2014チャンピオンズカップ


積み上げられた驚くべき実績

 米国の一流馬に来てもらうことを第一に考えて東京左回り2100mと阪神右回り1800mを天秤にかけた場合、1800mへの距離短縮の魅力が勝るのではないかと、これは2008年当時は私もそう考えたが、実際にはそういうわけでもなく、では、これなら文句はないだろうと左回り1800mの中京にしたのかと思ったら「ジャパンカップ」の看板を下ろしてしまった。それでも、西海岸の古馬王者ゲームオンデュードを負かしたことのあるインペラティヴUSAが来てくれたのは良かったし、来週のチャレンジカップと間違って登録する馬がいなかったのも良かった。右回り2000mの東京大賞典-G1との違いもはっきりすれば意義は小さくないとは思えるが、これはしばらく様子を見ないと何とも言えない。

 このような変化の渦中にあると新しいものに目が向きがちだが、出走馬の血統表を眺めて浮かび上がってきたのは小岩井牝系アストニシメントGBに遡るワイドバッハとナムラビクターの2頭。アストニシメントGBといえば桜花賞馬ブロケードや天皇賞馬メジロマックイーン、オフサイドトラップらが華やかな存在だが、雪でダートに変更された重賞に勝ったシュウザンキングやアスコットエイトから、南部杯3連覇のブルーコンコルドまでダートの活躍馬も多い。全体の数が多いのが第一の理由で、印象だけで物を言ってしまうが、同じ小岩井の名門フロリースカップGBやビューチフルドリーマーGBに比べるとダートで思い出す名前が多い。ツリー形式では紙1枚に収まらないので、下表には生年別にダート重賞勝ち馬を示した。これ以外にもイーグルシャトーからオオエライジンまで地方地区重賞に勝ったものもいて、それらは割愛してあります。ワイドバッハはマンジュデンカブトやブルーコンコルド、芝ではチトセホープからオフサイドトラップまで多くの名馬が現れたエベレストの分枝。1963年生まれの4代母タマクインは毎日王冠、関屋記念に勝って1967年の最優秀古牝馬に選ばれている。ヒンドスタンGB産駒でゲインズバラ4×4のタマクインにモバリッズIREを配してハイペリオンを重ねたのが3代母タマクインニセイ。そこにナイスダンサーCANでノーザンダンサー、スキャンUSAでミスタープロスペクターを導入し、アジュディケーティングUSAで再びノーザンダンサー血脈の強化が施された配合。スキャンUSAもアジュディケーティングUSAも現役時代に活躍したのは80年代と90年代の境界で、アジュディケーティングUSAのワイドバッハ以前の重賞勝ちはアジュディミツオーの2006年帝王賞、スキャンUSA直仔のメイショウカイドウの大活躍もそのころだから、それぞれの種牡馬としての旬は恐らく遠く過ぎているものの、このように2頭が並ぶととてもきれいに収まる。10年ほど前の米国のG1勝ち馬にいてもおかしくないような血統表だ。

 ナムラビクターは桜花賞馬ヒデコトブキが出る分枝で、祖母の産駒にNHK杯のナムラコクオーがいる。ナムラコクオーはダートでもプロキオンSに勝ち、ミスタープロスペクター系の走りでもあったキンググローリアスUSAの産駒。母の父はより現代的なミスタープロスペクター系エンドスウィープUSAで、ゼンノロブロイからサンデーサイレンスUSA血脈を導入すると同時にマイニングUSAを経由したミスタープロスペクター4×4の近交ともなっている。


