2014皐月賞


ストームキャットの浸透

 ここ20年ほどの皐月賞は父系だけで考えるととても分かりやすいレースで、サンデーサイレンスUSAにブライアンズタイムUSAを中心とするロベルト系が対抗し、ときどきサドラーズウェルズなどのノーザンダンサーが食い込むと考えればいい。週刊競馬ブック「血統アカデミー」で山口裕司さんの「皐月賞(過去7年)」の表がこれを的確に示しているので、拝借した上で過去10年に拡張したのが下表。ロベルト系のブライアンズタイムUSAはシンボリクリスエスUSAに、サドラーズウェルズ系のオペラハウスGBはローエングリンに置き換わっているが、昨年もこの傾向に狂いがなかったのには驚くべき。あと、キングカメハメハ〜キングマンボなどミスタープロスペクター直系が3着までという例は表にない2003年のエイシンチャンプUSAも加えて3つあるので、これはこれとして信じるならば使えるデータ。


皐月賞上位馬の父系(過去10年)
年度馬名父系祖父母の父
20041ダイワメジャーサンデーサイレンスUSAHaloノーザンテーストCAN
2コスモバルクザグレブUSATheatricalトウショウボーイ
3メイショウボーラータイキシャトルUSADevil's BagStorm Cat
20051ディープインパクトサンデーサイレンスUSAHaloAlzao
2シックスセンスサンデーサイレンスUSAHaloデインヒルUSA
3アドマイヤジャパンサンデーサイレンスUSAHaloCaerleon
20061メイショウサムソンオペラハウスGBSadler's WellsダンシングブレーヴUSA
2ドリームパスポートフジキセキサンデーサイレンスUSAトニービンIRE
3フサイチジャンクサンデーサイレンスUSAHaloBellott
20071ヴィクトリーブライアンズタイムUSARobertoトニービンIRE
2サンツェッペリンテンビーGBCaerleonオジジアンUSA
3フサイチホウオージャングルポケットトニービンIREサンデーサイレンスUSA
20081キャプテントゥーレアグネスタキオンサンデーサイレンスUSAトニービンIRE
2タケミカヅチゴールドアリュールサンデーサイレンスUSAマルゼンスキー
3マイネルチャールズブライアンズタイムUSARobertoZabeel
20091アンライバルドネオユニヴァースサンデーサイレンスUSASadler's Wells
2トライアンフマーチスペシャルウィークサンデーサイレンスUSAダンシングブレーヴUSA
3セイウンワンダーグラスワンダーUSASilver HawkサンデーサイレンスUSA
20101ヴィクトワールピサネオユニヴァースサンデーサイレンスUSAMachiavellian
2ヒルノダムールマンハッタンカフェサンデーサイレンスUSAラムタラUSA
3エイシンフラッシュキングズベストUSAKingmamboプラティニGER
20111オルフェーヴルステイゴールドサンデーサイレンスUSAメジロマックイーン
2サダムパテックフジキセキサンデーサイレンスUSAエリシオFR
3ダノンバラードディープインパクトサンデーサイレンスUSAUnbridled
20121ゴールドシップステイゴールドサンデーサイレンスUSAメジロマックイーン
2ワールドエースディープインパクトサンデーサイレンスUSAAcatenango
3ディープブリランテディープインパクトサンデーサイレンスUSALoup Sauvage
20131ロゴタイプローエングリンシングスピールIREサンデーサイレンスUSA
2エピファネイアシンボリクリスエスUSAKris S.スペシャルウィーク
3コディーノキングカメハメハKingmamboサンデーサイレンスUSA

