2015東京優駿


鋼を走る衝撃波

 サンデーサイレンスUSAは1995年のタヤスツヨシから2005年のディープインパクトまで11年かけてこのレース6勝の最多勝タイ記録に到達した。ディープインパクトは2年目の産駒ディープブリランテと3年目のキズナが既に勝っていて、4年で2勝のペース。一流牝馬の多くが自身と同じサンデーサイレンスUSAの血を引くだけに配合上の制約があるとはいえ、毎年200頭以上の相手を集めているのだから、父に追いつき追い越す可能性は十分にあるだろう。

 この春は桜花賞-G1と皐月賞-G1をキングカメハメハ産駒に奪われ、種牡馬ランキングでも同馬に接近戦に持ち込まれていたが、先週の優駿牝馬-G1は産駒のミッキークイーンが快勝。収得賞金(中央+地方、5月26日現在)は26億4006万円対24億277万円と2億円以上の差をつけて突き放しにかかっている。もともと牡牝の2歳王者を送り出した世代であるのでレベルが低いはずもなく、3度目の東京優駿-G1制覇に向けて勢いを増すと考えるのが自然だろう。リアルスティールは2013年の勝ち馬キズナと同じストームキャット牝馬との配合。下表にある通り父の2年目の産駒からはこの組み合わせによる3頭がG1勝ち馬となっている。重賞勝ち馬はリアルスティールを加えて全体で5頭なので、この配合で重賞レベルに達すれば、高い確率でG1勝ちにまで至るともいえるだろう。母ラヴズオンリーミーUSAは不出走だが、このストームキャット×ミスタープロスペクターの組み合わせには種牡馬として大成功したテールオブザキャットがいるほか、G1勝ちの牝馬が3頭いる。米国1990〜2000年代のベストトゥベストといえば必然的にこの組み合わせになるので、G1馬3頭が多いとはいえないが、少なくともポテンシャルの上限が見えている配合ではない。ミスタープロスペクター×ヌレエフのパターンも同様のことが言えるが、この祖母モネヴァッシアがただのミスタープロスペクター×ヌレエフ配合ではないことは強調しておかなければならない。下表に太字で示されたキングマンボは祖母の全兄。ムーランドロンシャン賞-G1など1600mのG1に3勝し、それ以上に種牡馬として大成功したキングマンボの成功の理由はミエスクの仔であったからだが、ブリーダーズCマイル-G1連覇のこの名牝の子孫にはキングマンボとその半妹で仏2冠牝馬イーストオブザムーンから、日本生まれで昨年のBC-G1マイルを制して話題となったカラコンティーまで活躍馬の途切れることがない。祖母の産駒もランプルスティルツキンがマルセルブサック賞-G1などG1・2勝、更にその産駒にヨークシャーオークス-G1のタペストリーが出るなど、ミエスク系の繁栄の一端を担っている。母系に潜むヌレエフの効果は先週のミッキークイーンが示したところでもある。


主流血統ニックスの繰り返し    太字はG1勝ち馬
組み合わせ勝ち馬生年勝ち鞍
父ディープインパクト
母の父Storm Cat
キズナ2010東京優駿-G1、大阪杯-G2、京都新聞杯-G2、ニエル賞
-G2、毎日杯-G3
アユサン2010桜花賞-G1
ラキシス2010エリザベス女王杯-G1、大阪杯-G2
ヒラボクディープ2010青葉賞-G2
リアルスティール2012共同通信杯-G3
父Storm Cat
母の父Mr. Prospector
Storm Creek1993シェリダンS-米G3
Tale of the Cat1994キングズビショップS-米G2
Sea of Secrets1995サンヴィセンテS-米G2
Finder's Fee1997エイコーンS-米G1、メートロンS-米G1、ギャラントブル
ームH-米G2、シカダS-米G3
Katz Me If You Can1997ジェニュインリスクH-米G2、サラブレッドクラブオブアメ
リカS-米G3
One Cool Cat2001フィーニクスS-愛G1、愛ナショナルS-G1、アングルシー
S-愛G3、フィーニクススプリントS-愛G3
デネボラUSA2001マルセルブサック賞-仏G1、カブール賞-仏G3
Storm Surge2002ルコントS-米G3
Kamarinskaya2003愛1000ギニートライアルS-G3
Laa Raybセン2004クインシー賞-仏G3
Brave Tin Soldier2004クリフハンガーS-米G3
The Leopard2005ジェネラスS-米G3
父Mr. Prospector
母の父Nureyev
Stormalory2006トランシルヴァニアS-米G3
Kingmambo1990ムーランドロンシャン賞-仏G1、セントジェームズパレス
S-英G1、仏2000ギニーG1
Miesque's Son1992リゾランジ賞-仏G3
シェイクハンドUSA1992ニュージーランドT
Dance Sequence1993ロウザーS-英G2
Souvenir Copy1995デルマーフューチュリティ-米G2、ノーフォークS-米G2、
ダービートライアルS-米G3
Pyrus1998リッチモンドS-英G2、フォートマーシーH-米G3

 ドゥラメンテは母アドマイヤグルーヴがエリザベス女王杯連覇、祖母エアグルーヴが天皇賞(秋)、優駿牝馬に、3代母ダイナカールも優駿牝馬に勝った我が国随一の名門の御曹司。牝系だけでなく、父系にもダービー2代制覇がかかっている。この世代は2歳G1がいずれもディープインパクト産駒、桜花賞と皐月賞がキングカメハメハ産駒と牡牝セットで勝ってきているので、ミッキークイーンの勝利によって流れが決まった感がなくもないが、ガーサントFR、ノーザンテーストCAN、トニービンIRE、サンデーサイレンスUSA、キングカメハメハというメインストリームの更に真ん中を行く累代配合の見事さは、そんな流れも力ずくで引き戻してしまいそうだ。

 そのイトコにあたるのが▲ポルトドートウィユ。母ポルトフィーノはエルフィンSなど3勝を挙げ、桜花賞は出走取消、エリザベス女王杯-G1はスタート直後落馬とツキがないままに現役を終えた。ただ、母が不完全燃焼、祖母が名牝というパターンの活躍馬は少なくなく、母では秘められていた資質に孫の代でスイッチが入るということもある。この父とクロフネUSAの組み合わせは富士S-G3のステファノス、同世代でホープフルSのシャイニングレイがいて、クロフネUSAはデピュティミニスター系だけに母系に入って更に良さが出る可能性もある。

 これら3頭はサンデーサイレンスUSA〜ディープインパクト、キングマンボ、エアグルーヴがそれぞれ絡んでいる点で似通ったところがあるが、タガノエスプレッソも父ブラックタイドがディープインパクトの全兄、母がキングカメハメハ×トニービンIRE×ヌレエフだから、これも構成要素は共通するものが多い。近いところの活躍馬は3代母ヘバUSAの産駒にCBC賞-G3のヘッドライナーがいる程度だが、4代母はデラウェアH-G1に勝ったライクリーイクスチェンジ。その産駒にはベルモントS-G1のクレムフレシュやモンマスオークス-G1のドリームディール、孫にはトゥザヴィクトリーらの母フェアリードール、スピンスターS-G1など米G13勝のクリアマンデートなどがいる。

 ディープスカイ産駒のスピリッツミノルにも父仔制覇がかかっている。母の父ラムタラUSAも英ダービー馬であり、父の母の父チーフズクラウンと祖母の父ストームキャットがともにノーザンダンサーとセクレタリアトの組み合わせ、そしてキートゥザミント4×4の近交でもある。時計のかかる馬場で底力勝負になった場合は怖い。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.5.31
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