2014ジャパンC


巻き返すには無二の場所

 現代のアメリカンファミリーで最大の勢力を誇るA4ファニーマリア系は1950年代のケンタッキーダービー馬スワップスやアイアンリージUSA、1994年の最優秀2歳牝馬ヤマニンパラダイスUSA、最近でもJCダートのトランセンドなど、途切れることなく名馬名牝を送り出してきた。今年は特別な当たり年で、カリフォルニアクロームがケンタッキーダービー-G1、プリークネスS-G1の2冠を制し、東京優駿-G1にワンアンドオンリーが勝った。夏になると新たにバイエルンが台頭し、秋にはブリーダーズCクラシック-G1を逃げ切ってしまった。同じ牝系から立て続けに活躍馬が現れることは少なくないが、同じ3歳に3頭もトップクラスが揃ったのは珍しい。ワンアンドオンリーは3代母の産駒に皐月賞馬ノーリーズン、シンザン記念のグレイトジャーニーがいる。5代母コートリーディーは子孫にバイエルンの登場以前にもアルセア、グリーンデザート、ヤマニンパラダイスUSAが現れたこの牝系で最も華やかな分枝。そこにダマスカス、ミスタープロスペクター、ダンチヒ、タイキシャトルUSAとアメリカ的なスピードを重ねてきた母ヴァーチュは3勝のうち2つを芝1200m、残り1つを芝1600mで挙げた短距離馬だった。この母の血をもって2400mで勝って3000mで敗れた理由とするのは乱暴ではあるが、世界ランキングでL部門(長距離)とE部門(超長距離)が分かれているのは、両コラムに確かな差が存在するからこそだろう。3歳時の父ハーツクライの戦績をたどると、東京優駿2着→神戸新聞杯3着→菊花賞7着→ジャパンC-G1・10着。同じ父のヌーヴォレコルトも秋華賞-G1とエリザベス女王杯-G1で勝ちあぐねているのを合わせて考えると、何となく嫌な予感がしないでもないが、そこは母のアメリカ血統の立ち直りの早さに期待しておきたい。ケンタッキーダービー馬カリフォルニアクロームは、プリークネスS-G1後のベルモントS-G1で4着に敗れて三冠達成にしくじり、ひと息入れて臨んだペンシルヴェニアダービー-G2もふがいない6着に敗れたが、ブリーダーズCクラシック-G1ではバイエルンからハナ+クビの僅差3着まで立ち直った。同様の一変があっても驚けない。


当たり年となったA4ファニーマリア系
JUDY-RAE ジュディレイ 1944 鹿 牝 父Beau Perre 米3勝
  Tulle 1950
  | Courtly Dee 1968
  |   バラダUSA Barada 1982
  |   | アンブロジンUSA Ambrosine 1988
  |   |   サンタムール 1996
  |   |     ヴァーチュ 2002
  |   |       ワンアンドオンリー 2011 牡 東京優駿G1、神戸新聞杯G2
  |   Aquilegia 1989
  |     Alittlebitearly 2002
  |       BAYERN バイエルン 2011 牡 ブリーダーズCクラシックG1、ハスケル
  |         招待SG1、ペンシルヴェニアダービーG2、ウッディスティーヴンスSG2
  Princess Matoaka 1956
    Princess Ribot 1964
      La Belle Fleur 1977
        Chase the Dream 1984
          Chase It Down 1997
            Love the Chase 2006
              CALIFORNIA CHROME カリフォルニアクローム 2011 牡 ケン
                タッキーダービーG1、プリークネスSG1、サンタアニタダービー
                G1、サンフェリペSG2

 バイエルンの祖母アクイリージアの産駒にはベルトリーニがいて、これは2歳時に英国で6FのジュライS-G3に勝った。3歳春にもヨーロピアンフリーハンデに勝ったが、そのままG1路線で善戦すれども勝てないレースを続けて5歳まで走り、2002年から種牡馬となった。初年度産駒のうちで最初に重賞勝ちを果たしたのがチェリーヒントンS-G2に勝ったドナブリーニGBで、続くチーヴァリーパークS-G1も連勝して父にとって最初のG1ウイナーともなった。3歳いっぱいで引退して繁殖入りしたドナブリーニGBが最初に生んだドナウブルーは関屋記念-G3など重賞2勝、ほかにヴィクトリアマイル-G1・2着、マイルチャンピオンシップ-G1・3着とG1でも活躍した。2番仔がジェンティルドンナで、その活躍はご存知の通り。母のスプリンターとしての徹底振りはワンアンドオンリーの母以上だが、そのあたりは規格外の種牡馬となりつつあるディープインパクトの産駒としても規格外と考えておくべき部分ではあると思う。

 ディープインパクト、ハーツクライ、ステイゴールドの三つ巴だった春の勢力図は、秋になるとハーツクライが伸びあぐね、ステイゴールドがフェードアウトしてしまった。その結果がディープインパクトの独走となっているわけだが、▲フェノーメノは春にも日経賞-G2で敗れて天皇賞-G1で一変した。前走が自身初めての2ケタ着順14着といっても0秒7差。ゴールドシップなら平気で巻き返してくる差ではあるので、ここにきてステイゴールド産駒らしさが出てきたに過ぎないと見ることはできる。ステイゴールドらしさによる大敗であれば、2400mへの距離延長、岩田騎手への乗り替わりといった刺激がいい結果につながる可能性は十分に残されている。

 ドイツのランドGERが勝った第15回ジャパンC-G1は今からもう19年も前のこと。ナリタブライアンとヒシアマゾンの4歳の牡牝が1、2番人気を分けていた。それをあっさり差し切ったのだからちょっとした衝撃ではあった。独ダービー馬のランドGERがフランス、イタリア、アメリカと巡って経験を積んだ5歳馬だったのに比べると、アイヴァンホウGERは国外経験がフランスのみで未知の部分が多い。それでもこの夏の大センセーションだったシーザムーンを差し切ったバーデン大賞-G1勝ちはその後の凱旋門賞-G1大敗で色あせるものではないし、うまくはまったときは鋭い脚も使える。19世紀から続く名門シュレンダーハン牧場の赤に青袖の勝負服は本邦初見参で、1940年の独オークス、独ダービーを圧勝した名牝シュヴァルツゴルトもこの服色だった。マンハッタンカフェもブエナビスタもシュヴァルツゴルトの子孫だから、日本にも大きな果実をもたらしている。アイヴァンホウGERの牝系は1975年のディアナ賞-G2(独オークス)勝ち馬イドリッサ、1981年の独セントレジャー-G2勝ち馬インデックスが出るライン。

 ハープスターは父ディープインパクトがジャパンC-G1勝ち馬で、母の父ファルブラヴIREも中山のジャパンC-G1勝ち馬。祖母の父トニービンIREの産駒にはジャングルポケットがいるので、ジャパンC-G1の申し子とさえ言える血統。父が3位入線失格、母の父が9着に終わった凱旋門賞-G1に比べればチャンスはずっと大きい。過去5年連続して牝馬が1位入線しているこのレース。ジェンティルドンナの正統後継者には最もふさわしいのかもしれない。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2014.11.30
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