2014秋華賞


フレンチの隠し味

 今回のヌーヴォレコルトは単勝オッズが2.0倍を切ると思われるので、2000年以降、2014年スプリンターズSまで、2歳戦を除いたG1級レースで単勝2.0倍以下の圧倒的1番人気となった馬の成績を調べてみると、延べ84頭が2.0倍以下の支持を受けていて、その成績内訳は以下の通り。


  全体 牡セン  牝  
1着423012
2着1569
3着1073
4着以下17134
勝率0.5000.5360.429
連対率0.6790.6430.750
3着内率0.7980.7680.857
 単勝回収率 75.9%81.9% 61.0% 

 十分な量のデータとはいえないかもしれないが、全体で見ると単勝回収率は75.9%を確保していて、控除率を考えれば1番人気に推されるだけの仕事はしている。牡馬はこのところオルフェーヴルやゴールドシップ、ちょっと前のロケットマンAUSまで平気で飛ぶ馬が目立っただけに、3着内率で牝馬に劣り、一方の牝馬は8割以上3着以内に踏み止まるが勝率が低い。ただ、この表の圧倒的1番人気牝馬28件中3分の1近くをブエナビスタが占めているので、牝馬の傾向というよりブエナビスタの傾向を反映している嫌いがないわけではないものの、ひとつ分かるのは、圧倒的本命馬を、今回はヌーヴォレコルトを連勝系馬券から外すのは無謀だが、単勝または単式の頭に他の馬を据えるのは一考の価値ありということだ。

 登録馬21頭のうち母の父フレンチデピュティUSAが4頭。出走できたのは2頭だが、これは5頭出しのゼンノロブロイに次ぐ今回の大きなトレンドではないだろうか。フレンチデピュティUSAは父としてNHKマイルCのピンクカメオ、桜花賞のレジネッタで記録級の大穴を出しており、下表から分かるように2008年のお祭り騒ぎのあとはしばらく鳴りを潜めていたが、昨年は母の父としてNHKマイルC-G1を単勝34.3倍で勝ったマイネルホウオウを送った。まだその威力に衰えはない。ブランネージュは母がフレンチデピュティUSA×サンデーサイレンスUSAの配合。これはこのレースが史上最大の波乱となった2008年の3着馬プロヴィナージュと同じ。祖母はマイルチャンピオンシップと香港マイル-G1に勝ったハットトリックの全姉で、3代母はサンタイネスBCS-G2勝ち馬。父のシンボリクリスエスUSAはこのところ1年ひとつのペースでG1に勝っていて、エピファネイアの菊花賞からおよそ1年が経過した。そろそろ一発が出るころ。シンボリクリスエスUSAとフレンチデピュティUSAの組み合わせにはヴァイスリージェントのパワーの影にボールドルーラーやプリンスキロといった50年代の古き良き米国血脈が潜んでいて、内回り2000mならその機動力が最大限に生かせるだろう。


G1級レースにおけるフレンチデピュティUSAの活躍
年度レース着順人気単オッズ馬名母の父
2001NHKマイルC1.2クロフネUSAフレンチデピュティUSAClassic Go Go
NHKマイルC13150.6グラスエイコウオーUSAフレンチデピュティUSAExplodent
JCダート1.7クロフネUSAフレンチデピュティUSAClassic Go Go
2004阪神ジュベナイルF11.9アンブロワーズフレンチデピュティUSAサンデーサイレンスUSA
2007NHKマイルC1776.0ピンクカメオフレンチデピュティUSASilver Hawk
スプリンターズSG13.6サンアディユフレンチデピュティUSACaerleon
2008桜花賞1243.4レジネッタフレンチデピュティUSAサンデーサイレンスUSA
天皇賞(春)G15.8アドマイヤジュピタフレンチデピュティUSAリアルシャダイUSA
優駿牝馬12.1レジネッタフレンチデピュティUSAサンデーサイレンスUSA
宝塚記念G111.3エイシンデピュティフレンチデピュティUSAWoodman
秋華賞16147.2プロヴィナージュフレンチデピュティUSAサンデーサイレンスUSA
朝日杯FS4.3ブレイクランアウトSmart StrikeフレンチデピュティUSA
2009ヴィクトリアマイルG125.3ショウナンラノビアフレンチデピュティUSAヘクタープロテクターUSA
阪神ジュベナイルF8.7アニメイトバイオゼンノロブロイフレンチデピュティUSA
2010秋華賞G113.3アニメイトバイオゼンノロブロイフレンチデピュティUSA
エリザベス女王杯G13.1メイショウベルーガフレンチデピュティUSASadler's Wells
2013NHKマイルCG11034.3マイネルホウオウスズカフェニックスフレンチデピュティUSA
フレンチデピュティUSAのG1級レースでの単勝回収率:父として196.3%、母の父として95.2%(JRAのみ、10月13日まで)

