2013秋華賞


5年ぶりに輝く紋章

 この世代はネオユニヴァースが251頭の牝馬に種付けしたのを筆頭にクロフネUSA212頭、シンボリクリスエスUSA207頭、フジキセキ203頭と4頭の種牡馬が種付け頭数200頭超えを記録した。しかし、注目すべきはそこではない。ウォーエンブレムUSAが前年比+21頭の69頭に種付けした点にこそ瞠目すべき。2002年のケンタッキーダービー-G1を4馬身差で逃げ切り、続くプリークネスS-G1も2番手から抜け出して2冠馬となったウォーエンブレムUSAはオーナーのサルマン殿下の死去にともないその年の秋に社台グループが1700万ドルで購買、翌年から日本で種牡馬となった。2002年に死んだサンデーサイレンスUSA後継としての期待をよそに、牝馬に興味を示さず、初年度は7頭の種付けに成功して4頭の産駒を得たのみだった。種牡馬シンジケート解散後の2年目には53頭の種付けに成功し、3年目以降はまたその数も激減するのだが、53頭の種付けから生まれて血統登録された33頭の産駒が競馬場に姿を現すようになると、中央で7頭が2歳のうちに勝ち上がり、それらが3歳を迎えた2008年春にはショウナンアルバの共同通信杯、ブラックエンブレムのフラワーC、エアパスカルのチューリップ賞と次々とクラシック候補を送り出すまでになっていた。秋にはブラックエンブレムが秋華賞を制し、この世代では現役で健在のシビルウォーを含めて6頭が10の重賞を制した。ウォーエンブレムUSAが2度目のピークを迎えたのが冒頭に述べたように2009年の種付け。数としては過去最高。ローブティサージュが阪神ジュベナイルフィリーズ-G1勝ちで口火を切ったそのあとが続かないが、2005年生まれ(2004年種付け)世代も春の小爆発からブラックエンブレムが11番人気で勝った秋華賞の大爆発までは鳴りを潜め、条件戦で数個の勝利があるだけだった。春のクラシックで猛威を振るったディープインパクト産駒はここも4頭出しだが、主力はアユサンが休養、牡馬のキズナはフランス遠征と、留守部隊が小粒な点は否めない。しかも外回りのディープインパクト産駒が得意とする1800mや2200m以上と違い、好走率がいくらか落ちる内回りの2000mが舞台。付け入る隙はある。

 ローブティサージュの祖母リッチアフェアーGBは安田記念のアサクサデンエン、ドバイワールドC-G1のヴィクトワールピサ、天皇賞(秋)2着のスウィフトカレントを産んだ名牝ホワイトウォーターアフェアGBの全妹にあたる。ホワイトウォーターアフェアGBがポモーヌ賞-G2FR(2700m)に勝っているのに比べると妹は同様に長距離向きでも準重賞3着とスケールダウンしているのは否定できないが、シングスピールIREとの間に生まれた母プチノワールはアサクサデンエンとまったく同じ構成になる。この母の血統の柱はカナダの名牝グローリアスソングとマキアヴェリアンの母クドフォリーを経由したヘイロー3×4の近交で、このあたりに擬似サンデーサイレンスUSA的な瞬発力を期待しておくことができる。ウォーエンブレムUSAとの配合では、ミスタープロスペクター3×4となるだけでなく、13戦無敗のパーソナルエンスン、米最優秀古牝馬グローリアスソング、仏最優秀2歳牝馬クドフォリーと名牝が並ぶほか、リボーとエルバジェがそれぞれ3本潜んでいる点にも一発の魅力がある。



ウォーエンブレムUSAの世代別種牡馬成績
種付
年度
種付
頭数
生産
頭数
血統登
録頭数
収得賞金(円)重賞勝ち馬
2003744295,746,000クランエンブレム(阪神ジャンプS)
20045334331,264,342,000ブラックエンブレム(秋華賞、フラワーC)、
シビルウォー(ブリーダーズGC×2、白山
大賞典、マーキュリーC)、キングスエンブ
レム(シリウスSG3)、ショウナンアルバ(共
同通信杯)、ウォータクティクス(アンタレ
スSG3)、エアパスカル(チューリップ賞)
2005955190,177,000 
2006100−− 
2008481719224,454,000 
2009694443392,180,000ローブティサージュ(阪神JFG1)
20105440 
2011191313−− 
2012200−− 
数値はJBISサーチ( http://www.jbis.or.jp )による(10月9日現在)

 凱旋門賞に勝ったトレヴの3代母は、1987年の富士Sで日本の競馬ファンの度肝を抜いた名牝トリプティクUSAのひとつ上の姉。牡馬を蹴散らし多くのG1勝ちを果たした鉄の女トリプティクUSAも印象としては富士Sの脚が一番鋭かったのではないかと思わなくもないが、あれから26年も経ってあれ以上の驚きに見舞われるとは思いもしなかった。ティアーモは3代母がトリプティクUSAの妹で、ガネー賞-G1FR勝ち馬4代母トリリオンがトレヴと共通する。3代母のバルジェはヴァントー賞-G3FRに勝ち、ヴェルメーユ賞-G1FRで3着となった活躍馬で、その孫に名馬フリオーソが出た。英・愛ダービー馬ジェネラスIREや、凱旋門賞-G1FRのあとのフォレ賞-G1FRで6つ目のG1勝ちを果たしたムーンライトクラウドも同じファミリー。おなじみキングカメハメハ×サンデーサイレンスUSAにリファール血脈が加わる点はジャパンC-G1のローズキングダムに似る。

 フランスつながりというわけでもないが、リボントリコロール。母リボンアートはダイワスカーレットやダイワメジャーの姪にあたり、祖母は4歳牝特(西)の勝ち馬。ノーザンテーストCAN、サンデーサイレンスUSAが入ることで“スカーレット一族”の成功の要件を備えていて、大雑把にいえばどんな種牡馬でも成功させる器である可能性がある。父は本邦輸入初年度産駒である3歳世代が走らず、2歳馬がこの秋そこそこの活躍を見せている。物足りないのは確かだが、フランスでの産駒にはヴィジオンデタ、ソノワと2100mになってからの仏ダービー馬を2頭出しているのだから、見直すべき余地があるのは確か。死んだ種牡馬の仔は走るという俗説を思い出す手もある。

 サクラプレジールは伯父に天皇賞(秋)のサクラチトセオー、叔母にエリザベス女王杯のサクラキャンドル、イトコに金鯱賞のサクラメガワンダーがいる。サンデーサイレンスUSAとロベルトを経由したヘイルトゥリーズンの近交が柱となる配合なので、サクラメガワンダーに通じるパターン。父はダービー馬サクラチヨノオーの全妹が母で“サクラ”の中核牝系スワンズウッドグローヴGBの出身。その父グレイソヴリンと3代母クレアーブリッジに潜むマームードが意外な切れを生む可能性はある。

 ピンクカメオのNHKマイルCが17番人気、レジネッタの桜花賞が12番人気、プロヴィナージュの秋華賞3着が16番人気とG1での牝馬が怖いのがフレンチデピュティの血。直仔ノボリディアーナ、娘の仔でディープインパクト産駒のウリウリが穴。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2013.10.13
©Keiba Book