2015チャンピオンズカップ


3大血統順列組み合わせ

 2000年に東京で行われた第1回のこのレースに勝ったウイングアローは父アサティスUSA×母の父ミスターシービー×母の父ネヴァービートGBの配合で、2着のサンフォードシチーはヤマニンゼファー×タイテエム×テスコボーイGBだった。第2回を圧勝したクロフネUSAも父フレンチデピュティUSAこぞメジャーだが、母の父クラシックゴーゴー、祖母の父アイスカペードという異色の血統であり、今から思えば当時はダート血統といえば多様というか雑多であり古風でもあったりする性質がよく表れていた。その流れが変化を見せるのはカネヒキリ、ヴァーミリアンがいた2002年生まれの世代で、カネヒキリはフジキセキ×デピュティミニスター×ミスタープロスペクター、ヴァーミリアンはエルコンドルパサーUSA×サンデーサイレンスUSA×ノーザンテーストCANの配合。いずれもおおまかに分ければサンデーサイレンスUSA系、ミスタープロスペクター系、ノーザンダンサー系の組み合わせになっている。その後はアイスカペード系ワイルドラッシュUSA産駒のトランセンドの連覇などがあったとはいえ、全体としてはその3系統へと収束してきている。今年の出走馬に至っては下表に示した通り、父系は3系統、母の父も3系統+その他の3×4のマス目に収まるほどにシンプルなものになった。表では最もアウトサイダーとなっているノーザンダンサー系×リボー系のワンダーアキュートが最年長の9歳である点も、そういった流れを象徴しているように思う。ただ、何でもそうだが、このような収縮であれ拡散であれ、ものごとには波があり、今がそういう少数主流への収束の時期というだけのことで、サンデーサイレンスUSAとミスタープロスペクターが幅を利かせれば利かせるほど、潜在的には他系統に活躍のチャンスが増すわけでもある。


出走馬の父系と母の父系の組み合わせ
父系  サンデーサイレンスUSA ミスタープロスペクター ノーザンダンサー
母の父系
サンデーサイレンスUSA   ノンコノユメ
ロワジャルダン
サウンドトゥルー
ニホンピロアワーズ
ミスタープロスペクター クリノスターオー
コパノリッキー
サンビスタ
ナムラビクター
コーリンベリー  
ノーザンダンサー ローマンレジェンド ガンピットAUS
ダノンリバティ
 
その他 グレープブランデー グランドシチー
ホッコータルマエ
ワンダーアキュート

 話がそれました。多数派サンデーサイレンスUSA×ミスタープロスペクターは大将格コパノリッキーを筆頭に4頭、逆のミスタープロスペクター×サンデーサイレンスUSAのエースはノンコノユメと新星ロワジャルダンの2頭、また、20年にわたって北半球を支配してきたミスタープロスペクター×ノーザンダンサーの2頭には南半球生まれの香港馬ガンピットがいる。そして、王者ホッコータルマエはそれらにない在米ブラッシンググルーム系のチェロキーランという異質の血を持つことで優位を保ってきたともいえる。これら血統的派閥のそれぞれの代表をピックアップして組み合わせる作戦でいかがでしょうかというのが今回の狙い。
 コパノリッキーは阪神時代のこのレースを制したエスポワールシチーと同じゴールドアリュール産駒。このレースのほかフェブラリーSなどG1級レースに9勝したエスポワールシチー、東京大賞典など同6勝のスマートファルコン、ジャパンダートダービーのクリソライト、南部杯のオーロマイスターなど重賞を勝てばG1級まで上り詰め、上り詰めたらその地位を長く保つのがこの父の産駒の特徴であり、この馬はときどき負けることで成績にむやみな緊張感が漂わずにすんでおり、それが長く第一線で活躍できる原動力ともなっている。これはゴールドアリュール系に共通した長所でもある。母はダート1600〜1800mでティンバーカントリーUSA×トニービンIREの配合らしい鋭い追い込みを武器に3勝を挙げた。4代母アリーウィンUSAの産駒には京王杯オータムH3着のウェディングケーキ、孫に大阪杯のサンライズペガサスがいて、5代母フリートヴィクトレスはシープスヘッドベイH-G2の勝ち馬。2014年からの2年間でコパノリッキー、コパノリチャード、キタサンブラックと3頭のG1勝ち馬をまったく別の牝系から送り出したヤナガワ牧場の生産馬で、ひと口にサンデーサイレンスUSAの孫といっても料理の仕方で芝でもダートでも、1200mから3000mまでバリエーションが作れるというお手本を示した。

 ノンコノユメの父トワイニングUSAはこの6月に24歳で世を去った。3歳1月のデビューからピーターパンS-G2までの5連勝は2着につけた着差の合計が25 1/2馬身という派手なもので、アメリカンファミリーの名門から出たフォーティナイナーUSA後継という三拍子揃った背景もありながら、種牡馬としての実績は意外に地味だった。それが現3歳の2012年生まれの世代からは京王杯2歳S-G2のセカンドテーブルと本馬の2頭の重賞勝ち馬を出したのだから、死んだ種牡馬の仔は走るという俗諺も根拠はともかくそう外れていないと思わされる。母の父であるアグネスタキオンはこの世代のダート戦線のキー血脈でもあり、兵庫チャンピオンシップを圧勝してレパードS-G3も制したクロスクリーガーとユニコーンS-G3 2着のノボバカラは父がアドマイヤオーラだから、父系祖父がアグネスタキオンということになる。トワイニングUSA×アグネスタキオンの字面よりも、この血統は特に3代や4代血統表の方が良さが分かりやすい。フォーティナイナーUSAとサンデーサイレンスUSAという主流血脈が柱となり、ネヴァーベンドとロイヤルスキーUSA(アグネスフローラの父)からナスルーラのスピードを補強され、更にコートリーディーと(クリミナルタイプUSAの父)アリダーの組み合わせからは名牝アルセアが生まれている。勝ち続けている間は追いかけるべき血統でもある。

 ▲ホッコータルマエの母の父チェロキーランは米国のブラッシンググルーム系にありがちなスピード特化型でBCスプリント-G1などに勝った。しかし、祖母の父がファピアノ直仔なので、ミスタープロスペクター×ミスタープロスペクターの、それも米国クラシック型同士の組み合わせと見ることもできる。

 ガンピットAUSは先週のイラプトIREに続くドバウィ産駒の来日。名馬ドバイミレニアムの血を繋ぐ貴重な存在で、しかも欧州No.1というエリート種牡馬だからこそ、その脂の乗った時期だからこそ、豪州牝系と出合うことで擬似雑種強勢的な効果が出れば規格外の力につながる可能性もある。この香港からの挑戦が成功すれば今後も楽しめるので、先物買いの価値あり。

 ミスタープロスペクターの近交となるコーリンベリーは母の父ミシックトライブUSAがキングマンボの全弟という一点で不気味。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.12.6
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