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デュランダルとハットトリック、ダイワメジャーの3頭によって、このレースは2003年から2007年までサンデーサイレンスUSA産駒が5連覇。そのうち3回が1、2着独占で、デュランダルとダイワメジャーはいずれも母の父がノーザンテーストCANだった。ワンパターンの時代が終わっても、2008年にはアドマイヤベガ産駒のブルーメンブラットが勝ち、他の大レースと同じようにサンデーサイレンスUSAの孫の支配に移行するかに思われたが、その後、昨年までの3年の傾向を見る限り、どうも様子が違うようだ。一昨年こそダンスインザダーク産駒のダノンヨーヨーが2着、ネオユニヴァース産駒ゴールスキーが3着とそれなりの存在感を示したが、昨年はサンデーサイレンスUSAの孫が1、2番人気の支持を受けながらも3着までを非サンデーサイレンスUSA系に占められる結果となった。これに反発してサンデーサイレンスUSA系が押し返すのか、あるいは当分攻略に手を焼くのか、今年である程度の流れが見えてくるだろう。そうはいっても、サンデーサイレンスUSA血脈を1本も持たないのは18頭中6頭しかいない。そのあたりは極端に走らず、慎重な見極めが必要になる。 もうひとつの大きなファクターがシルポートの存在。下表にはシルポートが徹底逃げ戦法を確立した5歳以降の成績を取り上げ、勝ち馬の血統を示したが、こう並べると普通よりもサンデーサイレンスUSA系(太字)比率が低く、しかも1番人気馬の勝利が少ない。サンデーサイレンスUSAの孫で1番人気に応えたのはブエナビスタ、ダークシャドウ、カレンブラックヒルの3頭のみ。相当な実力がないとはね返せないサンデーサイレンスUSAキラー兼1番人気キラーといえる。また、シルポートの出走したレースで2度勝っているいるのはストロングリターンだけ。これとてほかにシルポートが出た3戦では(6)(2)(7)着なので、特にシルポートの作る流れに合っているともいえないだろう。ただでさえ混沌としている近年のマイル部門に、シルポートのような混沌の使者が加わると、穴党でもお手上げとなりかねないが、下表の血統を眺めてひとついえることは、切れ味よりも馬力に比重を置いた血統が多いように見えること。サンデーサイレンスUSA的な瞬発力よりも、ノーザンダンサーやミスタープロスペクターのパワー、ロベルトの底力が好結果を呼んでいる。 それを踏まえて、マイル部門の混沌にまだ染まっていないアイムユアーズを◎に。母の父エルコンドルパサーUSAの母サドラーズギャルIREは父ファルブラヴIREと共通点の多い血統で、フェアリーキングとサドラーズウェルズが全兄弟、そこにシアトルスルーが加わる構成も同じで、ファルブラヴIRE≒サドラーズギャルIREの1×3ともいえる異形の近親交配だが、エルコンドルパサーUSAがそうだったように、サドラーズウェルズの一族は強い近親交配で異常な能力を発揮することがある。たとえば1992年のナショナルSにG1勝ったファーザランドは父サドラーズウェルズの祖母スペシャルと、自身の母リサデルが全姉妹で、結果スペシャル=リサデルの3×1という強烈な配合だった。祖母セシルカットは半姉カーリーエンジェルや半妹エアグヴルーヴがそれぞれの系統を発展させているのに比べるとやや出遅れている現状だが、名牝ダイナカールの血はここでも遠からず開花するだろう。祖母の父サンデーサイレンスUSA、3代母の父ノーザンテーストCANと、かつてこのレースを席巻した血脈が裏方に引いた位置にいるのもちょうどいいのではないだろうか。 |
| シルポートが逃げたときの勝ち馬とその血統 (5歳時以降) | |||||||
| 月日 | レース | 着順 | 距離 | 勝ち馬 | 人気 | 父 | 母の父 |
| 10.03.07 | 武庫川S1600 | 5 | 1600 | マイネルクラリティ | 7 | グラスワンダーUSA | タマモクロス |
| 03.20 | 韓国馬事会杯1600 | 7 | 1600 | キョウエイストーム | 9 | スウェプトオーヴァーボードUSA | サンデーサイレンスUSA |
| 04.04 | 難波S1600 | 1 | 1800 | 自分 | 3 | ||
| 04.17 | マイラーズCG2 | 12 | 1600 | リーチザクラウン | 3 | スペシャルウィーク | Seattle Slew |
| 05.09 | 都大路S | 1 | 1800 | 自分 | 5 | ||
| 05.22 | メイS | 2 | 1800 | ショウワモダン | 6 | エアジハード | トニービンIRE |
| 06.13 | エプソムCG3 | 2 | 1800 | セイウンワンダー | 1 | グラスワンダーUSA | サンデーサイレンスUSA |
| 09.26 | オールカマーG2 | 9 | 2200 | シンゲン | 5 | ホワイトマズルGB | サンデーサイレンスUSA |
