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ジャパンCG1勝ち馬シングスピールIREと仏オークス馬カーリングFRとの間に生まれたシングスピールIREは、クラシックには出られなかったものの、3歳で挑んだ宝塚記念で3着となり、翌年はマイラーズCレコード勝ちのあと安田記念で3着。フランス遠征を敢行すると8月のジャックルマロワ賞G1こそ10着に終わったが、9月のムーランドロンシャン賞G1ではネブラスカトルネードから1/2馬身差の2着と健闘した。帰国後、逃げた天皇賞(秋)での大敗を挟んで再び遠征し、香港マイルG1で3着となった。その後はマイラーズCG2と中山記念G2に勝つが、生涯成績を見直すと、同世代との戦い、日本での競馬はどうも窮屈だった節がある。このような力任せの競馬で実績を残した者は、種牡馬としてフィジカルな強さが伝わって成功する場合が少なくないので、初年度は95頭に種付けされてなかなかの人気を博したが、初年度産駒のJRAでの勝ち上がりはわずか3頭だったため、急速に人気を落として昨年は30頭に種付けしたのみだった。そんなところに現れたのが2年目の産駒ロゴタイプと◎ゴットフリート。いずれもサンデーサイレンスUSA牝馬との配合で、朝日杯FSG1に勝ったロゴタイプは3歳を迎えるとスプリングSG2、皐月賞G1を快勝して世代の頂点に駆け上った。このパターンの配合はこれまでの2世代、JRAで6頭がデビューしていて4頭が勝ち上がり、ロゴタイプとゴットフリートを含めた3頭の牡馬は全部勝ち上がっていて、例は少ないものの高確率で上級馬に育っている。シングスピールIREの強みは、その母が名牝グローリアスソングという点。加米で34戦17勝、スピンスターSG1など4つのG1に勝ち、カナダの年度代表馬、米国の最優秀古牝馬に選ばれたグローリアスソングはヘイロー×バラードの配合。バラードもまたグローリアスソングの全弟にデヴィルズバッグ、同じくセイントバラードなどを産んだ名牝だけに、この一族は信頼性の高い名血といえるだろう。サンデーサイレンスUSAはヘイローの牡馬としての代表産駒だから、両者の配合は、牝馬と牡馬のベストを通じてのヘイローの近交となる。この組み合わせはこのレースをレコード勝ちしたダノンシャンティ(祖母がグローリアスソングで父がフジキセキ)にも通じるもの。また、シングスピールIRE産駒で安田記念G1に勝ったアサクサデンエンGBはサンデーサイレンスUSAこそ持たないものの、母の父マキアヴェリアン経由でヘイローが入って同馬の3×4となっており、この近交にはサドラーズウェルズの重厚な力を日本競馬にフィットさせる働きもあると考えられる。ロゴタイプとゴットフリートの違いは血統表の下1/4となるわけだが、ロゴタイプはローズSに勝った活躍馬スターバレリーナであるのに対し、こちらは条件級の2勝馬。ただし、牝系のレベルははっきりと上だ。4代母セックスアピールは1970年代の2歳G1勝ち馬トライマイベストUSA、80年代の名馬エルグランセニョール、90年代はスプリンターのバハミアンパイラットが出現し、2000年代に入るとブリーダーズCマイルG1に勝ったフランスのドームドライヴァー、サンデーサイレンスUSA牝馬フサイチパンドラなどが活躍した。下表は近親を除くとG1勝ち馬の系統だけに絞ったもので、G2、G3クラスまで含めるとこのページに収まり切らない。もう1代遡って5代母ベストインショウの子孫にもザールからカジノドライヴUSAまで、これまた多くの活躍馬が出ている。祖母の配合上の特徴はバックパサー3×3をはじめ名牝ラトロワンヌ血脈が強い点で、これはサンデーサイレンスUSAともローエングリンとも呼応して、爆発力や大舞台での底力につながる。 |
| 欧米日で大活躍するベストインショウ〜セックスアピール系 |
