2015マイルチャンピオンシップ


スターダムへ駆け上がれ

 昨年のこのレースのディープインパクト産駒は6頭出しで1、2、4、5、8、13着、一昨年は5頭で1、3、5、8、10、2012年も5頭で3、5、6、11、12、初登場の2011年は2頭で5、6の成績だった。通算(2.1.2.13)でも2桁着順は4回だけ。この2年を連覇しているので、阪神の世代限定G1に次ぐ相性の良さを認めていいのではないだろうか。下のグラフが示す通り、プールデッセデプーリッシュ(仏1000ギニー)-G1勝ち馬ビューティパーラーを含めて1600mの成績がすばらしい。なお、グラフにはボレアスのレパードS-G3(ダート1800m)も含むが、それ以外はすべて芝での勝ち鞍となっている。サンデーサイレンスUSAは2003年、2004年デュランダル、2005年ハットトリック、2006年、2007年ダイワメジャーと産駒による5連覇を達成していて、その父の跡をたどって追いつき追い越せのディープインパクトであれば、連覇記録を伸ばすのは難しくないだろう。天皇賞(秋)-G1(2着)、エリザベス女王杯-G1同様、どのディープインパクトを選ぶかが問題となる。

ディープインパクト産駒の距離別重賞勝利数

 トーセンスターダムの母アドマイヤキラメキはダート短距離で4勝を挙げ、繁殖入りすると白菊賞など3勝のラシンティランテを生んだ。祖母エヴリウィスパーは未勝利ながら、天皇賞(秋)-G1のトーセンジョーダン、京都新聞杯-G2のトーセンホマレボシ、日経新春杯2着のダークメッセージ、関東オークス2着のケアレスウィスパーを生み、ケアレスウィスパーの産駒トーセンバジルは神戸新聞杯-G2で3着となった。子孫の多芸多才ぶりが目をひくが、この傾向は3代母クラフティワイフUSAから発しており、その直仔にはマイラーズCのビッグショウリ、羅生門Sのイブキハイシーザー、貴船Sのキョウエイフォルテ、中山グランドジャンプのビッグテーストなど、芝、ダート、障害でそれぞれ活躍馬が現れ、孫の代には天皇賞(秋)-G1とマイルチャンピオンシップ-G1に勝ったカンパニー、アルゼンチン共和国杯のレニングラードなど、より高いクラスで実績を残す者が現れた。これは3代母の父クラフティプロスペクターがアグネスデジタルUSAの登場に先駆けてその万能ぶりを子孫に伝えていたものであり、4代母のセクレタリアト×バックパサーというドッシリとした米国クラシック配合が、その土台として十分に機能していたためだろう。このファミリーが普通のA級牝系と違うところは、年を追って活躍の幅を広げて格も上昇させている点で、発展の勢いではこの10年で最も目覚しい一族といえるのではないだろうか。発展のキーとなったのはノーザンテーストであり、そこに再びミスタープロスペクター系、それも現代的なフォーティナイナーUSAの直系を導入した母は、あとはサンデーサイレンスUSA系種牡馬を待つばかりというべき配合になっている。日本的アレンジの米国血脈でもあって、母が欧州血統のディープインパクトとの組み合わせはメリハリの利いた奥深いもので、前走の勝利をきっかけに急上昇を始める可能性がある。

 フィエロの母はグランクリテリウム-G1から英・愛2000ギニー-G1などを経てムーランドロンシャン賞-G1までG1・7連勝を果たした名馬ロックオブジブラルタルUSAの全妹。父ディープインパクト×母の父ロックオブジブラルタルUSAの組み合わせでNHKマイルC-G1に勝ったミッキーアイルを、見方によるが、より純度の高い良血にした形。フィエロの半姉プレシャスジェムはサドラーズウェルズ産駒で芝10Fの愛インターナショナルS-G3の勝ち馬。こちらは全体に欧州色の濃い構成で、6歳を迎えたことで昨年よりも良くなる部分もあるだろう。

 サンデーサイレンスUSA系が圧倒的な成績を残す近年のこのレースで父系として抵抗できているのがストームキャット系。2010年のエーシンフォワードUSAは父がストームキャット直仔のフォレストワイルドキャット、翌2011年に勝ったエイシンアポロンUSAの父ジャイアンツコーズウェイもストームキャット直仔の代表的名馬だった。アルビアーノUSAの父ハーランズホリデイはストームキャットの孫で、ブルーグラスS-G1、フロリダダービー-G1など米G1に3勝し、ドバイワールドC-G1でも2着となった。ヴォスバーグS-G1勝ちのスプリンターだったその父ハーランよりも距離適性に幅が増していて、種牡馬としてもハーラン以上の成績を残した。母アンティクスは未勝利だが、祖母オーロラは米G3で2着となり、息子のアーチはスーパーダービー-G1に勝って種牡馬としても成功し、娘のアコマもスピンスターS-G1に勝った。3代母アルセアはアーカンソーダービー-G1などG1・3勝の名牝で、その産駒には阪神3歳牝馬SのヤマニンパラダイスUSA、孫にはフリゼットS-G1のバレット、京成杯のヤマニンセラフィムが出た。4代母コートリーディーの子孫には大種牡馬グリーンデザートや皐月賞馬ノーリーズンから昨年のBCクラシック-G1勝ち馬バイエルンまで更に多くの活躍馬がいるアメリカンファミリーの名門。このレースはあまり米国色が強くても結果が出ていないので▲の評価だが、ディープインパクト産駒の切れ味がいくらかでも鈍るような馬場なら逆転がありうる。

 イスラボニータは祖母の父クラフティプロスペクターからミスタープロスペクターの血が入ってフジキセキ産駒のG1パターンのひとつを踏襲している。フジキセキがインリアリティを持つためか、ミスタープロスペクター血脈との相性の良さは、カネヒキリ、コイウタ、エイジアンウインズなどG1級の複数の名馬名牝が証明している。母の父コジーンはBCマイル-G1勝ち馬だが、種牡馬としてより大きな成功を収め、産駒はさまざまな距離適性を示す一方で、共通してグレイソヴリンらしい切れ味やスピードを発揮する。フジキセキ×コジーンの組み合わせは女性的な印象をともなう配合ながら、そのぶん鋭い切れ味につながっている面もあるだろう。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.11.22
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