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今年が米三冠達成から40周年となるセクレタリアト。2歳7月のデビュー戦こそ4着に敗れたものの、そのあと8戦続けて1位でゴール(シャンペンSだけ2着降着となった)した最優秀2歳牡馬が、3歳初戦に選んだのは7FのベイショアSG3だった。40年前のちょうど今ごろ、3月17日のレース。結果は2着シャンペンチャーリーUSAを4馬身1/2ち切っての楽勝。三冠制覇への弾みをつけた。それより短い距離を走ることは生涯なかったが、圧倒的なパワーに距離の長短は関係がなかった。父系としてのセクレタリアトは今では風前の灯だが、ストームキャットの母の父としてその血は大きな広がりを見せている。ストームバード系でストームキャットだけが突出した成功を見せたのは、セクレタリアトの血を受けていればこそだろう。ブルードメアサイアーがストームキャットのロードカナロアは、自身の牝系もセクレタリアトと同じ。5代母シリアンシーがセクレタリアトの全姉で、自身も2歳時にセリマS、アスタリタSなどに勝った名牝。4代母アラダはシリアンシーにセクレタリアトのひとつ上の2歳王者リヴァリッジを配したメドウステーブルの自家生産馬で、3、4歳時にG2・2勝、祖母のサラトガデューUSAもベルデームSG1、ガゼルHG1のG1・2勝を含む8勝を挙げた。母レディブラッサムはマウンテンキャットやフォレストリー、タバスコキャットUSAといった成功種牡馬と同じくストームキャット×リボー系牝馬のパターン。米国血統の先端モードといえる配合だ。この牝系から出たニシノフラワーが桜花賞とスプリンターズSに勝ったのは1992年のことだから、約20年ぶりに現れた大物といえるだろう。父のキングカメハメハはキングマンボをより守備範囲が広く融通も利くようにリメークしたと考えればよく、母の持たないミスタープロスペクター血脈を導入することで、ロードカナロアは米国血脈全部入りとなった。3代母の父インリアリティはミスタープロスペクター血脈と結びつくことで大きな効果を上げる場合が多く、日本馬初の香港スプリント制覇も、ともすれば力ずくで単調に終わりかねない血脈を絶妙のバランスで組み合わせた成果といえる。 圧勝を続けたセクレタリアトも、ときには伏兵に足をすくわれることがあり、ケンタッキーダービーG1直前のウッドメモリアルSG1、三冠制覇後のホイットニーHG2、ウッドワードSG1とデビュー戦以外に3度負けている。あとから見れば3月から10月の8カ月で12回も走ればそれくらい負けないともたないと分かるが、絶対王者でもちょっとしたことで負けるのが競馬だという教訓は読み取らなければならない。そこで、ロードカナロアは○として、◎には連勝中のサクラゴスペルを抜擢したい。こちらはセクレタリアトの4年後に米三冠馬となったシアトルスルーと同じ牝系。シアトルスルーの系統とは6代母で分かれた大種牡馬ミスタープロスペクターの出る流れだが、祖母の父としてシアトルスルーが配合されることで名門マートルウッド系の色合いは再び濃くなっている。母の父キュアザブルーズの牝祖はセクレタリアトと同じで、セクレタリアトもシアトルスルーもボールドルーラーとプリンスキロというノーザンダンサー出現前のアメリカ2大血脈を配合上の骨格としているので、母サクラブルースは両三冠馬をまぜこぜにしようとする試みととることもできる。そこに父の母セダンフォーエバーからプリンスキロ、ナスルーラ、更にバックパサーといったシアトルスルー的なパーツを加えることで、かつてのアメリカ的理想に近づける仕掛けが施されている。そこに足りないノーザンダンサーをマルゼンスキー経由ニジンスキーから、更にサンデーサイレンスUSA血脈も取り込み、シアトルスルー的スピードを現代的かつ日本的に再生した。ロードカナロア対サクラゴスペルの争いは、実質的にはストームキャット対サンデーサイレンスUSAだろうが、その向こうにセクレタリアト対シアトルスルーを投影するのも面白いのではないかと思う。 |
| よみがえる米三冠馬の牝系 |
