2012ジャパンC


聖山から望む正しいモンジュー像

 11月10日に発表された「ワールドサラブレッドランキング」は、M(マイル)とI(中距離)で140を得たフランケルが首位、離れた2位に130のレーティングでMのエクセレブレーションとIのシリュスデゼーグルFRが並んだ。そこから3ポイント差の127がオルフェーヴル。今季ここまで力を出しつくしたといえるだけのパフォーマンスがないにもかかわらず、総合4位、2400mを中心とするL部門では堂々の世界1位。凱旋門賞馬もブリーダーズCターフ勝ち馬も問題にしていないわけですよ。子細に見ると124にセックスアローワンスの4ポイントを加えたデインドリームが1ポイント差で実質首位となり、欧州ハンディキャッパー各位の抜け目のなさを知ることになるが、それは細かなこと。奇しくも2007年のディープインパクトと同じレーティング、同じ順位でこの部門の世界1位となったことはどれだけ称賛しても足りない。

 下表は最新のワールドサラブレッドランキングに今回の出走馬のJRA発表のプレレーティングを加えたもので、「ランク」の項目は“世界ランキング”の総合順位。ルーラーシップが2度現れるのは、香港でのクイーンエリザベス2世CG1が“世界ランキング”の期間(5/1〜11/6)を外れていて、プレレーティングが本年の成績を対象としているため。この部門のレーティング120以上のスーパーG1級16頭のうちの5頭が出てくるのだから、その豪華さはBCターフG1(1頭)を凌ぎ、凱旋門賞G1(5頭)に劣らない。競馬の売上は落ちているのに、私たちはどんどん豪華でハイレベルなレースが見られるようになっているのだ。


2012年 芝長距離(L)の世界ランキング
ラン
レー
カテ
ゴリ
馬名 生年調教
評価対象レース
( )内は推定
4127オルフェーヴルOrfevre(JPN)2008JPN宝塚記念G1
6126I,LナサニエルNathaniel(IRE)2008GBキングジョージVI世&クイーン
エリザベスSG1 2着他
11124キャメロットCamelot(GB)2009IREダービーG1
11124I,LセイントニコラスアベイSt Nicholas Abbey(IRE)2007IREコロネーションCG1他
11124デインドリームGERDanedream(GER)2008GERキングジョージVI世&クイーン
エリザベスSG1他
18123シームーンSea Moon(GB)2008GBハードウィックSG2
18123ポイントオブエントリーPoint of Entry(USA)2008USAソードダンサー招待G1
18123リトルマイクLittle Mike(USA)2007センUSAブリーダーズCターフG1
123ルーラーシップ ※Rulership(JPN)2007JPNクイーンエリザベスII世C
27122ソレミアIRESolemia(IRE)2008FR凱旋門賞G1
27122デュナデンDunaden(FR)2006FRコーフィールドCG1
27122メアンドルMeandre(FR)2008FRサンクルー大賞G1
27122リライアブルマンReliable Man(GB)2008FRキングジョージVI世&クイーン
エリザベスSG1 4着他
34121ルーラーシップ ※Rulership(JPN)2007JPN宝塚記念G1 2着
121エイシンフラッシュ 2007JPN天皇賞(秋)G1
43120アメリケンAmericain(USA)2005FRコーフィールドCG1 4着
120フェノーメノ 2009JPN天皇賞(秋)G1 2着
118ジャッカルベリーIREJakkalberry(IRE)2006GB(ドバイシーマクラシックG1 3着)
118マウントアトスIREMount Athos(IRE)2007センGB(ジェフリーフリーアSG2)
117ダークシャドウ 2007JPN天皇賞(秋)G1 4着
117ビートブラック 2007JPN天皇賞(春)G1
116スリプトラGBSri Putra(GB)2006GB(プリンスオブウェールズG1 5着)
116L,EレッドカドーGBRed Cadeaux(GB)2006センGB(ヨークシャーCG2)
115ジェンティルドンナ 2009JPN優駿牝馬G1
115トーセンジョーダン 2006JPN大阪杯G2 3着
113オウケンブルースリ 2005JPN京都大賞典G2 2着
112メイショウカンパク 2007JPN京都大賞典G2
112ローズキングダム 2007JPN大阪杯G2 4着
111ジャガーメイル 2004JPN天皇賞(春)G1 4着
ワールドサラブレッドランキング(5/1〜11/6)とJRAプレレーティングを合成、太字はジャパンC出走馬

