2014フェブラリーS


東京1600のフジビュー

 ジャパンCダートと翌年のこのレースを両方勝つケースは意外に少なく、東京2100m→東京1600mの2008年までで2006年カネヒキリと2008年ヴァーミリアンの2例と、それ以降、阪神1800m→東京1600mとなっても2010年エスポワールシチーと2011年トランセンドの2例。ジャパンCダートの行われた14年間で4回しか達成されていない。単純計算で3.5年に1頭クラスの名馬でなければかなわないわけで、ダート競馬のレベルが底上げされた今では、それだけ突出するのは難しい。また、その時代のダート重賞のトレンドからは外れた存在が突如台頭する場合も少なくなく、キングカメハメハが席捲する昨年からの流れがそのまま続くと性急に結論を出してしまうのも危険だろう。

 そこで東京1600mの適性を探るべく、芝ダートを合わせた重賞成績によって種牡馬ランキングを作ってみたのが表1。広くて、ワンターンで、直線が長いこのコースの特徴は芝もダートも同じであるとするのはやや無理があり、サンプル数を確保するために過去20年としたら、ほぼフジキセキ産駒の稼動期間と重なったという点でも問題がないわけではないが、フジキセキ産駒がサンデーサイレンスUSAを差し置いてG1級レースに4勝、ダートでも1勝(カネヒキリ)している以上、東京1600mの実績では当代随一と認めないわけにはいかない。ブライトラインは母の父キングオブキングスIREが英2000ギニー馬。サドラーズウェルズ×ハビタットのニックスによるマイラーで日本には重い血だが、その重さがむしろダートには合っている。父のダートでの代表産駒カネヒキリの母の父がデピュティミニスターだったのに似て、ディーゼルエンジン的な重さがダート向きの資質として生きてくるのではないだろうか。また、サドラーズウェルズ×ハビタットが成功した要素のひとつがターントゥのインブリードなので、そこにサンデーサイレンスUSAを重ねた場合も整合性の高い配合になる。実際、サンデーサイレンスUSA×サドラーズウェルズの配合からは秋の天皇賞に勝ったヘヴンリーロマンスが出ている。祖母サンダーメイドは1986年の米古牡馬チャンピオン・ターコマンの全妹で、産駒サーガノヴェルはフェアリーSとクリスタルCに勝った。3代母タバはアルゼンチンの1000ギニー相当レース・ポージャデポトランカスの勝ち馬。こうして見ると南北両半球、東洋と西洋の1600m血脈をごった煮的にまとめたたくましさも感じられる。


表1) 東京1600m重賞過去20年の勝ち鞍順リーディング
順位種牡馬名1着2着3着着外勝率連対率3着率GT級(ダ)
1サンデーサイレンスUSA1416121290.0810.1750.2452(0)
2フジキセキ837490.1190.1640.2684(1)
3タニノギムレット624230.1710.2280.3423(0)
4フレンチデピュティUSA512270.1420.1710.2282(0)
5ディープインパクト454170.1330.3000.4332(0)
6アグネスタキオン442300.1000.2000.2502(0)
7ダンスインザダーク423380.0850.1270.1911(0)
8クロフネUSA352240.0880.2350.2941(0)
9キングカメハメハ334390.0610.1220.2042(0)
10マンハッタンカフェ332210.1030.2060.2752(1)
11タイキシャトルUSA322240.0960.1610.2252(1)
12Cozzene310110.2000.2660.2661(0)
1994年1月1日〜2014年2月18日(芝・ダート合算)、(ダ)はフェブラリーS

表2) フジキセキの東京1600m重賞実績
年月日レース馬場勝ち馬性齢
2005.06.04ユニコーンSカネヒキリ牡3Deputy Minister
2006.01.28東京新聞杯芝良フジサイレンス牡6マルゼンスキー
2006.02.18クイーンC芝良コイウタ牝3ドクターデヴィアスIRE
2006.02.19フェブラリーSカネヒキリ牡4Deputy Minister
2007.05.13ヴィクトリアマイル芝良コイウタ牝4ドクターデヴィアスIRE
2008.05.18ヴィクトリアマイル芝良エイジアンウインズ牝4デインヒルUSA
2010.05.09NHKマイルCG1芝良ダノンシャンティ牡3Mark of Esteem
2012.06.03ユニコーンSG3ストローハット牡3Starborough

 ベルシャザールは父にとってもっとも成功例の多いサンデーサイレンスUSA牝馬との配合で、昨年のダート戦線に限っても、マーキュリーCのソリタリーキング、プロキオンS-G3のアドマイヤロイヤル、マイルグランプリ(大井)のトーセンアドミラルなど多くの活躍馬が出た。母マルカキャンディは府中牝馬Sの勝ち馬で、祖母ジーナロマンティカUSAは米G2ロングアイランドH2着。3代母ワヤは牡馬相手の米G1マンノウォーSを含め仏米で8つの重賞に勝った。父にトライマイベストUSA(ラストタイクーンIREの父)、祖母の父にセクレトUSAとE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー血脈を配した点もこの配合のデザイン性を高めている。2008年生まれのオルフェーヴル・ロードカナロア世代は東京大賞典-G1と2度の香港スプリントーG1を加えてこれまで25のG1勝ちがある近年屈指の強力世代。昨年の勝ち馬グレープブランデーも同じ2008年生まれだ。この世代がこれから本格的にダート重賞の開拓に進むとなると、この部門で一歩先んじていて層の厚い2009年世代もうかうかしていられなくなるだろう。

 ジャパンCダート-G1でベルシャザールに敗れ、通年実績で優りながら最優秀ダート馬の栄誉を逃した▲ホッコータルマエは、同じ父でも父系祖父キングマンボ、祖母の父アンブライドルドとミスタープロスペクター系の主流血脈を受け、より米国色が濃い。母マダムチェロキーはチェロキーラン産駒なのでデビューから短距離に使われ、惜しいレースを繰り返してダート1700mで未勝利を脱した。その後の3勝も1800mで挙げていて、スプリンターになり切れないブラッシンググルーム系らしさが現れていた。しかし、だからこそ母として単調なスピードに寄らずに済んだともいえて、ミスタープロスペクター3×5のホッコータルマエの配合で重石のような役割を果たしているといえるだろう。そのぶん同じ父のベルシャザールに鋭さの点でわずかに屈した。東京の1600mでその点は有利とはいえない。ただ、昨年のドバイワールドC-G1・2着馬レッドカドーとは遠いながらも同ファミリー。昨秋からのライバル関係はドバイにまで持ち込まれそうだ。

 一昨年のジャパンCダート-G1勝ち馬ニホンピロアワーズがようやく再び上昇気流に乗ってきた。スマートファルコンに象徴されるように連戦連勝が求められるダート・チャンピオンの理想像からは離れていると言わざるを得ないが、大波がひとつの持ち味となっているホワイトマズルGB産駒としてはまったく堅実な成績といえる。

 グランドシチーはキングカメハメハ×ブライアンズタイムUSA。ミスタープロスペクター系とロベルト系のニックスであり、ジャパンダートダービーでホッコータルマエを破ったハタノヴァンクールはこのパターン。3代母の優駿牝馬勝ち馬タケフブキが東京優駿勝ち馬タケホープの姉で、この名門ビューチフルドリーマーGB系が今も活力を保っていることは先週ホエールキャプチャが改めて示した。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2014.2.23
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