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男勝りのジェンティル姫に今イチ頼りにならなさそうな良血で年長のお供が2頭従うディープインパクト勢と、協調性がなさそうで毛色も出自もバラバラのステイゴールド勢が3対3。数の上では互角の勢力図となった。現役時のステイゴールドとディープインパクトはどちらも池江泰郎厩舎に所属し、ステイゴールドが香港ヴァーズG1に勝って引退した翌春に生まれたのがディープインパクトになる。誕生日が1日違いなのはたまたまだろう。どちらも12月の阪神芝2000mの新馬戦でデビューし、どちらも12月に有終の美を飾って引退したが、それぞれがたどった過程は対照的だった。ピークのパフォーマンスを抽出すれば、ステイゴールドの香港ヴァーズG1とディープインパクトの有馬記念G1にそれほど大きな差はないと思えるが、多くの凡走や逸走を重ねた前者が、ほぼ完璧な戦績を残した後者に見劣るのは仕方のないところ。種牡馬としても初年度産駒の最初の重賞がソリッドプラチナム3歳夏のマーメイドSだったステイゴールドに比べると、ダノンバラードがラジオNIKKEI杯2歳SG3に勝ち、翌年マルセリーナが桜花賞G1でクラシック勝ちを収めたディープインパクトのある意味約束された成功ぶりは際立っている。ただ、トップレベルの比較では互角で、特にディープインパクト産駒のデビュー後はステイゴールド産駒の活躍が勢いを増している。このレースに限ると、自身の成績ではステイゴールドはサイレンススズカに3/4馬身差まで迫る2着があり、ディープインパクトは楽勝しているが京都での施行だった。産駒成績もステイゴールドはすでにドリームジャーニー、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴルで3勝。ディープインパクト産駒は昨年マウントシャスタが出走(5着)しただけなので比較できないが、表に示したようにG1勝ちが500m前後の長大な直線を持つ舞台に偏り過ぎていませんかとはいえる。 |
| 2大種牡馬比較表 | ||
| ステイゴールド | ディープインパクト | |
| 生年月日、産地 | 1994年3月24日、白老産 | 2002年3月25日、早来産 |
| 成績 | 2〜7歳時日首港50戦7勝 | 2〜4歳時日仏14戦12勝 |
| 宝塚記念実績 | 98年2着、99年3、00年4、01年4 | 06年1着(京都) |
| 総賞金 | 76299.3万円 120万米ドル 800万香港ドル | 145455.1万円 |
| G1級勝ち鞍 | 香港ヴァーズ | ジャパンCなど7勝 |
| 馬体重 | 408〜436kg | 436〜452kg |
| 走破距離 | 118,100m | 33,600m |
| 騎手(騎乗回数) | 熊沢(33)、武豊(7)、後藤浩 (5)、ペリエ(2)、蛯名(1)、 安藤勝(1)、藤田(1) | 武豊(14) |
| 種牡馬入り年度 | 2002年 | 2007年 |
| 産駒数※ | 805(9世代) | 560(4世代) |
| 産駒収得賞金 | 11,631,361,500円 | 10,609,653,500円 |
| 種牡馬ランキング (JBIS、総合) | 132→28→23→20→ 12→14→6→3→7 | 40→4→1→1 |
| 種付料推移 | 初年度200万円→本年800万円 | 初年度1200万円→本年1500万円 |
| 重賞勝ち馬 | 16頭(平地)/2頭(障害) | 27頭(日本)/2頭(仏国) |
| 産駒のG1級勝ち | 東京優駿G1 菊花賞G1×2 皐月賞G1×2 有馬記念G1×3 宝塚記念G1×3 天皇賞(春)G1 朝日杯フューチュリティS 計13勝 | 東京優駿G1×2 優駿牝馬G1 桜花賞G1×3 仏1000ギニーG1 安田記念G1 ヴィクトリアマイルG1 秋華賞G1 阪神ジュベナイルFG1 計11勝 |
| ※2011年生までの血統登録頭数 | ||
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そういうわけで、宝塚記念に限れば、たとえオルフェーヴルを欠いてもステイゴールド勢が優勢。◎ナカヤマナイトは共同通信杯G3で父より遥かに早く重賞勝ちを達成し、父が出られなかった春の2冠でも掲示板を確保した。その後の比較では4歳で既に春秋の天皇賞や宝塚記念で2着のあった父に実績で及ばないし、強い相手に敵わず弱い相手に勝つあたり、秘めた意外性にも過大な期待はできないのかもしれない。ただ、ステイゴールド系の宝塚記念での強さがサッカーボーイ成分に由来するものだとすると、ディクタスFR風の見た目、稀に発揮したことのあるサッカーボーイ的な脚など、この馬にも望みをつなぐ要素はある。サッカーボーイはステイゴールドの母ゴールデンサッシュの全兄。自身は宝塚記念に縁もなく引退したが、産駒ヒシミラクルは03年のこのレースを6番人気で勝ち、娘の産駒ツルマルボーイは02年、03年と連続2着。メジロマックイーンが勝った93年に8番人気で2着となったイクノディクタスはサッカーボーイと同じディクタスFR×ノーザンテーストCANの配合だった。ステイゴールド産駒3頭を、どれがサッカーボーイ的かという物指しで選べば、さほど無理のない抜擢といえないだろうか。 ○ゴールドシップは母の父が宝塚記念勝ち馬。京都で行われた4歳時に2着、5歳時は直前で骨折し、6歳で勝った。父も母の父も、宝塚記念に関しては成功も苦労も相半ばしていて、4歳の現段階ではそれがどちらに転ぶか分からないともいえるが、これまで示したコース適性がステイゴールド産駒らしい阪神・中山>東京・京都であるだけに、巻き返してくるのは間違いない。E.P.テイラーの手になるノーザンダンサー直仔、ノーザンテーストCANとザミンストレルが4代目に並ぶ点は、馬場が渋りやすいこの時期にも心強い。 ▲フェノーメノは父のようにG1惜敗歴を重ねることなく、4歳春、4度目の挑戦で戴冠。英オークスG1に勝ったタレントとは4代母リペックを共有していて、この春はファミリーの勢いも増している。伯父のインディジェナスIREは4歳で重賞初制覇、5歳で香港国際ヴァーズに勝って6歳秋にジャパンCG1・2着となった晩成型で伸びる余地は大。ただ、母がリボー4×4のデインヒル産駒という一発長打型なので、続けてもう一発あるかどうかが若干の懸念材料。 △ジェンティルドンナは母ドナブリーニGBが短距離直線競馬でしか勝っていないせいでもないだろうが、ヴィルシーナの抵抗に手を焼いた秋華賞G1の京都内回りと、優駿牝馬G1、ジャパンCG1を制した東京では、適性に大きな差があった。ドバイシーマクラシックG1も安全策で外を回った隙をベテラン・セイントニコラスアベイに突かれた格好で、女の子にしては大雑把な力の競馬をしてしまう点が今回は弱みとなり得る。 ヒットザターゲットの母ラティールは愛知杯2、3着、中山牝馬S3着など重賞には手が届かなかったが、時折りその父タマモクロスを彷彿とさせる脚を使った。タマモクロスは昭和最後のこのレースの勝ち馬。唯一の非サンデーサイレンスUSA血統だけに、同属相打つ間隙を突いての上位台頭はあるかもしれない。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2013.6.23
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