 サンデーサイレンスUSA系が強いと言ってしまうと出走馬のほとんどが父か母からその血が入っているので、それを更に絞り込むか、あるいは逆に非サンデーサイレンスUSAに向かうかのどちらかを選ぶ必要がある。まず、簡単な方を選ぶとして、サンデーサイレンスUSA血脈を持たないのはアジアエクスプレスUSA、クリノカンパニー、コウエイワンマンの3頭。このうちトニービンIRE直系はジャングルポケットで3着、ウイニングチケットでも4着までだったので後2者を嫌うと、残るのはアジアエクスプレスUSAのみとなる。テイエムオペラオー、メイショウサムソンを出したオペラハウスGBやローエングリンのサドラーズウェルズ系、そしてそれ以外のノーザンダンサー系はコスモバルクのザグレブUSA、サンツェッペリンのテンビーGBなどいずれも欧州色の強いものが多く、北米の主流血脈であるストームキャット系は若干色合いが異なるが、ストームキャット直仔のジャイアンツコーズウェイやヘネシーUSA直仔のヨハネスブルグUSAなどは欧州で大活躍して種牡馬としても地域を問わない成功を見せている。また、昨年の桜花賞馬アユサン、ダービー馬キズナ、短距離王ロードカナロアの母の父がすべてストームキャットだったことを見ても、この父系が遅ればせながら着実にわが国に浸透したことが分かる。そこで、前例はないが可能性があるストームキャット直系に賭けようということだ。曽祖父ストームキャットの父ストームバードはカナダの大馬産家E.P.テイラーの生産馬で1980年の英愛2歳チャンピオン。一方、3代母の父デピュティミニスターはやはりカナダ産馬で、2歳時はデビューから地元で6連勝を達成し、米国でもシャンペンS4着を挟んでローレルフューチュリティ、ヤングアメリカSとG1を2勝。9戦8勝で1981年の加年度代表馬・米加最優秀2歳牡馬となった。その父で大種牡馬のヴァイスリージェントはE.P.テイラー生産のノーザンダンサー直仔だから、カナダの天才の下で生まれて世界の主流に至ったスピード血統が、アジアエクスプレスUSAで合流することになったわけ。ちなみに、2年連続米年度代表馬となったワイズダンの父ワイズマンズフェリーはヘネシーUSA×シルヴァーデピュティの組み合わせによるスプリンター。優れたスピードの種をうまく育てることによって万能性を手に入れたひとつの例ではある。父系としてのストームキャットは2007年フェブラリーSのサンライズバッカス、同年朝日杯FSのゴスホークケン、2010年マイルチャンピオンシップのエーシンフォワードと1600mだけでゆっくりと成果を挙げてきたが、そろそろその壁を越えてもいいころではないだろうか。

 産駒ジャスタウェイがIFHAのワールドベストレースホースランキングで130のレーティングを得て暫定世界1位となったハーツクライ。桜花賞ではディープインパクトとステイゴールドの産駒が前にいたが、ヌーヴォレコルトが5番人気3着と健闘した。3歳春ではディープインパクト・キラーとなるにはまだ早いということでもあるが、そのあたりの早熟性は配合によってカバーできるものでもあるだろう。ワンアンドオンリーは母の父がタイキシャトルUSA。そのスピードに魅力があるだけでなく、サンデーサイレンスUSAとデヴィルズバッグを経由してのヘイローの近交に大きな可能性がある。昨年のこのレースの勝ち馬ロゴタイプはグローリアスソングとサンデーサイレンスUSAを経由したヘイローの近交馬だったが、グローリアスソングとデヴィルズバッグは全姉弟。同様のパターンでダノンシャンティやヴィルシーナなどが現れている。3代母の産駒に2002年の皐月賞馬ノーリーズンがいるアメリカンファミリーの名門コートリーディー系で配合されてきた種牡馬もスピードに富んだ米国の一流どころばかり。この時期からの能力全開が可能。

 冬の間は芳しくなかった中山芝でのディープインパクトの成績も、暖かくなって芝の生育が進めばそれにつれて上昇してくるのかもしれず、4月に入ると3歳特別戦の勝ち馬が2頭現れている。▲トーセンスターダムは叔父に天皇賞(秋)のトーセンジョーダンがいて3代母は繁殖牝馬として万能の名牝。人気がディープインパクトで穴もまたそうだとすると、アデイインザライフの反撃も怖い。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2014.4.20
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