2012菊花賞


模写も時には本物を超える

 1999年を最後に嵐山Sがなくなってしまったので、芝3000mの平地競走は菊花賞と阪神大賞典、万葉Sの3つだけになった。大抵の馬は一生に一度走るかどうかという特殊な条件だけに、種牡馬の序列もトップのサンデーサイレンスUSAは不動としても、その下では細かな変化がある。は菊花賞に限って過去20年を集計したもので、通常のランキングより優れた成績を示しているのがダンスインザダークとサッカーボーイ。それぞれ連対率が4割以上だから、出てくれば買える。しかし、残念ながら今回はどちらの産駒もいない。そこで、ダンスインザダークの代役として、その全弟トーセンダンスの産駒ユウキソルジャーに期待したい。ダンスインザダークは全姉にオークス馬ダンスパートナー、全妹に桜花賞馬ダンスインザムードがいる。全きょうだい3頭がクラシック馬となるくらいだから、この配合の良さは、たとえ未勝利であっても何かしら伝わっているだろうと考えるのが自然だ。2002年のセレクトセールで3億3500万円で購買されたトーセンダンスは、3歳4月の未勝利戦でデビュー。2秒9差の大差負けを生涯唯一の戦歴として引退、種牡馬となる。初年度から50頭の繁殖牝馬を集め、それが翌年57頭、そして80頭と人気のピークを迎えたときの産駒がこの3歳世代となる。サンデーサイレンスUSA直仔は、エイシンサンディ、ニューイングランドなど重賞勝ちのないものでさえ種牡馬になると重賞勝ち馬を送り出す力を秘めているが、それが最大限に発揮されたのが、記憶に新しい春の天皇賞。ビートブラックの父ミスキャストは福島記念2着が重賞での最高着順と、24戦もして競走能力的には明らかに限界を見せていたのに、サンデーサイレンスUSA×ノースフライトという良血の真価が種牡馬として発揮された。いわゆる良血度でいえばミスキャストに劣らないトーセンダンスにも、同様のことはできるのではないだろうか。母オースミエルフは中央3勝。その父オースミタイクイーンIREは名馬ジェネラスIREの半弟という看板に泣くことなく、マイラーズCとセントウルSに勝った活躍馬。父があの馬の全弟で、母の父はあの馬の半弟という配合は代用品といえばそれまでだが、経済的かつ技巧的ともいえる。祖母はニニスキの半妹。ニニスキは英セントレジャーG1で3着の後、愛セントレジャーG1とロイヤルオーク賞G1に勝っているので、1カ月半の間に英愛仏3カ国の菊花賞を走って(3)(1)(1)だったと考えれば良いステイヤー。種牡馬としても英セントレジャーG1のミンスターサンや仏ダービーG1のエルナンド、キングジョージVI世&クイーンエリザベスSG1のペトスキ、ヨーロッパ賞G1のロミタスなどを送って成功した。ロミタスの代表産駒が凱旋門賞馬デインドリームGERだから、今どきの超長距離血統としては異例の力強さを保っている。ユウキソルジャーの場合は父の祖母の父キートゥザミント、3代母の父トムロルフとリボー系の大物の血を2本受けているのも大舞台での躍進を期待させる材料となる。


菊花賞種牡馬ランキング〜過去20年
順位種牡馬名1着2着3着着外勝率連対率3着率 勝ち馬
1サンデーサイレンスUSA443420.0750.1500.207ダンスインザダーク、エアシャカール、
マンハッタンカフェ、ディープインパクト
2ダンスインザダーク32060.2720.4540.454ザッツザプレンティ、デルタブルース、
スリーロールス
3ブライアンズタイムUSA211100.1420.2140.285ナリタブライアン、マヤノトップガン
3サッカーボーイ20030.4000.4000.400ナリタトップロード、ヒシミラクル
5リアルシャダイUSA12050.1250.3750.375ライスシャワー
6バゴFR10001.0001.0001.000ビッグウィーク
6シャルードUSA10001.0001.0001.000ビワハヤヒデ
6シェリフズスターGB10001.0001.0001.000セイウンスカイ
9ホワイトマズルGB10010.5000.5000.500アサクサキングス
9クリスタルグリッターズUSA10010.5000.5000.500マチカネフクキタル
11ジャングルポケット10040.2000.2000.200オウケンブルースリ
11ステイゴールド10040.2000.2000.200オルフェーヴル
13エルコンドルパサー10050.1660.1660.166ソングオブウインド

 サッカーボーイの代役を務められるのは母がその全妹というステイゴールド。ゴールドシップはオルフェーヴル、ドリームジャーニーらと同じ母の父でもあって、国際的トップレベルのニックスにまでなったといっていい。祖母の父プルラリズムUSA、3代母の父トライバルチーフGBがそれぞれマイラーないしスプリンターという点は微妙だが、このようなパターンは東京2400mでは問題になっても、京都3000mでは意外に何ともないものだと思う。6代母梅城はハタカゼの名で昭和23年の桜花賞に勝った。8代母にあたる牝祖の星旗USAからは5代孫に昭和46年の菊花賞馬ニホンピロムーテーが出ている。

 ブライアンズタイムUSAもさすがというべき長距離実績。代表産駒であるナリタブライアン、マヤノトップガンがこのレースを制してから18年、17年が経過していて、最も若い重賞勝ち馬バーディバーディもすでに5歳だから、かつてと同じ勢いは望めない。スカイディグニティは母の父ノーザンテーストCANも大種牡馬とはいえ1971年生まれだから、1990年代の良血といえそうだが、そのぶん、出走馬の半数近くを占めるディープインパクト産駒にない渋太さを持っている可能性はある。リアルシャダイUSAと同じ牝系で、これも父からグロースターク、祖母の父がアレッジドとリボー系の大物の血を2本受けた。

 エルコンドルパサーUSAが凱旋門賞G1で2着の1999年の菊花賞はディクタスFRの孫ナリタトップロードが勝った。ナカヤマフェスタの年はバゴFR産駒ビッグウィークが勝った。いずれの年も凱旋門賞G1にちなんでフランスの父系が活躍した。今年は残念ながらフランス父系なし。ひとひねりするとエタンダールの母の父モンジューIREがエルコンドルパサーUSAの快挙を阻んだという点で、フランス馬の代表ともいえる。モンジューIREは3歳時に仏・愛ダービー、凱旋門賞、4歳時は更にタタソールズゴールドC、サンクルー大賞、キングジョージとG1勝ちを積み上げた名馬で、種牡馬としても大成功した。直仔の愛ダービー馬ハリケーンランが“キングジョージ”でハーツクライを3着に下したように、日本馬キラーの面もある。母はサドラーズウェルズ系×シャーリーハイツ系のニックスで、そう、これは凱旋門賞G1でオルフェーヴルを破ったソレミアと同じパターンでもある。

 大穴でビービージャパン。菊花賞での父アドマイヤジャパンはディープインパクトに最終的に2馬身差の完敗を喫したとはいえ、直線入り口でのハラハラ度は先週のチェリーメドゥーサに匹敵するものがあった。近親メイショウサムソンも2006年菊花賞で無念の4着。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2012.10.21
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