2015ジャパンC


妖しい夜光花

 このレースにおける牝馬の1位入線が5年で途切れ、凱旋門賞-G1でのトレヴの3連覇もならず、長く続いた牝馬の時代も終わったかというとそうでもなくて、欧州最強のゴールデンホーン生涯2度の敗北はインターナショナルS-G1とブリーダーズCターフ-G1のいずれもが牝馬相手の接戦であり、オーストラリアでもコックスプレート-G1を4年ぶりに牝馬が勝つなど、下表に示した通り今年も世界中で牝馬の活躍は続いていて、今年これまで延べ30頭が牡馬相手にG1勝ちを収めている。それも隙間のG1というわけでなく、日本のスプリンターズS-G1や、フランスのジャックルマロワ賞-G1とムーランドロンシャン賞-G1、米国のブリーダーズCマイル-G1、英国でもセントレジャー-G1など、それぞれの部門の頂点を決める重要な一戦を制しているのが強調すべき点。今回も3歳のミッキークイーン、4歳ショウナンパンドラのディープインパクト牝馬はもちろん有力だが、牡馬相手に伝統の一戦オイロパ賞-G1を制したドイツの3歳牝馬ナイトフラワーに期待してみたい。3歳でオイロパ賞(ヨーロッパ賞)-G1に勝った馬がその年のジャパンCに出走した例には1983年3着のエスプリデュノールUSA、1986年2着のアレミロードUSAがあって、古いといえば古いし、いずれも牡馬ではあるが、馬券になっているのは事実。父ディラントーマスは3歳時に愛ダービー-G1、愛チャンピオンS-G1、4歳時にはガネー賞-G1、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1、愛チャンピオンS-G1、凱旋門賞-G1と6つのG1に勝った名馬。4歳時、2007年のジャパンC-G1に出走するため来日はしたが、EVA(馬ウイルス性動脈炎)の陰性が確認できず日愛間の衛生条件をクリアできないため、検疫所の競馬学校から香港に向かった。実質的に日本国の上にいたが、法律上は入国していないということで、日本からの視点では、父娘2代がかりで執念の来日を果たしたことになる。母ナイトオブマジックは伊オークス-G2に勝ち、独セントレジャー-G2で2着。その父パントレセレブルUSAは凱旋門賞-G1で1990年代屈指のパフォーマンスを示した。祖母の父プラティニGERは1993年のこのレースで14番人気ながら4着となった。代表産駒のムーンレディGERは独セントレジャー-G2に勝ち、東京優駿-G1勝ち馬エイシンフラッシュを生んだ。祖母ナイトティーニーの孫には牝馬ながらベルリン大賞-G1に勝ったニンフィア、今年の独ダービー馬ヌタンが、3代母の産駒にディアナ賞(独オークス)-G2勝ち馬ナイトペティコートがいて、その産駒には独ダービー馬ネクストデザート、独オークス馬ネクストジーナがいる。Nの頭文字で想像がつくように“キングジョージ”を制したノヴェリストIREもこのファミリーで、名門に新たな国際的タイトルが加わるかもしれない。また、デインヒルUSAの孫というだけで、大レースでは黙って買っておくべきでもある。