 オルフェーヴルは06年のディープインパクトと同じく、凱旋門賞G1の無念をここで晴らす形。ただ、凱旋門賞史上稀に見る加速力で抜け出しながら自分からラチに突っ込んだ一人相撲の結果に無念も何もあったものではないし、阪神大賞典G2の汚名返上を期した天皇賞(春)G1で惨敗した経緯も考えると、力をそのまま信頼できない恨みは残る。父のジャパンCG1出走歴でいえば、1998年からの4年で(10)(6)(8)(4)に終わっており、母の父は1991年に1番人気となってゴールデンフェザントUSAの4着に敗れた。もっとも、父も母の父も無縁だった東京優駿G1をこのコースで圧勝しているのだから、それもこじつけの域を出ないが、もうひとつこじつけるなら、芙蓉Sでホエールキャプチャに逃げ切られたり、前走でソレミアIREに差し切られたりしたのはフェミニストなのか牝馬嫌いなのか、どうでもいいといえばどうでもいいが、不思議なのも確か。力通りなら圧勝するとしても、そういった諸々を割り引いて

 凱旋門賞馬ソレミアIREを除くと、ジャッカルベリーIREが2年前にイタリアのG1に勝っただけの今年の招待馬のレベルは一昨年並みの低調さだが、成績表のほぼ下半分を埋めたその一昨年の招待馬の中からシリュスデゼーグルFRのように翌年から飛躍するものも出ている。ソレミアIREにしても凱旋門賞G1前はG2辛勝が最良の成績だったのだ。マウントアトスIREはモンジューIRE産駒。モンジューIREは1999年の凱旋門賞でエルコンドルパサーUSAを捉え、その直仔ハリケーンランは2006年のキングジョージVI世&クイーンエリザベスSG1でハーツクライを3着に下しているので、日本馬キラー血統といえなくもない。自身は凱旋門賞G1のあとにジャパンCG1で4着と敗れ、直仔のジャパンCG1成績も2007年ペイパルブルGB7着、2008ペイパルブルGB14着、2010ジョシュアツリーIRE10着、2011サラリンクスIRE12着というひどいもの。ジャパンCG1に限らず、日本では道悪でなければ出番がないのがモンジューIRE直仔ではある。しかし、そういったこれまでのモンジューIRE像が正しいものでなかった可能性もある。例えば、サドラーズウェルズ直仔が競走馬として多数輸入されて結果が出なかったにもかかわらず、直仔オペラハウスGBは種牡馬として大成功し、孫のシングスピールIREはジャパンCG1に勝った。マウントアトスIREはデビュー時から硬い馬場、平坦コースを好み、今季クマーニ厩舎に移籍してからは破竹の勢いで上昇してきた。2番人気の前走は脚を余してもったいないレース。凱旋門賞馬サキーと同じ牝系も上質。大駆けがあるならこれ。

 ジェンティルドンナの優駿牝馬G1圧勝劇はあるいは東京優駿G1を凌ぐかも知れない大パフォーマンスだった。母ドナブリーニGBがスプリンターだったので、牡馬の超一流が相手だと踏ん張りが利かない恐れがなきにしもあらずだが、凱旋門賞G1のソレミアIRE的な立ち回りができるとすればこの馬をおいて他はない。

 ルーラーシップの母エアグルーヴはジャパンCG1で2年連続2着。1997年はピルサドスキーIREにクビ、1998年はエルコンドルパサーUSAから2 1/2馬身差ながらスペシャルウィークに先着したのだから価値がある。ここ3年ダービー馬の産駒が1、2着を占めている傾向も心強い。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2012.11.25
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