2012高松宮記念


星に願いを桜に望みを

 まったくの新設コースといっていい“新”中京競馬場。2年ぶりのこのレースも過去の例が参考にならないのだろうか。新コースでは既に6日間の開催が消化されているので、おぼろげながら傾向が明らかになりつつあり、とりあえずはそれにすがるしかない。そこで、新中京芝1200mの種牡馬成績を勝ち鞍順に並べてみた(下表)。全6レースしかないのだから、何の参考にもならないだろうと踏んでいたのだが、あにはからんや、あっさりサクラバクシンオーがトップに立つとは。統計とも呼べないわずかなレース数を消化した段階で、サクラバクシンオーに限らず、表の右側の旧コースのデータに似た形をとりつつあるといえばいえるのではないだろうか。個々の成績を見ると、新コースのサクラバクシンオーの10の着外はほとんど惨敗といえるものだが、そのような負けるときの淡白さもやはりサクラバクシンオーらしさのひとつ。コースが一変してもサクラバクシンオーの特徴は良くも悪しくも保たれていると考えられる。
 昨年4月30日に22歳で世を去ったサクラバクシンオーはスプリンターズS連覇など3〜5歳時21戦11勝の成績を残し、1994年の最優秀スプリンターとなった。1995年から種牡馬となり、これまで1229頭が出走し、850頭が勝ち馬となり、勝ち鞍の合計は2,683(うちJRA1,148)に上った(いずれも3月20日現在)。JRA重賞は18頭で31勝を挙げている。2002年の高松宮記念勝ち馬ショウナンカンプやシーイズトウショウ、カノヤザクラといったスプリンターのほか、グランプリボスは朝日杯FSG1、NHKマイルCG1と1600mでG1勝ち馬となった。晩年におけるグランプリボスの出現は「短距離の」大種牡馬が壁を越える可能性を示唆しているのかもしれない。4頭出しのサクラバクシンオー産駒。アグネスウイッシュは3代母が1979年のオークス馬アグネスレディー。その産駒には桜花賞馬アグネスフローラ、孫にはダービー馬アグネスフライト、皐月賞馬アグネスタキオン、チューリップ賞のアグネスパレードがいる。この分枝は母が4戦未勝利、祖母も3戦して好走は新馬戦の2着1回のみという地味な分枝。ただ、ダンスインザダーク×イルドブルボンUSAという重厚なステイヤー配合と、ニジンスキー3×3の近親交配は、起爆剤さえあれば大変な力につながる可能性がある。テスコボーイGBから日本に根付き、軽快さや瞬発力を伝えるこの父なら、母の血統中に眠る力を覚醒させ得るのではないだろうか。ノーザンテーストCANとニジンスキーというカナダのノーザンダンサー系同士の組み合わせと、父の祖母クリアアンバーUSAやニジンスキーの持つブルリーの対応も面白いが、サクラユタカオーの3代母スターロッチ、アグネスレディーの祖母ヘザーランズGBというともに1957年生まれの名牝の協力も興味深い。


新旧中京芝1200mの勝ち鞍順種牡馬ランキング  (上位および出走馬の父=太字=を抜粋)
《新コース》 2012年3月3日〜3月18日《旧コース》 2000年3月28日〜2010年3月28日
順位種牡馬名1着2着3着着外勝率連対率3着率順位種牡馬名1着2着3着着外勝率連対率3着率
1サクラバクシンオー210100.1530.2300.2301サクラバクシンオー6751414470.1100.1940.262
2アグネスワールドUSA10001.0001.0001.0002サンデーサイレンスUSA2827312490.0830.1640.256
2アドマイヤムーン10001.0001.0001.0003タイキシャトルUSA2618152300.0890.1520.204
2ウォーエンブレムUSA10001.0001.0001.0004フジキセキ1617162040.0630.1300.193
5キングヘイロー10020.3330.3330.3335アドマイヤベガ1195610.1270.2320.290
6ダイワメジャー02030.0000.4000.4006グラスワンダーUSA1188830.1000.1720.245
7アポインテッドデイUSA01000.0001.0001.0007ブライアンズタイムUSA101014950.0770.1550.263
7マンハッタンカフェ01000.0001.0001.0008ウォーニングGB1086850.0910.1650.220
9タイキシャトルUSA01010.0000.5000.5009キングヘイロー9115930.0760.1690.211
10スクワートルスクワートUSA00100.0000.0001.00010ダンスインザダーク99161470.0490.0990.187
10ヤマニンセラフィム00100.0000.0001.00011ラストタイクーンIRE81261050.0610.1520.198
12ダンスインザダーク00110.0000.0000.50012バブルガムフェロー895760.0810.1730.224
13クロフネUSA00120.0000.0000.33318フレンチデピュティUSA656610.0760.1410.217
14キングカメハメハ00140.0000.0000.20020マンハッタンカフェ623530.0930.1250.171
14ジャングルポケット00140.0000.0000.20023クロフネUSA567570.0660.1460.240
16サクラプレジデント00010.0000.0000.00043メイショウオウドウ422370.0880.1330.177
16シンボリクリスエスUSA00010.0000.0000.00047アフリートCAN3981150.0220.0880.148
16ハーツクライ00010.0000.0000.00067アドマイヤコジーン301460.0600.0600.080
16フジキセキ00010.0000.0000.000128キングカメハメハ113190.0410.0830.208
16メイショウオウドウ00010.0000.0000.000136サクラプレジデント11170.1000.2000.300
55アドマイヤコジーン00020.0000.0000.000227アグネスデジタルUSA013250.0000.0340.137
55フレンチデピュティUSA00020.0000.0000.000284シンボリクリスエスUSA010220.0000.0430.043

 同じサクラバクシンオー産駒でも日本的なアグネスウイッシュに比べると、ダッシャーゴーゴーの母はアメリカの名種牡馬ばかりを配合されてきた現代的な血統構成。母の父はサイレンススズカやガリレオ、シーザスターズなど多くの名馬を娘の産駒として送り出した。マキアヴェリアンなど有能なブルードメアサイアーも多く出すミスタープロスペクター系でも随一の存在。祖母の父はリボー系の底力をよく伝えて大舞台での一発長打の要因となり得る血脈であり、3代母はヘイロー×ノーザンダンサーという配合。同厩の後発組に押され気味だが、サクラバクシンオー産駒の5歳ならまだ伸びる。逆襲も十分。

 ロードカナロアはストームキャット牝馬にキングマンボ直系種牡馬という世界でも最先端の様式。ストームキャットはファレノプシス、メイショウボーラーなど母の父としての成功の方が、父系としての日本への浸透よりずっと早かった。祖母サラトガデューUSAはガゼルH、ベルデームSと2つのG1に勝って1992年の米最優秀3歳牝馬に選ばれた名牝で、その父コーモラント、祖父ヒズマジェスティを経てリボーの血を受けている。3代母の父インリアリティはミスタープロスペクターと組み合わされることでクラシック級の力につながる。

 カレンチャンは驀進する勢いが止まったあとのクロフネUSA産駒ということで楽観できない部分もあるが、コース形態が東京に近づいたことで、母の父トニービンIREの後押しがより大きくなりそう。同じ牝系のレッツゴーターキンは秋の天皇賞を11番人気で勝った。

 大穴ならタマモナイスプレイ。フジキセキ産駒はファイングレイン、キンシャサノキセキAUSの2頭で、この4年間に3勝。母は、旧中京の中スポ杯4歳Sを鮮やかに追い込んだサッカーボーイのイトコ。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2012.3.24
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