2013ダービー


ディープの深謀遠慮

 ディープインパクト産駒に重賞勝ち馬がなかなか登場しなかったこの世代も、3月を迎えてクラシック戦線が熱を帯びてくるとさすがに流れが変わってきた。その前に、この世代が生まれる前の時点、種付け時の勢力図を見ておこう。表1に示したように、この2009年はアンライバルドとロジユニヴァースによって皐月賞G1と東京優駿G1を制したネオユニヴァースが251頭の牝馬を集めた。それから4年が経過して結果が出てみると、まだこの世代の産駒に重賞勝ちのないネオユニヴァースに限らず、質の高い牝馬を数多く集めても、重賞勝ちやダービー出走に至らないケースも少なくないという点で、いかに種牡馬稼業が難しいものか分かる。ディープインパクトは3年目のこの世代が最少の種付け頭数となり、一方でロサードやオンファイアの産駒に重賞勝ち馬が出たり、ローエングリンやスズカフェニックス、スズカマンボにG1勝ち馬が出たのはそれら種付け頭数150超級の巨艦のモタつく隙をうまく突いたといえるかもしれない。


表1)2009年種付け頭数20傑+
太字は出走馬の父)
種牡馬生年種付
頭数
生産
頭数
血統
登録
ネオユニヴァース2000251194191
クロフネUSA1998212137135
シンボリクリスエスUSA1999207147146
フジキセキ1992203117115
アグネスタキオン1998198148147
マンハッタンカフェ1998196115113
ジャングルポケット1998193135130
ゴールドアリュール1999186117113
ダイワメジャー2001181131128
マイネルラヴUSA1995175120112
ディープインパクト2002171118117
デュランダル19991538683
チチカステナンゴFR19981528685
ブラックタイド20011507978
グラスワンダーUSA1995147114113
キングカメハメハ2001145114109
サウスヴィグラスUSA1996145104102
ハーツクライ20011449490
スペシャルウィーク19951427471
ホワイトマズルGB19901425656
Big Brown 米国200510478
Smart Strike 米国199210273
メイショウサムソン20031017169
ローエングリン1999714745
スズカフェニックス2002593837

 そういった流れと合わせて、ディープインパクト産駒にも前2世代の結果を踏まえてクラシックに向けてより大事に使っていくという戦略面での変化があったことが、表2の右下に向かうにつれて急にディープインパクト濃度が上がっていることから窺える。今回は奇しくもディープインパクト産駒2頭がいずれも皐月賞に出走せずにここに臨むことになった。キズナは1998年の桜花賞と秋華賞、2000年のエリザベス女王杯に勝った名牝ファレノプシスの半弟。フサイチコンコルドとアンライバルドの年の差13歳の兄弟クラシック制覇を超えて、姉との年の差は15歳もあるが、G1制覇ということなら米国のアンキャンベル産駒、1980年生まれのデザートワインと1996年生まれのメニフィーの兄弟が16歳差で達成している。母が20歳時に生まれているのは、母シルバーレーンUASが19歳の時に生まれたNHKマイルC勝ち馬ピンクカメオを超えて恐らく日本記録だが、1988年の仏ダービー馬アワーズアフターUSAは母ブラウンベリー25歳時の産駒。いずれも上には上がいるので安心していい。ストームキャット牝馬との配合は同じパターンの桜花賞馬アユサンが優駿牝馬G1で4着に敗れたばかりだが、いとこに菊花賞馬ビワハヤヒデ、三冠馬ナリタブライアンがいて、半姉もエリザベス女王杯に勝っているくらいだから大丈夫ではないだろうか。祖母パシフィックプリンセスはデラウェアオークス-米G1(ダート9F)の勝ち馬で、3代母フィジーはロイヤルアスコットのコロネーションSに勝った。そのフィジーにはドナテッロ、ハイペリオン、モスボローといった英国の古典的血脈が凝縮されており、これに似た血統構成の父の祖母バーグクレアと呼応して、ストームキャットの避けられない距離面の壁を、破れないまでも低くする可能性はあるだろう。