 ヌーヴォレコルトはハーツクライとディープインパクトの成長曲線を考えると、春にハープスターと互角に戦えていた点で相当な大物と考えていい。母の半姉ゴッドインチーフはエルフィンSに勝ち、ファンタジーSとチューリップ賞で2着、阪神3歳牝馬S3着、桜花賞4着と惜しい追い込みの多い活躍馬だが、この牝系にはドクターファーガー、ミスタープロスペクター、チーフズクラウンと米国血脈がたっぷりと蓄積されているのがハーツクライとの配合で効果を上げた。母の父の名マイラー・スピニングワールドUSAが無敵の強さを示したのは4歳夏以降。この父との配合なら春よりひと回りスケールアップしていて不思議ないが、今後より大きく成長する過程での踊り場にいる可能性もわずかながら考えておいた方がいい。

 母の父としてのスペシャルウィークは昨年の菊花賞をエピファネイアが勝ったほか、現3歳はタガノグランパやタガノブルグが活躍し、2歳世代ではクラリティスカイがいちょうSを制した。このあとにはブエナビスタなども控えていて、この分野で大きな成功を見るのかもしれない。▲マイネグレヴィルは昨年4月に死んだ父ブライアンズタイムUSAの21クロップ目の産駒。重賞勝ちからはレインボーダリアの2012年エリザベス女王杯-G1以来遠ざかっているが、昨年もこのレースでリラコサージュが15番人気で3着に入るなど、大レースでの強さには侮れないものがあり、レインボーダリア以上の晩年の大物が現れるチャンスはまだ数年残されている。フロリースカップGB系サンキストの分枝の母は、マイネルブラウ、マイネルブライアン、マイネルビンテージなどラフィアンの活躍馬を多数送り出したヒンドバースの曾孫。マルゼンスキー産駒の祖母にスペシャルウィークを配したことでマルゼンスキー3×2となった母の強い近交は、優等生型のこの系統に目覚めのショックを与えるかもしれない。

 ショウナンパンドラは弥生賞-G2のカミノタサハラや京都牝馬S-G3のウリウリと同じディープインパクト×フレンチデピュティUSAのパターン。カミノタサハラの全兄弟にはボレアス、マウントシャスタ、ベルキャニオンがいて、どれも活躍はしてもG1レベルに突き抜けられないもどかしい配合ではあるが、こちらはステイゴールドやレクレドールの半妹。サンデーサイレンスUSA父系と出合うことでこの牝系の爆発力が引き出され得る。

 リラヴァティの母シンハリーズUSAはシーザリオが勝った2005年のアメリカンオークス-G1の3着馬で、その後、デルマーオークス-G1に勝ってG1ウイナーの仲間入りを果たした。繁殖入りすると2年目の産駒アダムスピークがラジオNIKKEI杯2歳S-G3を制してシーザリオに先んじたが、産駒のG1勝ちではやはり後れを取ってしまった。ここでリラヴァティが勝てば同期の宿敵に追いつくことになる。父系祖父のサンデーサイレンスUSAと母の父の母グローリアスソングを通じてのヘイロー3×4は成功例が多い。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2014.10.19
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