2015年 牡牝混合GTに勝った牝馬一覧
日付レース条件距離勝ち馬生年
10/4スプリンターズS3歳上1200mストレイトガールStraight Girl2009フジキセキ
3/28ドバイシーマクラシック北4南3上2410mドルニヤDolniya2011Azamour
6/28サンクルー大賞4歳上2400mトレヴTreve2010Motivator
8/16ジャックルマロワ賞3歳上牡牝1600mエゾテリックEsoterique2010Danehill Dancer
8/19インターナショナルS3歳上10F88ydsアラビアンクイーンArabian Queen2012Dubawi
8/21ナンソープS2歳上5FメッカズエンジェルMecca's Angel2011Dark Angel
9/12セントレジャー3歳牡牝14F132ydsシンプルヴァースSimple Verse2012Duke of Marmalade
9/13ムーランドロンシャン賞3歳上牡牝1600mエルヴェディヤElvedya2012Siyouni
9/27オイロパ賞3歳上2400mナイトフラワーIRENightflower2012Dylan Thomas
10/18ジョッキークラブ大賞3歳上2400mラヴリンLovelyn2012タイガーヒルIRE
10/31ブリーダーズCターフ3歳上12FファウンドFound2012Galileo
10/31ブリーダーズCマイル3歳上8FテピンTepin2011Bernstein
1/1レイルウェイS3歳上1200mインスタイルIn Style2009Fast 'n' Famous
2/7ハービーダイクS3歳上2000mソリアーノSoriano2009Savabeel
2/28フューチュリティS3歳上1400mスアヴィトSuavito2010Thorn Park
2/28オークレイプレート3歳上1100mシャマルウインドShamal Wind2009Dubawi
3/4オークランドC3歳上3200mロックディーヴァRock Diva2010Lucky Unicorn
3/7カンタベリーS3歳上1300mコズミックエンデヴァーCosmic Endeavour2010Northern Meteor
3/21ザ・ギャラクシー2歳上1100mスイートアイディアSweet Idea2010スニッツェルAUS
4/18シャンペンS2歳1600mパサデナガールPasadena Girl2012Savabeel
4/18イースターH3歳上1600mポンダローザミスPondarosa Miss2010High Chaparral
5/9サウスオーストラリアンダービー3歳2500mデリカシーDelicacy2011Al Maher
6/6ストラドブロークH3歳上1350mスリカンディSrikandi2010Dubawi
10/3エプソムH3歳上1600mウィンクスWinx2011Street Cry
10/24コックスプレート3歳上2040mウィンクスWinx2011Street Cry
南ア1/24ケープフライングチャンピオンシップ3歳上1000mアルボランシーAlboran Sea2011ロックオブジブラルタルIRE
南ア4/25コンピュータフォームスプリント3歳上1000mアルボランシーAlboran Sea2011ロックオブジブラルタルIRE
6/27エストレラススプリント3歳上1000mフィールザレースARGFeel the Race2011Orpen
10/10スイパチャ大賞3歳上1000mササグーラスプリングスSassagoula Springs2012Grand Reward
11/1エルエンサヨ3歳2400mワピWapi2012Scat Daddy
参考:レーシング・アーカイヴ http://itasei.web.fc2.com/index.html

 ラブリーデイは2008年のエルコンドルパサーUSA、2005年のアルカセットUSA、2010年のローズキングダムと周期的にこのレースで勝っているキングマンボの直系。小倉記念勝ちの4代母シャダイチャッターなど重賞勝ち馬を送り出してきたペルースポート系にはインティライミなどG1に手が届かないものも多かったが、本馬が初めてその壁を破った。ノーザンテーストCAN、そしてそれ以上にサンデーサイレンスUSA血脈の導入によってG1到達を果たしたファミリーは多く、大種牡馬の偉大さを今更ながらに知るところではあるが、ダンスインザダーク牝馬とこの父の組み合わせからは、ほかに重賞3勝のショウリュウムーンが出ていて、勝ち馬率などアベレージも高い。東京向きのトニービンIREの血も入っていて、人気を裏切ることはない。

 ▲ゴールドシップはコースの好き嫌い、流れの向き不向きをポカをした際の理由とされることが多いが、結果論的にいうと意外に単純なことで、デキが良ければ走る、そうでなければそれなりにという場合が多いのではないだろうか。おおむねオープンまで上る馬は我慢強く、少々痛いの痒いの重いのといったことは実戦では乗り越えてしまう場合が少なくないはずだが、それを思うように体が動かないとや〜めたとなってしまうのがこの馬なのではないだろうか。

 牝馬では牡馬相手にも実績のあるショウナンパンドラが捨てがたいが、ミッキークイーンの母のB級マイラー風の血統構成はジェンティルドンナ風の底の知れない強さを感じさせもする。まだ上昇の余地があるだろう。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.11.29
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