2012宝塚記念


一気に頂をめざすディープインパクト

 ディープブリランテが挑む7月21日のキングジョージVI世&クイーンエリザベスSG1は4歳以上牡馬が60.5キロを背負うのに対し、3歳牡馬は55キロ。5.5キロのアローワンスをもらって出走できる。これは3歳馬が有利というものでもなく、長年蓄積された結果とそのフィードバックを繰り返して出来上がり、何だかんだいっても妥当な数値。恐らく世界一細かく半月毎・距離200m毎のエージアローワンスが設定されているフランスでも、7月下旬の2400mでは5.5キロ差がある。宝塚記念G1では3歳と4歳以上の差は5キロ。クラシックで57キロを背負っていたものが53キロで出られて古馬とは5キロ差があるのだから、一見恵まれているようには見えるが、しかし、キングジョージより1カ月前に行われてそれより0.5キロ少ないアローワンスというのはちょっと損。フランスの6月下旬2200mなら6キロだから、かなりの損といえるだろう。そんなわけで、古馬から5キロ減、牝馬で更に2キロ減の51キロで出走したダービー馬ウオッカは、1番人気に支持されたが8着に敗退した。例が少ないながら、宝塚記念の歴史は3歳馬の苦闘の歴史でもあるのだ。そのようにやや不利な負担重量で戦っている(1996年以前は4キロ差とか3キロ差でもっと不利だった)3歳馬の敗退の歴史をにまとめた。1990年代以降を見ると、しかし、惨敗が頻発する原因は負担重量ではないのではないかという疑問が浮かんでくる。同じ4着でもヒシナタリーUSAを好走、ネオユニヴァースを凡走とすると、単純な事実が明らかになる。ローエングリンは駒草賞を勝って、ヒシナタリーUSAは白百合S7着からここに臨んでいた。1991年以降、凡走した馬は全部ダービーに出走したあとだった。出走権を得るため長期間にわたって重賞を戦い、生涯一度のダービーでピークに仕上げられ、更にそこから気温も湿度も上がる一方、これではくたくたになって当たり前だろう。


苦戦が続く3歳馬
頭数馬名斤量人気
200718ウオッカ5181
アサクサキングス531511
200317ネオユニヴァース5342
サイレントディール53109
200212ローエングリン5333
200112ダービーレグノ531112
199912オースミブライト5363
199613ヒシナタリーUSA52410
199414イイデライナー531214
199110イイデセゾン5377
イイデサターン53910
1968より1986まで4歳(旧5歳)以上
19678タフネス5447
19668シバハヤ5343
カツラオール5377
19656ハツライオー5445
19647ヤマニンルビー5267
196310コウライオー5333
アイボリー5169
テイオー53710
AAヒメカップ5295
ケニイライト54108
19627モトイチ5357
19614リュウライト5344
19609タイゴンオー5349
マサチカラ5366
ヘリオス5385

 この春は4つのクラシックのうち3つをディープインパクト産駒が制し、フランスでもビューティパーラーがプールデッセデプーリッシュG1(仏1000ギニー)に勝ち、ディアヌ賞G1(仏オークス)で惜しい2着となった。初年度に比べると、2年目で明らかに質の向上が見られる。クラシック3/4スイープはサンデーサイレンスUSAが初年度でやってのけたが、この春の快挙はその後継者にふさわしいもの。ただ、宗教家でも独裁者でも、偉大な先代を継ぐ者は、カリスマとして何らかの奇跡を示す必要がある。ディープインパクトの場合、リアルインパクトが3歳で安田記念G1に勝ったのがそのひとつで、事実、快挙ではあるのだが、今になって思うとややインパクト不足。3歳初の宝塚記念制覇がなれば、おお、インパクト大にして深でありましょう。そこでマウントシャスタを抜擢。ダービーG1を避け、白百合Sを楽勝してここに臨む過程は、この春それなりに目標を達成してしまったり立ち直ったのかどうかよく分からない実績馬に比べてアドバンテージとなり得る。全兄ボレアスはジャパンダートダービー2着、レパードSG3に勝ったダートの活躍馬だが、ちょうど今の暑い時期にも調子を落とさず安定した成績を残した。これも意外に重要なファクターだろう。母クロウキャニオンは兵庫ジュニアGP3着馬で、祖母クロカミIREは京王杯オータムHなど重賞2勝を挙げた芝馬。6代母マルガレーゼンの子孫には名牝トリプティクUSAや英・愛ダービーとキングジョージを圧勝した名馬ジェネラスIREがいる名門牝系。母の父デピュティミニスターは産駒に2008年のこのレースの勝ち馬エイシンデピュティを出していて、祖母の父カーリアンはディープインパクト産駒のジョワドヴィーヴルをはじめ、ブエナビスタ、レッドディザイアなどでサンデーサイレンスUSA血脈との相性の良さを示している。4代目にリファール、ヴァイスリージェント、ニジンスキーと1960年代生まれの初期ノーザンダンサー産駒が整然と並んでいることと、父も母も牝祖がステイヤー血統である点は強敵に立ち向かうに当たって心強い。


拡大するディープインパクト産駒の活躍
生年馬名母の父重賞勝ち鞍
2008リアルインパクトMeadowlake安田記念G1
マルセリーナMarju桜花賞G1
スマートロビンLyphard目黒記念G2
AquamarineAlzaoアレフランス賞G3
グルヴェイグトニービンIREマーメイドSG3
ダノンバラードUnbridledラジオNIKKEI杯2歳SG3
ドナウブルーBertolini京都牝馬SG3
トーセンラーLyciusきさらぎ賞G3
トーセンレーヴCaerleonエプソムCG3
フレールジャックNureyevラジオNIKKEI賞G3
ボレアスフレンチデピュティUSAレパードSG3
2009ディープブリランテLoup Sauvage東京優駿G1、東スポ杯2歳SG3
ジェンティルドンナBertolini桜花賞G1、優駿牝馬G1、シンザ
ン記念G3
Beauty ParlourGiant's CausewayプールデッセデプーリッシュG1
グロット賞G3
ジョワドヴィーヴルCaerleon阪神ジュベナイルフィリーズG1
トーセンホマレボシノーザンテーストCAN京都新聞杯G2
アダムスピークシングスピールIREラジオNIKKEI杯2歳SG3
ヴィルシーナMachiavellianクイーンCG3
ヒストリカルノーザンテーストCAN毎日杯G3
ベストディールMarchand de Sable京成杯G3
ワールドエースAcatenangoきさらぎ賞G3

 相手には上昇の余地の大きそうな4歳G1未勝利組を取る。ウインバリアシオンは父ハーツクライが急成長を見せた4歳を迎えて同様の上昇を見せる可能性がある。ナカヤマナイトは同じ父で同期のオルフェーヴルが急上昇と急降下をしている間に、ゆっくりと高度を上げつつある。ステイゴールド産駒の成長過程の多様性と“サッカーボーイ血脈”の宝塚記念との相性の良さを考えると、ここで飛躍する可能性大。急成長を見せるヒットザターゲットは母の父タマモクロスが24年前の勝ち馬。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2012.6.24
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