| 10.10 | 毎日王冠G2 | 7 | 1800 | アリゼオ | 6 | シンボリクリスエスUSA | フジキセキ |
| 10.31 | 天皇賞(秋)G1 | 12 | 2000 | ブエナビスタ | 1 | スペシャルウィーク | Caerleon |
| 12.04 | 鳴尾記念G3 | 4 | 1800 | ルーラーシップ | 2 | キングカメハメハ | トニービンIRE |
| 12.26 | ファイナルS | 1 | 1600 | 自分 | 2 | ||
| 11.01.05 | 京都金杯G3 | 1 | 1600 | 自分 | 7 | ||
| 02.06 | 東京新聞杯G3 | 6 | 1600 | スマイルジャック | 5 | タニノギムレット | サンデーサイレンスUSA |
| 03.06 | 大阪城S | 6 | 1800 | ダンツホウテイ | 5 | マンハッタンカフェ | Nureyev |
| 04.17 | マイラーズCG2 | 1 | 1600 | 自分 | 7 | ||
| 05.14 | 京王SCG2 | 2 | 1400 | ストロングリターン | 4 | シンボリクリスエスUSA | Smart Strike |
| 06.05 | 安田記念G1 | 8 | 1600 | リアルインパクト | 9 | ディープインパクト | Meadowlake |
| 10.09 | 毎日王冠G2 | 8 | 1800 | ダークシャドウ | 1 | ダンスインザダーク | Private Account |
| 10.30 | 天皇賞(秋)G1 | 16 | 2000 | トーセンジョーダン | 7 | ジャングルポケット | ノーザンテーストCAN |
| 11.20 | マイルChpG1 | 8 | 1600 | エイシンアポロンUSA | 5 | Giant's Causeway | Sadler's Wells |
| 12.17 | 阪神CG2 | 5 | 1400 | サンカルロ | 4 | シンボリクリスエスUSA | Crafty Prospector |
| 12.01.05 | 京都金杯G3 | 16 | 1600 | マイネルラクリマ | 3 | チーフベアハートCAN | サンデーサイレンスUSA |
| 02.26 | 中山記念G2 | 2 | 1800 | フェデラリスト | 3 | エンパイアメーカーUSA | サンデーサイレンスUSA |
| 04.22 | マイラーズCG2 | 1 | 1600 | 自分 | 3 | ||
| 06.03 | 安田記念G1 | 12 | 1600 | ストロングリターン | 2 | シンボリクリスエスUSA | Smart Strike |
| 10.07 | 毎日王冠G2 | 14 | 1800 | カレンブラックヒル | 1 | ダイワメジャー | Grindstone |
| 10.28 | 天皇賞(秋)G1 | 12 | 2000 | エイシンフラッシュ | 5 | King's Best | プラティニGER |
| 太字はサンデーサイレンスUSA(系) | |||||||
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○コスモセンサーはシルポートと一緒に走ったケースでは昨年(8)(4)(16)着だったのが今年は(3)(4)着。先輩との付き合い方が分かってきて、自分のやりたいこともできるようになっている。このあたり同じ厩舎のメリットかどうかはよく分からない。父キングカメハメハはエルコンドルパサーUSAと並ぶキングマンボの傑作で、ルーラーシップやロードカナロアのような堂々たる強豪も出るようになってきた。母の父リヴリアUSAはリヴァーマン直仔で、産駒にナリタタイシンやワコーチカコを出したほか、母の父としてもテイエムオーシャンやオリオンザサンクスを送って成功している。ダービー馬ディープブリランテの母の父がリヴァーマン直仔、レインボーダリアの祖母の父がリヴァーマンだった。リヴァーマン血脈は今年の静かで小さなブームになる可能性がなくもない。 ▲フィフスペトルも同じくキングマンボ×リヴァーマン直仔。こちらは母がニジンスキー3×3だからより力強い。祖母の父はロベルトだから、父系のミスタープロスペクターとのニックスともなっている。昨年はスプリンターズS6着から変わり身を見せた。今年はスプリンターズSで11着だったので、印象は随分違うが、0秒5差と0秒7差といえば、それほど大した違いでもない。 △シルポートは京都の1600mでG3、G2と勝ってきた。春の天皇賞馬イングランディーレ、菊花賞馬アサクサキングスらを送る父は、大レースにおける当代屈指の穴メーカー。2ケタ着順を3走続けたあとだけに、そろそろ一発があるかも知れない。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2012.11.18
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