2013皐月賞


星になった大種牡馬を偲ぶ

 4月4日、繋養先のアロースタッドでブライアンズタイムUSAが死んだ。放牧中の骨折により安楽死の処置がとられたもの。28歳なら大往生といえるだろうし、1歳下のサンデーサイレンスUSAより12年も長く生きた。最後となったこの春も9頭に種付けしたというから、クラシックでいえば今から4年後まで希望は続くことになる。父としてのブライアンズタイムUSAは、特に皐月賞では5頭が出走してサニーブライアンとシルクライトニングが1、2着を独占した1997年を筆頭に、初年度産駒の1994年ナリタブライアン、2002年ノーリーズン、タニノギムレットの1、3着、2007年ヴィクトリーの7番人気での勝利など、延べ20頭の出走によって[4.2.2.12]。率でいうとサンデーサイレンスUSAの[7.5.3.30]を凌ぐ成績を残した。

 母の父としてのブライアンズタイムUSAは2005年に初めて中央と地方を合算した総合ランキングでベストテンに入ると、昨年には2位に上昇し、今年もこれまでサンデーサイレンスUSAに次ぐ2位を保っている。質量ともに圧倒的なサンデーサイレンスUSAの半分以下、3分の1以上といったところだが、こちらはサンデーサイレンスUSA系種牡馬との配合に無理のない点が大きな強み。下表に示した通り娘の産駒の重賞勝ち馬の半数がサンデーサイレンスUSA系種牡馬との配合で、ダート王エスポワールシチーのほか、スリーロールス、ビートブラックなどは大穴でG1勝ちを果たした。メイケイペガスターは今回唯一のブライアンズタイムUSA牝馬の産駒。母ストームホイッスルはアネモネSに勝ったペニーホイッスル、兵庫ジュニアGPのモエレソーブラッズの半妹で、上がいずれもサンデーサイレンスUSA産駒でオープンまで行ったのに比べると凡庸な2戦未勝利の成績に終わったが、サンデーサイレンスUSA系の種牡馬を配合されることで産駒は重賞勝ちに至った。父のフジキセキはこれまで産駒が皐月賞に5頭出走してダイタクリーヴァ、ドリームパスポート、サダムパテックの3頭が2着となった。父自身が幻のクラシック馬と呼ばれたことに遠慮してか、産駒もクラシックにはまだ勝っておらず、ダノンシャンティのNHKマイルCG1が唯一の3歳限定G1勝利だが、最も近いところまで行っているのがこのレースであるのは事実。リボー4×5の近交に由来する底力を秘めたこの母との配合では、祖母の父シルヴァーデピュティがカネヒキリの母の全兄という点も面白いところで、これと3代母の父バックファインダーからバックパサーが入ることにより、父の持つインリアリティ血脈も生きてくる。


ブライアンズタイムUSAの母の父としての偉業
馬名生年毛色重賞勝ち鞍
ティコティコタック1997サッカーボーイ秋華賞
サンライズペガサス1998サンデーサイレンスUSA毎日王冠G2、大阪杯G2、大阪杯
ブルーコンコルド2000鹿フサイチコンコルド南部杯×3、かしわ記念東京大賞典JBCスプリントJBCマイル、シリウスS、プロキオンS、京王杯2歳S、黒船賞
ヴァンクルタテヤマ2002フォーティナイナーUSAプロキオンSG3、サマーチャンピオン×2、北海道スプリントC
テイエムアンコール2004オペラハウスGB大阪杯G2
エスポワールシチー2005ゴールドアリュールジャパンCダートG1フェブラリーSG1かしわ記念×3、南部杯×2、マーチS、名古屋大賞典、みやこS
トーホウドルチェ2005黒鹿サウスヴィグラスUSAマリーンC
スリーロールス2006鹿ダンスインザダーク菊花賞G1
ビートブラック2007ミスキャスト天皇賞(春)G1
スティールパス2007黒鹿ネオユニヴァーススパーキングレディーC
グランドシチー2007鹿キングカメハメハマーチSG3
スギノエンデバー2008鹿サクラバクシンオー北九州記念G3
トレンドハンター2008青鹿マンハッタンカフェフラワーCG3
ハタノヴァンクール2009キングカメハメハ川崎記念ジャパンダートダービー
メイケイペガスター2010フジキセキ共同通信杯G3
サクラプレジール2010サクラプレジデントフラワーCG3
※馬名とレース名の太字はG1/Jpn1、父の太字はサンデーサイレンスUSA系

 皐月賞のサンデーサイレンスUSA対ブライアンズタイムUSAという構図が時代を経て変化するなら、サンデーサイレンスUSAの跡は直仔群が継ぎ、ブライアンズタイムUSAの代理は同じロベルト系のシンボリクリスエスUSAが務めるのかもしれない。エピファネイアの父シンボリクリスエスUSAは、これまでフェブラリーSG1のサクセスブロッケン、安田記念G1のストロングリターン、朝日杯フューチュリティSG1のアルフレードらを出してきたが、有馬記念連覇の名馬にふさわしいこのカテゴリーの大物は初めて。父はこの時期まだ500万条件で2勝目を挙げたところだったが、天皇賞(秋)も中山2000mで勝っているだけに、コース適性に不安がない。一方の母シーザリオは優駿牝馬とアメリカンオークスG1を制した名牝。エピファネイア自身、レースを重ねて引き締まってくるにつれ、外見上はシーザリオ〜スペシャルウィークに近付いてきた印象もある。こちらは父がロベルト系、母がサンデーサイレンスUSA系のヘイルトゥリーズンの近交となるが、脇を固めるシアトルスルーもサドラーズウェルズもヘイルトゥリーズンを隠し味としている血脈。スケールの大きな骨組みで日米欧の主流血脈をまとめ上げている。これまでの父の産駒にはいわくいい難いもどかしさがつきまとっていたが、それを一気に突破しそうだ。

 サンデーサイレンスUSAとブライアンズタイムUSAの抗争にたまに割り込んだのがオペラハウスGBだから、その代役を果たすのはサドラーズウェルズ系ということで、ローエングリンの産駒ロゴタイプ。父系祖父シングスピールIREの母グローリアスソング、母の父サンデーサイレンスUSAを経由したヘイローの近交はダノンシャンティに似ている。それぞれがヘイローの代表産駒となる名牝名馬だから見た目に高級感があって実質的な効果も高い。祖母はローズSに勝ち高松宮杯2着の活躍馬で、その子孫には中日新聞杯のグランパドドゥ、東海Sのアンドゥオール、キーンランドCG3のパドトロワなどの重賞勝ち馬が出ている。オペラとバレエなら相性がいいのではないだろうか。そうでもないのかな?

 桜花賞はディープインパクト産駒が3連覇した。このレースはステイゴールド産駒に3連覇の資格があるのだが、出走なし。そこでフェイムゲーム。祖母がステイゴールドの母の全姉にあたる。半兄バランスオブゲームは中山記念連覇の中山巧者。同じ牝系のタマモベストプレイはフジキセキとノーザンテーストCANのコンビネーションが不気味。上は明らかに距離に限界があるが、年とともに味を変える可能性を秘めた血統。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2013.4.14
©Keiba Book