2012ジャパンCダート


次元はともかく流れを変えよう

 中央、地方それぞれに指定交流競走が設けられた1995年、地方競馬の大レースがJRA所属馬にも開放され、ライブリマウント、続いてホクトベガが大活躍した。1997年にはダートグレードが設定され、アブクマポーロやメイセイオペラといった大物が地方から出現するようになる。ドバイワールドカップの第1回が1996年だから、このころからダートの道が地方から世界まで一本につながるようになり、2000年にはこのレースが創設された。第2回には母国チリでG12勝、移籍した米国でもG1に連勝した名馬リドパレスCHIをはじめ5頭の参戦があった外国馬をクロフネUSAが蹴散らし、第4回には米国のフリートストリートダンサーUSAが当時無敵のアドマイヤドンを斥けた。このころが国際レースとしての華やぎの頂点であっただろう。ここ3年はご存知の通り外国からの遠征はない。ただ、JBCクラシック→JCダートG1→東京大賞典G1と続くダート王決定3本勝負としての機能と趣はそれはそれで捨てがたいし、ヨーロッパ賞G1がドイツ馬だけだったり、インターナショナルSG1が英愛馬だけだったりすることは普通なのだから、外国馬出走の有無にこだわることもない。堂々として派手な看板を掲げておけばいいのである。

 1995年以降のダート最強馬のリストとして、合同フリーハンデのレーティング首位を下表に並べてみた。初期にはある種の懐かしさをともなう雑多な血統の活躍が目立ったが、クロフネUSAを境にしてミスタープロスペクターやサンデーサイレンスUSA、ノーザンダンサーといった主流血脈が幅を利かすようになったのが分かる。そして、2002〜04年の3年がアドマイヤドンと同期のゴールドアリュールに席巻され、05〜08年はカネヒキリとヴァーミリアンというやはり同期の2頭が実質的に支配した。とはいえ、強力世代の君臨もさすがに4年間が限度で、それを打ち破ったのが当時4歳のエスポワールシチーだった。以降、昨年までの3年間、現7歳世代が頂点に立ち続けた。現状では7歳>6歳>5歳という年功序列が確立していて、若い世代は重賞ひとつに出るのも勝つのもひと苦労という状況に置かれている。しかし、それを裏返せば、世代交代の機は熟したということで、それを実行するのはずっと頭を抑えられてきたひとつかふたつ下の世代ではなく、3歳や4歳の若い世代だろう。



ダート王者の変遷 (合同フリーハンデのレーティング首位)
年度カテ
ゴリ
レーテ
ィング
馬名母の父当該年度の勝ち鞍(太字は評価対象レース)
1995M , I113ライブリマウントmグリーンマウントUSAファーザーズイメージUSA帝王賞、南部杯、フェブラリーS、ブリーダーズ
ゴールドC、平安S、ウインターS
96115ホクトベガfナグルスキーCANフィリップオブスペインGB帝王賞、川崎記念、南部杯、フェブラリーS、ダ
イオライト記念、浦和記念、エンプレス杯、群馬
記念
97116ホクトベガfナグルスキーCANフィリップオブスペインGB川崎記念
98117アブクマポーロmクリスタルグリッターズUSAペールIRE川崎記念、東京大賞典、帝王賞、ダイオライト
記念、かしわ記念、NTV杯、マイルGP、グラン
ドチャンピオン2000
99118メイセイオペラmグランドオペラUSAタクラマカンUSA帝王賞、フェブラリーS、みちのく大賞典、シア
ンモア記念、北上川大賞典
2000121ウイングアローmアサティスUSAミスターシービージャパンCダート、フェブラリーS、ブリーダー
ズゴールドC
01130クロフネUSAmフレンチデピュティUSAClassic Go GoジャパンCダート、NHKマイルC、武蔵野S、
毎日杯
02122アドマイヤドンmティンバーカントリーUSAトニービンIREJBCクラシック
03124フリートストリートダンサーUSAhSmart StrikeNijinskyジャパンCダート
04122アドマイヤドンmティンバーカントリーUSAトニービンIREJBCクラシック、帝王賞、フェブラリーS
05121カネヒキリmフジキセキDeputy MinisterジャパンCダート、ジャパンダートダービー、ダ
ービーグランプリ、ユニコーンS、端午S
121アジュディミツオーmアジュディケーティングUSAジャッジアンジェルーチUSA東京大賞典
06125カネヒキリmフジキセキDeputy MinisterフェブラリーS
07126ヴァーミリアンmエルコンドルパサーUSAサンデーサイレンスUSA東京大賞典、ジャパンCダートG1、JBCクラシ
ック、川崎記念
08124カネヒキリmフジキセキDeputy Minister東京大賞典、ジャパンCダートG1
09125エスポワールシチーmゴールドアリュールブライアンズタイムUSAジャパンCダートG1、南部杯、かしわ記念、マ
ーチSG3
10126エスポワールシチーmゴールドアリュールブライアンズタイムUSAフェブラリーSG1、かしわ記念
11129スマートファルコンmゴールドアリュールミシシッピアンUSA帝王賞、東京大賞典G1、JBCクラシック、日本
テレビ杯、ダイオライト記念

 イジゲンUSAは昨シーズンから日本軽種馬協会静内種馬場で供用され、204頭の牝馬を集めたエンパイアメーカーUSAの先行輸入(?)産駒。米国に残した産駒にはブリーダーズCレディーズクラシックG1連覇のロイヤルデルタをはじめ多数の活躍馬があり、3歳にもケンタッキーダービーG1とプリークネスSG1で逃げて2着となったボードマイスターがいる。牝系は祖母コズミックファイアが米G2・2着、その産駒に米G3・4勝のコスモノートがいて、3代母フューチャーブライトが米G3・3着という程度だが、この父との配合はミスタープロスペクター×ノーザンダンサーのオーソドックスな骨組みに、バックパサー〜ラトロワンヌやウォーレリックといった古き良きアメリカの良血が散りばめられている。4代母の孫スピードワールドUSAは1994年生まれで、2歳から3歳にかけて3連勝した当時は怪物と呼ばれた。NHKマイルC回避、安田記念3着のあと、結局勝てずに引退したが、ここでイジゲンUSAが上の世代を一掃するようなことがあれば、やはりスピードワールドUSAは怪物だったのだと思う人もいるだろう。

 ローマンレジェンドは大雑把にいうとカネヒキリ型のサンデーサイレンスUSA×デピュティミニスター。父の持つニジンスキーと祖母の父ストームバードのカナダ系ノーザンダンサーの血もパワフル。母はターンバックジアラームHG3に勝ち、パーソナルエンスンSG1で2着になるなど、米の牝馬重賞で長く善戦を続けた。4代母の孫に名牝ミエスクのいる名門。

 ハタノヴァンクールはミスタープロスペクター×ロベルトのニックスにサンデーサイレンスUSAもノーザンテーストCAN(3代母の父)も入る。叔父にはジャガーメイルがいて、一変可能なポテンシャル。

 不遇の5歳世代ダート組にあって唯一の本賞金1億円超えがミラクルレジェンド姉さん。昨年でも0秒5差だから侮れないぞ。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2012.12.2
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