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SEX APPEAL セックスアピール(1970年生、栗、父Buckpasser)米国産、不出走 トライマイベストUSA TRY MY BEST(1975、牡、鹿、Northern Dancer)愛英4勝、 | デューハーストS英G1 SOLAR(1976、牝、栗、Halo)愛3勝、レイルウェイS愛G3、パークS愛G3 | Shining Through(1989牝栗Deputy Minister(CAN)) | BAHAMIAN PIRATE バハミアンパイラット(1995、セン、栗、ハウスバス | ターUSA)愛英仏国12勝、ナンソープS英G1 EL GRAN SENOR エルグランセニョール(1981、牡、鹿、Northern Dancer)愛英 | 7勝、英2000ギニーG1、愛ダービーG1、デューハーストS英G1 Bella Senora(1984、牝、鹿、Northern Dancer)愛、出走 | Napoli(1991、牝、鹿、バイアモンUSA) | DOMEDRIVER ドームドライヴァー(1998、牡、黒鹿、Indian Ridge)仏伊米英 | 6勝、ブリーダーズCマイル米G1 Russian Ballet(1988、牝、栗、Nijinsky)愛、入着 | マチカネササメユキUSA(1993、牝、栗、Woodman)2勝 | | マチカネホシシロキ(2000、牝、栗、サッカーボーイ)出走、入着 | | | インサイドザパーク(2010、牡、栗、タイムパラドックス)南関東4勝、現役、平和賞 | | | (船橋)、鎌倉記念(川崎)、京浜杯3着(大井)、羽田杯3着(大井) | | マチカネエンジイロ(2001年生、栗毛、父サンデーサイレンスUSA)3勝 | | ゴットフリート(2010、牡、栗、ローエングリン)2勝、現役、朝日杯FSG13着、共 | | 同通信杯G32着 | Dr Johnson ドクタージョンソン(1994、牡、栗、Woodman)愛国4勝、愛ダービーG1 | 2着 ロッタレースUSA(1992、牝、栗、Nureyev(USA)) フサイチパンドラ(2003、牝、栗、サンデーサイレンスUSA)4勝、エリザベス女王杯 |
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ダイワメジャーはこのコースの安田記念G1で3度走って(8)(4)(2)着。シングスピールIRE産駒アサクサデンエンGBの跡を継ぐようにして頂点に立った。種牡馬としては初年度産駒のカレンブラックヒルが昨年のこのレースを圧勝。今年は4頭出しとより勢いを強めている。妙味があるのは○ガイヤースヴェルト。母の父フレンチデピュティUSAの直仔には、このレースの勝ち馬クロフネUSA、17番人気で勝ったピンクカメオのほか、桜花賞を12番人気で制したレジネッタもいる。クロフネUSAが勝ったときに2着となったこの父の産駒グラスエイコオウオーUSAは13番人気だった。配合面での妙味は、ノーザンテーストCAN、デピュティミニスターの父ヴァイスリージェント、祖母の父ニジンスキーとカナダの大ブリーダーE.P.テイラーの手になるノーザンダンサー直仔を3頭並べた点。スカーレットインクUSAの父クリムゾンサタンとニジンスキーの組み合わせもブリーダーズCマイルG1のロイヤルアカデミーIIUSAを思い出させる。英2000ギニーG1のマクフィ、仏2000ギニーG1のグリーンダンサーの出る名門グリーンヴァレー系で、一族には昨年の凱旋門賞馬ソレミアもいる。 ▲コパノリチャードは母の父がトニービンIRE。母の父に回ったトニービンIREは直仔ほど東京適性が目立たなくなるが、それでもアドマイヤベガやショウワモダンを出したことで面目は保っている。4代母が1979年の英オークス馬シンティレートだから、牝系にもG1級のポテンシャルは潜んでいる。 4月24日に30歳で死んだ米国の大種牡馬ストームキャット。その直系である△エーシントップも当然押さえは必要だろう。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2013.5.5
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