表2) 2010年生まれの重賞勝ち馬とその父
(レースの太字はG1/Jpn1、馬名の太字はダービー出走馬)
月日レース名距離馬名
7/14函館2歳SG31200ストークアンドレイクロフネUSA
8/26新潟2歳SG31600ザラストロホワイトマズルGB
9/1札幌2歳SG31800コディーノキングカメハメハ
9/2小倉2歳SG31200マイネルエテルネルIRETamayuz
10/6デイリー杯2歳SG21600テイエムイナズマブラックタイド
10/25エーデルワイス賞1200ハニーパイサウスヴィグラスUSA
11/8北海道2歳優駿1800アルムダプタスペシャルウィーク
11/10京王杯2歳SG21400エーシントップUSATale of the Cat
11/10ファンタジーSG31400サウンドリアーナケイムホームUSA
11/17東スポ杯2歳SG31800コディーノキングカメハメハ
11/29兵庫ジュニアC1400ケイアイレオーネHenny Hughes
12/9阪神JFG11600ローブティサージュウォーエンブレムUSA
12/16朝日杯FSG11600ロゴタイプローエングリン
12/19全日本2歳優駿1600サマリーズHard Spun
12/22ラジオNIKKEI杯2歳SG32000エピファネイアシンボリクリスエスUSA
1/6シンザン記念G31600エーシントップUSATale of the Cat
1/12フェアリーSG31600クラウンロゼロサード
1/21京成杯G32000フェイムゲームハーツクライ
2/3きさらぎ賞G31800タマモベストプレイフジキセキ
2/9クイーンCG31600ウキヨノカゼオンファイア
2/10共同通信杯G31800メイケイペガスターフジキセキ
2/23アーリントンCG31600コパノリチャードダイワメジャー
3/2チューリップ賞G31600クロフネサプライズクロフネUSA
3/3弥生賞G22000カミノタサハラディープインパクト
3/10フィリーズレビューG21400メイショウマンボスズカマンボ
3/16フラワーCG31800サクラプレジールサクラプレジデント
3/16ファルコンSG31400インパルスヒーロークロフネUSA
3/17スプリングSG21800ロゴタイプローエングリン
3/23毎日杯G31800キズナディープインパクト
4/6ニュージーランドTG21600エーシントップUSATale of the Cat
4/7桜花賞G11600アユサンディープインパクト
4/14皐月賞G12000ロゴタイプローエングリン
4/21フローラSG22000デニムアンドルビーディープインパクト
4/27青葉賞G22400ヒラボクディープディープインパクト
5/2兵庫チャンピオンシップ1870コパノリッキーゴールドアリュール
5/4京都新聞杯G22200キズナディープインパクト
5/5NHKマイルCG11600マイネルホウオウスズカフェニックス
5/19優駿牝馬G12400メイショウマンボスズカマンボ

 同じディープインパクト×ストームキャットのヒラボクディープは伯父に芝6FのミルリーフS-英G2などに勝ったアーケーディアンヒーローがいて、3代母ティーシーキトゥンの孫にはホープフルS-米G1のヘネシーやベルモントS-米G1のエディターズノートが出る。キズナに比べるとかなりアメリカ色の濃いボトムラインだが、セクレタリアトやカロといった、ナスルーラでも長距離対応可能な血脈を受けているので、前走より時計が詰まるような流れはむしろ歓迎だろう。

 この世代で種付け頭数200頭を超えた4頭のうち、シンボリクリスエスUSAとフジキセキは重賞勝ち馬を送りダービーにも出走してきたのだから面目は保てたことになる。エピファネイアは母シーザリオがオークス馬。夏には米国ハリウッドパークに遠征してアメリカンオークスG1を快勝、日本調教馬として初めての北米G1制覇を果たした名牝だ。芝の米G3勝ちがある祖母キロフプリミエールGBはサドラーズウェルズ×ハビタットのニックス配合。ターントゥ〜ヘイルトゥリーズンのインブリードをうまく継続することでシンボリクリスエスUSAの血を生かした。

 フジキセキ産駒のメイケイペガスターはブライアンズタイムUSA牝馬にサンデーサイレンスUSA系種牡馬の配合で、このパターンからはダート王エスポワールシチーから春の天皇賞馬ビートブラックまでさまざまなタイプの大物が時折現れる。この父に2400mは長く、ドリームパスポートのダービー3着、ジャパンC2着は最大の健闘例だが、祖母の父に潜むミスタープロスペクター血脈には、フジキセキから規格外の力を引き出す可能性が秘められている。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2013.5.26
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