2013桜花賞


インパクト不足の兄に代わりまして

 阪神外回りが新設されると、阪神ジュベナイルフィリーズはウオッカを、桜花賞はダイワスカーレットを送り出した。これら2頭は同じ年に生まれたのがもったいない名牝。両方勝ったブエナビスタとアパパネも文句のない名牝で、ジェンティルドンナは桜花賞G1を足掛かりに桁違いの名牝へと成長を遂げた。コース新設から7年目を迎えて、名牝のための桜花賞となる年と、そうでない年に性格が分かれることがはっきりしてきた。昨年はディープインパクト産駒の2歳女王ジョワドヴィーヴルに代わって同じ父のジェンティルドンナが台頭したので、小波乱とはいえ今から思えば順当な結果。一方、今年は阪神JFG1勝ち馬が前哨戦で既に大敗しており、しかもディープインパクト産駒の牝馬に未だ重賞勝ち馬が出ていない。対照的にわずかな産駒数しかないところからここまで上がってきたものもいて、血統のトレンドもこれまでになく混沌としている。

 ディープインパクトのモタつき以上に問題なのはネオユニヴァースにまだ重賞勝ち馬が出ていないこと。2010年生まれは初年度産駒ロジユニヴァースやアンライバルドの活躍を受けて人気を高めた世代で、種付け頭数251、産駒数194とともに最大を記録した。ヘミングウェイのシンザン記念G3・2着、ミヤジタイガの弥生賞G2・2着など、3歳を迎えて上昇を示してはいるが、オープン勝ちは今のところトーセンソレイユのエルフィンSのみ。そろそろ一発があっていいころだ。トーセンソレイユはディープインパクトの半妹。父がサンデーサイレンスからネオユニヴァースに替わり、より欧州血脈が増える。特にクリスの血が入ることで、手応えがなくなりかけたところから、もうひと伸びが利く渋太さにつながるだろう。ディープインパクトの母としてあまりにも有名なウインドインハーヘアIREに触れておくと、現役時は3歳の英オークスG1で名牝バランシーンの2着。その後4歳春にアラジUSAを種付けされ、受胎したまま5、6、7、8月で5戦し、8月のドイツではアラルポカルG1に勝った。そのときお腹にいた初仔グリントインハーアイUSAは未勝利に終わったが、産駒に英G2勝ちのジェレミーが出ている。直仔ディープインパクトから孫のリルダヴァルまで多くの活躍馬が出たことにより、短期間で大きく勢力を広げた。過去、桜花賞ではオグリキャップの半妹オグリローマン、ダンスパートナーやダンスインザダークの全妹ダンスインザムード、ダイワメジャーの半妹ダイワスカーレットなど、分かりやすい良血が好成績を挙げる例が少なくない。混戦のときほど、シンプルな考え方が良い。


出走馬の父の世代別種牡馬成績(2010年生まれ)
種牡馬生年
種付
頭数
生産
頭数
血統
登録
頭数
出走
頭数
(中央)
勝馬
頭数
(中央)
入着
頭数
(中央)
2歳勝
馬頭数
(中央)
重賞勝
馬頭数
(中央)
収得賞金
(千円)
AEI
アドマイヤジャパン200231288378295950134,7690.70
ウォーエンブレムUSA1999669444335111071244,7481.57
クロフネUSA19988212137135892512153460,8210.78
ケイムホームUSA1999596716942145111182,0590.65
スズカマンボ20013715450315541139,7270.68
ステイゴールド199481289695841622120286,7930.51
ダイワメジャー200121811311281023426231639,8760.95
ディープインパクト200231711181171015024342861,8641.29
ネオユニヴァース200052511941911373335190506,7830.56
ハーツクライ200131449490702716172433,5710.93
ブラックタキシード199682213134111048,5491.83
ロサード199666332101161,0154.60
Hard Spun ※20042964915151
Tiz Wonderful ※200419530771
(データはJBISによる4月2日現在、AEIは平均アーニングインデックス、※は2012年末のデータ=米ブラッドホース種牡馬録による)

 クロフネサプライズはカレンチャンと同じクロフネUSA×トニービンIREの配合。クロフネUSAもこの世代はディープインパクトを上回る産駒があり、種付け頭数でいうとカレンチャンが出た2007年生まれに次ぐ。3代母の父ノーザンテーストCANは、このところ自身と同じくカナダのE.P.テイラーブランドのノーザンダンサー系との協力によって成功しているケースが少なくなく、父系曽祖父デピュティミニスターとの組み合わせが単なるノーザンダンサーの近交以上の効果をもたらす可能性がある。祖母の全弟ダンディコマンドは重賞勝ちこそ北九州記念のみだが、牡馬第一冠が1600mなら何とかなったかもしれないスピードを持っていた。4代母の産駒にサクラサニーオーがいて、クラシックはあと一歩のファミリーではあるが、サクラサニーオーの半妹の孫にトランセンドが出る。牝系を更に遡ると、5代母がケンタッキーダービー馬スワップスの全妹で、6代母の半弟がケンタッキーダービー馬アイアンリージ。パワフルなアメリカ牝系に多様なハイペリオン血脈を重ねてきたこともあって、前哨戦よりきついペースでも我慢は利くのではないだろうか。

 ジーニマジックはトーセンソレイユと同じ牝系。華やかさでは見劣りが否めない分枝ながら、ウインドインハーヘアIRE系を別にしても、NHKマイルCのウインクリューガーがいたり、マーメイドSのソリッドプラチナムがいたり、さすがは英女王陛下の英1000ギニー馬ハイクレアの末裔というべき格は備えている。初年度産駒からカレンブラックヒルを出した父ダイワメジャーは、この世代からもアーリントンCG3のコパノリチャードを出しており、特に1600mには実績がある。母の父はディープインパクトやタイムパラドックスの母の父として数は少ないながら大きな成功を収めた。祖母の父が欧州固有の古風なマイラーであり、ハイペリオン血脈が濃い点も粘り強さにつながる可能性がある。

 メイショウマンボは7代母がダイアンケーUSA。その子孫には菊花賞馬ダイコーター、大阪杯のハシクランツ、鳴尾記念のハシローディー、北九州記念のウラカワチェリーなど多くの活躍馬が出た。この古い名門から重賞に勝ってクラシックに挑むのは4代母の曾孫で2008年のフィリーズレビューに勝ったマイネレーツェル以来となる。土台は古いが、そこに重ねられた血脈は最先端といえるほど現代的で、名血ジェイドロバリーUSA、王者キングマンボを経由してのミスタープロスペクター4×4に加え、ロベルトもサンデーサイレンスUSAも揃っている。父にとってはこれが最初の重賞勝ち馬だが、一気にクラシックまで制して、前を行く種牡馬としての同期ディープインパクトやハーツクライとの距離を詰めるチャンス。

 クラウンロゼは同期わずか3頭のロサード産駒。その後2010年から昨年までの3年間、ロサードは種付けをしていなかったところへこの孝行娘が出現した。ヒシアケボノUSAの娘も繁殖登録があったのはこの母を含め3頭のみ。奇跡が重なっての成功ともいえる。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2013.4.8
©Keiba Book