名門アストニシメントGB系のダートでの実績
アストニシメントGB Astonishment(GB) 牝、黒鹿毛1902年生、英国産、1907年輸入
生年産駒(性、父) 重賞勝ち鞍
1979シュウザンキング(牡、ジョッギングUSA) アメリカJCC
1980アスコットエイト(牡、ヨドヒーロー) 中日新聞杯
1981リキサンパワー(牡、オーバーサーブUSA) 札幌記念、フェブラリーH
1983プレジデントシチー(牡、ダイコーター) ブリーダーズゴールドC
1986マンジュデンカブト(牡、ノーザンテーストCAN) ブリーダーズゴールドC
1988ラシアンゴールド(牡、ラシアンルーブルUSA) 帝王賞、フェブラリーH
1991ナムラコクオー(牡、キンググローリアスUSA) プロキオンS
パリスナポレオン(牡、メジロティターン) マーキュリーC
1993サンディチェリー(牡、スラヴィックUSA) オグリキャップ記念
1994シンプウライデン(牡、ワカオライデン) 名古屋優駿
1995インテリパワー(牡、ルションUSA) 川崎記念、ダイオライト記念、浦和記念
サンフォードシチー(牡、ヤマニンゼファー) 武蔵野S
ニホンピロジュピタ(牡、オペラハウスGB) 南部杯、エルムS
1996マイシーズン(牡、ホワイトマズルGB) グランシャリオC
リージェントブラフ(牡、パークリージェントCAN) 川崎記念、ダイオライト記念、名古屋グランプリ
1998ニホンピロサート(牡、スターオブコジーンUSA) プロキオンS、ガーネットS、さきたま杯、兵庫ゴ
ールドT、サマーチャンピオン
2000ブルーコンコルド(牡、フサイチコンコルド) 南部杯×3、東京大賞典、JBCスプリント、JBCマイ
ル、かしわ記念、シリウスS、プロキオンS、黒船賞
2003キクノアロー(牡、キングヘイロー) ダイオライト記念
2005キクノサリーレ(牡、ジェイドロバリーUSA) 武蔵野SG3
ナンヨーリバー(牡、スキャンUSA) 兵庫チャンピオンシップ
2006セイクリムズン(牡、エイシンサンディ) 根岸SG3、カペラSG3、さきたま杯、かきつばた記念×2、
黒船賞×3、東京スプリント
2009ナムラビクター(牡、ゼンノロブロイ) アンタレスSG3
ワイドバッハ(牡、アジュディケーティングUSA) 武蔵野SG3
JRAおよび交流重賞、ダートグレード競走のみ(芝重賞のダート変更含む)

 今年のダート戦線はフェブラリーSでコパノリッキーが突如台頭して独走しているように見えるが、この世代は3歳時からレベルが高かったのになぜか揃って低迷・停滞し、ここにきてコパノリッキーを追ってクリソライト、インカンテーション、ベストウォーリアUSAが次々に目覚めたり復活したりしている。▲クリソライトコパノリッキーのゴールドアリュール・コンビは2005年生まれのスマートファルコンとエスポワールシチーのような存在に成長する可能性がある。クリソライトは母クリソプレーズが2006年のJCダート勝ち馬アロンダイトの全姉。ゴールドアリュールとアロンダイトを足して2で割ったダートの申し子のような血統で、ヌレエフ3×5とサドラーズウェルズが4代目にあるややアンバランスな配置も、この血統ならではの爆発力を感じさせる。マックスの能力ではここでも最右翼のものを秘めていると思う。コパノリッキーの母コパノニキータはティンバーカントリーUSA×トニービンIRE×リアルシャダイUSA×アリダーの配合で、ハイペリオンとレイズアネイティヴの混合となり、長い距離への適性も爆発力も備えていて、今もどんどん強くなっているところだろう。

 インカンテーションは3代母タイムチャーターが英オークス-G1、キングジョージVI世&クイーンエリザベスS-G1、英チャンピオンS-G1などに勝った名牝。そこにポリッシュプレセデント、マキアヴェリアンと欧州仕様の米国血脈を重ね、仕上げがミスタープロスペクターと相性の良いシアトルスルー直系の父シニスターミニスターUSA。この米・欧のミックス具合が活力につながっているように見える。

 インペラティヴはシアトルスルー、セクレタリアト、スペクタキュラービッド、キャノネードとボールドルーラー系のケンタッキーダービー馬(あるいは三冠馬、または2冠馬)をきれいに重ねた米国代表にふさわしい配合。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2014.12.7
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