年に日豪で生まれたグレイスティアラ、サンクラシーク、コイウタ、ファイングレイン、キンシャサノキセキの5頭は父のG1タイトルのほとんどを稼ぎ出し、長期間にわたる活躍もほとんどがこの世代によるものだった。そんなところに現れたのが実質的なラストクロップ・イスラボニータで、その活躍によって、フジキセキの活力に陰りのないことが示された。フジキセキ産駒による高松宮記念-G1勝ちは2003年産の2頭による3回。いずれも旧コースではあるが、昨年のストレイトガールの3着によってある程度の目途は立った。そのストレイトガールはこのレースで3着のあともヴィクトリアマイル-G1・3着、スプリンターズS-G1・2着、香港スプリント-G1・3着と勝ち切れないでいるが、いずれも負けて強しの内容。真誠少女の中国名をもらった香港スプリント-G1はエアロヴェロシティNZが絶妙なペースで逃げ切ったところを3着に追い上げ、適応力の高さを示すものだったと思う。サンデーサイレンスUSA種牡馬×タイキシャトル牝馬の骨組みは昨年の日本ダービー馬ワンアンドオンリーと同じ。サンデーサイレンスUSAとデヴィルズバッグを経由したヘイローの近交は、ダノンシャンティらのサンデーサイレンスUSA×グローリアスソングの成功例と同じ(デヴィルズバッグは名牝グローリアスソングの全弟)ことで、これはそれぞれの母であるウィッシングウェルとバラードが、いずれもマームードとハレドを組み合わせた似た構成になっていることで整合性の高い配合になる。祖母の父のデインヒルUSAの大レースにおけるブースター的な役割は定評のあるところで、3代母タイセイカグラの産駒には神戸新聞杯のオースミブライトがいて、関屋記念など重賞3勝のオースミコスモはフジキセキが父だった。タイセイカグラの半姉には1989年の桜花賞馬シャダイカグラがおり、それがリアルシャダイUSA産駒だったことを考えると、日本競馬は20数年の長きにわたってヘイルトゥリーズン系をうまく使ってきたものだと思わされる。


フジキセキ産駒のG1級勝利
年度レース距離勝ち馬生年母の父
2005JCダートダ2100カネヒキリ2002Deputy Minister
2005全日本2歳優駿ダ1600グレイスティアラ2003ノーザンテーストCAN
2006フェブラリーSダ1600カネヒキリ2002Deputy Minister
2006ケープフィリーズギニーG1芝1600Sun Classique(AUS)2003ラストタイクーンIRE
2007マヨルカSG1芝1600Sun Classique(AUS)2003ラストタイクーンIRE
2007ヴィクトリアマイル芝1600コイウタ2003ドクターデヴィアスIRE
2007ウーラヴィントン2200G1芝2200Sun Classique(AUS)2003ラストタイクーンIRE
2008ドバイシーマクラシックG1芝2400Sun Classique(AUS)2003ラストタイクーンIRE
2008JCダートG1ダ1800カネヒキリ2002Deputy Minister
2008ヴィクトリアマイル 芝1600エイジアンウインズ2004デインヒルUSA
2008高松宮記念G1芝1200ファイングレイン2003Polish Precedent
2010NHKマイルCG1芝1600ダノンシャンティ2007Mark of Esteem
2010高松宮記念G1芝1200キンシャサノキセキAUS2003Pleasant Colony
2011高松宮記念G1芝1200キンシャサノキセキAUS2003Pleasant Colony
2012マイルチャンピオンシップG1芝1600サダムパテック2008エリシオFR
2014皐月賞G1芝2000イスラボニータ2011Cozzne

 アンバルブライベンはこれまでの成績を見る限りは小回りで直線が平坦なのが理想だが、血統は恐らくそうでもない。母は旧中京のダート2300mで行われていた時代のウインターSを52キロの軽ハンデで差し切ったのが唯一の重賞だが、負かしたのはキョウエイスワット、ミスタートウジン、ナリタハヤブサといった強豪牡馬。当時は中央のダート重賞そのものがサラブレッドではフェブラリーHと根岸S、ウインターSの3つしかなかったのだから、これは価値が高い。父ルールオブローUSAはキングマンボ直仔のステイヤーで、セントレジャー-G1、グレートヴォルティジュールS-G2に勝ち、ダービー-G1で2着となった。父系のミスタープロスペクターと祖母の父クラウンドプリンスUSAを経由したレイズアネイティヴ4×4、ロイヤルアカデミー2USAの父ニジンスキーと母の父の父ストームバードというE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー血脈の共存は現代的なパワーとスピードにつながりそうだし、父と母から1本ずつ受けたリボー血脈も大レース向きの底力を感じさせる。

 ▲サドンストームは3度来日してセントウルS-G2、スプリンターズS-G1・2回、安田記念-G1と4走した香港の一流スプリンター・ラッキーナインIREの半弟。ラッキーナインIREは4歳時に香港スプリント-G1に勝ち、ドバイのオールウェザーやオーストラリアの芝でもそれなりの結果を出したほか、6、7歳時はシンガポールでクリスフライヤー国際スプリント-G1を連覇している。長く活躍できているのは去勢馬ならではという面もあるのだが、重賞級に上がってからは決して連勝しないあたりにも秘訣があるのかもしれない。6歳になってジワジワと上昇してきたこちらの半弟は兄とパターンが違うが、これまで蓄えた力を放出する時期が来ているようにも思える。父ストーミングホームGBは英チャンピオンS-G1など芝2000mのカテゴリーでうまくタイトルを積み重ね、種牡馬として送り出した産駒の重賞勝ちは1600mだったり2400mだったりとさまざまでつかみどころがないが、そのミスタープロスペクター2×3という強い近交はスプリンターを出しても驚けないもの。サドンストームの全弟ティーハーフも葵Sに勝ち、函館2歳S-G3・3着であり、どんな配合でもスプリンターを生むこの母との組み合わせなら、ミスタープロスペクターのスピードがストレートに出るスプリンターとなるのも当然ではあるだろう。2歳時にモイグレアスタッドS-愛G1に勝った祖母はレイズアネイティヴ4×3なので、ミスタープロスペクターの強い近交馬である父との配合がうまく噛み合えば強烈なスプリントを発揮する可能性はある。

 サクラゴスペルの4代母ゴールドディガーはミスタープロスペクターの母というだけでなく、子孫にはカナダ生まれの米芝チャンピオン・チーフベアハートCAN、菊花賞馬オウケンブルースリ、ヴォスバーグS-米G1のプライヴェートゾーンなど多くの活躍馬がいる。祖母のスループリンセスUSAはそこに同じマートルウッド系シアトルスルーを重ねてプリンスキロやナスルーラの近交とした正統米国血統といえる配合。そのしっかりした土台にキュアザブルーズ、サクラプレジデントと積み上げたこのパターンは、むしろボールドルーラーやプリンスキロ、あるいはドクターフェーガーといった古風な米国血統のスピードがジワッと浮き上がる配合にも見える。そこにマルゼンスキーの日本的なスピード、サンデーサイレンスUSAの現代的な底力を重ねられた。7歳でもまだ奥はありそうだ。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.3.29
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