2012桜花賞


ダイワメジャーの反撃

 現3歳世代だけで産駒から8頭の重賞勝ち馬を送り出しているせいで、クラシックがディープインパクト一色に塗りつぶされている感がある。それでも、今回の出走頭数でいうと18分の4。量でいうと圧倒的でもないのが意外な事実。しかも、チューリップ賞の2頭が負けて、これまで成功例の少ないステップを踏んだ2頭が勝ってここに臨むという微妙な状況でもある。昨年の2歳リーディング争いでは、ディープインパクトとダイワメジャーが最後まで接戦を演じ、終盤にジョワドヴィーヴルの阪神ジュベナイルフィリーズG1、アダムスピークのラジオNIKKEI杯2歳SG3と重賞勝ちを積み上げたディープインパクトが差し切った。JBIS発表のサラ総合(中央+地方)ランキングによれば賞金では4億8639.4万円対4億6751.8万円。もし、最後にアダムスピークが2着に敗れていればディープインパクトはハナ差届かなかったことになる。このようなダイワメジャーの健闘は阪神芝1600mに絞るとより明瞭になる。下表に示した通り、出走数、勝ち鞍、勝率などの面ではダイワメジャーがディープインパクトを抑えており、一方でジョワドヴィーヴルの阪神JFG1勝ちに見るように、ここ一番でのディープインパクトの勝負強さも分かる。まさに阪神JFG1以上のここ一番となる今回、種牡馬としても昨年のマルセリーナで実績を残しているだけにディープインパクト優勢なのは動かしがたいところだが、ダイワメジャーも半妹のダイワスカーレットがウオッカを破っているように、潜在的な適性は高い舞台。数の上でも劣勢だが、そうそう負けているわけにもいくまい。


新リーダー種牡馬の阪神芝1600m成績比較(2009年生産駒)
ディープインパクトダイワメジャー
日付レース着順人気頭数馬場馬名日付レース着順人気頭数馬場馬名
3/24未勝利2118マーティンボロ3/24未勝利1218エアジェルブロワ
3/4新馬1116エロイカ3/4新馬8616メイショウタマカゼ
3/4新馬5316マーティンボロ3/3チューリップ賞G32314エピセアローム
3/4新馬6516マイネルハートレー3/3チューリップ賞G3141214ショウナンマオ
3/3チューリップ賞G33114ジョワドヴィーヴル2/25アーリントンCG32313オリービン
3/3チューリップ賞G34214ジェンティルドンナ2/25アーリントンCG38813ダイワマッジョーレ
3/3チューリップ賞G39814ヒーラ2/25アーリントンCG39113ダローネガ
3/3チューリップ賞G3131114イントゥザストーム12/25500万下1113オリービン
12/24摂津特別 10005514ヴィジャイ12/24新馬1513ヤマニンファラオ
12/24新馬2113トーセンホマレボシ12/18新馬41017ガラアフェアー
12/24新馬3213グランプリブラッド12/17未勝利31018デイジーバローズ
12/24新馬7613クレバーインパクト12/17未勝利111318ヒシアルコル
12/24未勝利5218スズカチャンプ12/17未勝利131218ガーネットカラー
12/18新馬8217ヤマトサクラコ12/11阪神JFG18218エピセアローム
12/18新馬11817ハッピーユーゲント12/11阪神JFG110918トーセンベニザクラ
12/11阪神JFG11418ジョワドヴィーヴル12/10新馬13913ファンデルワールス
12/11阪神JFG151018アンチュラス12/10未勝利3218ジュディソング
12/10未勝利1118ジェンティルドンナ12/10未勝利111318スリーヴェローチェ
9/25新馬9313ステインアライブ12/4千両賞 5002111オリービン
9/25未勝利7315ヴァンヘルシング9/25新馬8713オレンジブルーム
9/11新馬3211サクセスセレーネ9/25未勝利9515ダンツフォワード
9/11新馬5311ヴァンヘルシング9/11新馬2111オリービン
 勝率連対率3着内率9/10未勝利151617カネトシダイスター
ディープインパクト0.1360.2270.3646/19新馬1212ダローネガ
ダイワメジャー0.1600.3600.4406/19新馬2312エピセアローム

 エピセアロームはダイワメジャー産駒として最初の重賞勝ち馬となった。同じサンデーサイレンスUSA系の父を持つ兄たちよりも早くからピリッとした素質を示しているあたりはダイワメジャーの長所を受け継いだものだろう。3代母ローラローラFRの産駒には天皇賞(春)、有馬記念に勝ったサクラローレルがいて、4代母ボールドレディの孫にダート王タイムパラドックスがいる。ときどき大物を出す良牝系で、母の配合はカロ×ファビュラスダンサーによるアメリカ風フレンチといった趣き。実際にファビュラスダンサーはグレイソヴリン血脈との組み合わせによりフランスで大きな成功を収めた。コジーンはカロ系はもとよりグレイソヴリン系最後にして最大のアクティヴな基点となる種牡馬で、わが国に限っても安田記念のアドマイヤコジーン、優駿牝馬のローブデコルテUSAを出して多才なところを見せている。それでも、自身ブリーダーズCマイルG1を勝ったように、1600m戦での瞬発力こそが最大の武器。そこに父としてダイワメジャーを重ねると、サンデーサイレンスUSAとグレイソヴリンの瞬発力を2本のノーザンダンサーで支えるバランスの良いパターンとなる。ちなみに、血統表中にサクラの文字があるのはこの馬だけ。

 ジョワドヴィーヴルはどうしても半姉ブエナビスタとの比較、ディープインパクトとスペシャルウィークとの比較になることが避けられない。乱暴に単純化していえば、リファールの才気、瞬発力が姉との差として出てくることになる。ただ、ディープインパクトの牝系から期待できるステイヤーとしての資質が、これからシーズンが深まるにつれて表面に出てくることもあるだろう。初年度産駒からあまり窺えなかったそういった面は、2世代目の一部に兆しとして既に見られる。

 パララサルーの母タンタスエルテCHIはG1アルトゥーロリヨンペナ賞(芝1600m)に勝った2005年のチリ最優秀2歳牝馬。後年米国に渡ってステークス勝ちや重賞入着もある。母の父ステューカはアメリカから、サドラーズウェルズ産駒の祖母の父ステージクラフトは英国から渡った種牡馬だが、牝系は19世紀末からアルゼンチンで育った。ブエナビスタやエイシンフラッシュといったドイツ血統の成功の次を見るなら、その種を南米に求めるのもひとつの手。サンデーサイレンスUSA自身も祖母の父モンパルナスがアルゼンチン産馬であり、今や貴重な古いアルゼンチン血脈とは呼応するものがあるだろう。

 ジャングルポケット産駒はトールポピーが阪神JFG1に勝っているので、このコースが悪いわけはない。プレノタートは母の父も底力のあるダンスインザダーク。カレンチャンがつないだ昨秋からのトニービンIREG1連鎖を継続可能。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2012.4.8
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