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●SOMETHINGROYAL サムシングロイヤル(牝 鹿 1952年生 父Princequillo)ファミリーNo.2-s SYRIAN SEA シリアンシー(牝 鹿 1965 Bold Ruler)セリマS、アスタリタS | ALADA アラダ(牝 鹿 1976 Riva Ridge)シュヴィーHG2、コティリオンHG2 | Super Luna スーパールナ(牝 鹿 1982 In Reality) | サラトガデューUSA SARATOGA DEW(牝 鹿 1989 Cormorant)ガゼルHG1、ベルデーム | SG1 | レディブラッサム(牝 鹿 1996 千歳産 Storm Cat) | ロードカナロア(牡 鹿 2008 三石産 キングカメハメハ) The Bride ザブライド(牝 黒鹿 1969 Bold Ruler) | Fabulous Fraud ファビュラスフロード(牝 鹿 1974 Le Fabuleux) | デュプリシトUSA Duplicit(牝 鹿 1985 Danzig) | ニシノフラワー(牝 黒鹿 1989 鵡川産 Majestic Light)スプリンターズS SECRETARIAT セクレタリアト(牡 栗 1970 Bold Ruler)米三冠 ●MYRTLEWOOD マートルウッド(牝 鹿 1932年生 父Blue Larkspur) ファミリーNo.13-c Crepe Myrtle クリープマートル(牝 鹿 1938 Equipoise) | Myrtle Charm マートルチャーム(牝 鹿 1946 Alsab) | Fair Charmer フェアチャーマー(牝 栗 1959 Jet Action) | My Charmer マイチャーマー(牝 鹿 1969 Poker) | SEATTLE SLEW シアトルスルー(牡 黒鹿 1974 Bold Reasoning)米三冠 Miss Dogwood ミスドッグウッド(牝 黒鹿 1939 Bull Dog) Sequence シークエンス(牝 黒鹿 1946 Count Fleet) Gold Digger ゴールドディガー(牝 鹿 1962 Nashua) MR. PROSPECTOR ミスタープロスペクター(牡 鹿毛 1970 Raise a Native)カーターH G22着 Lillian Russell リリアンラッセル(牝 栗 1977 Prince John) スループリンセスUSA Slew Princess(牝 鹿 1984 Seattle Slew) サクラブルース(牝 鹿 1996 静内産 Cure the Blues) サクラゴスペル(牡 黒鹿 2008 静内産 サクラプレジデント) |
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最近の重賞勝ち馬の血統表で目につくのが、4代目あたりでノーザンテーストCANとニジンスキー、ノーザンテーストCANとザミンストレル、ノーザンテーストCANとヴァイスリージェントなどの組み合わせができているパターン。どれもノーザンダンサー直仔で、しかもカナダの名馬産家E.P.テイラーの生産馬。きちんとデータを取ったわけではないが、以前はこれらが3代目あたりに並んでケンカをする印象があったのに、時代が下って効果を上げるようになったのかもしれない。メイショウマシュウ、コパノリチャード、ナカヤマナイト、クロフネサプライズ、マイネイサベル、インパルスヒーロー、サクラプレジール、そしてゴールドシップがいずれかの組み合わせを持っている。今回それに唯一該当するのが▲モンストール。父の母の父がノーザンテーストCAN、母の父がヴァイスリージェント系、祖母の父がニジンスキー系だからクドいといえなくもないが、祖母イソノルーブルは多彩な名牝たちが鎬を削った91年クラシック組のオークス馬。 △アイラブリリはミスタープロスペクター4×4の隙間にナスルーラを詰め込んで、その上にヌレエフを被せた。小細工なしにスピードを追求した配合。捨て身の競馬で活路が開けるかも。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2013.3.24
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