2012天皇賞・春


銀の匙で仕上げる黄金のレシピ

 ドリームジャーニー、オルフェーヴルの兄弟に続いてゴールドシップが皐月賞に勝ち、ステイゴールドとメジロマックイーンの配合による成功の確率が大変なことになっている。今さらながら、論よりファクトということで下表にこの配合を未誕生のものも含めてまとめてみた。いまのところ牡馬なら8割が重賞勝ち馬、6割がG1馬となるという、ニックスを通り越して、これは魔法か錬金術かというくらいの結果が出ている。ドリームジャーニーの成功を受けてこのパターンが急増したのがオルフェーヴル世代であり、オルフェーヴルの影響がはっきりと現れる今年はどこまで増えていることか。JAIRS(ジャパン・スタッドブック・インターナショナル http://www.jairs.jp/)のデータによると、現在、繁殖登録のある父メジロマックイーンの牝馬は57頭。そのうちどれくらいがステイゴールドの種を得るべくビッグレッドファームを訪れているのかは楽しみ。


黄金のステイゴールド×メジロマックイーン配合
馬名毛色生年月日
(予定)

(父メジロマックイーン)
生年祖母祖母の父生産牧場総賞金
(万円)
メジロアレグロ鹿2003/5/18メジロシャープ1995メジロディッシュモガミFRメジロ牧場不出走0.1
ドリームジャーニー鹿2004/2/24オリエンタルアート1997エレクトロアートノーザンテーストCAN白老ファームG184797.1
フェイトフルウォー黒鹿2008/1/11フェートデュヴァン2000マーサズヴィンヤードUSANijinsky白老ファームG211400.1
流産   ポイントフラッグ1998パストラリズムプルラリズムUSA出口牧場  
メジロミドウ黒鹿2008/3/11メジロサンドラ1996カンパナIRESadler's Wellsメジロ牧場中央2勝1440.1
タイアップ2008/4/11マヤノトリンケット1998グレイスドーターサクラユタカオー浜本幸雄氏未勝利254.1
報告なし   メジロシュナイダー1997メジロマスキットモガミFRメジロ牧場  
馬名未登録2008/5/10ネオマックイーン1997シヨノサンフラワーベリファIRE庄野牧場  
オルフェーヴル2008/5/14オリエンタルアート1997エレクトロアートノーザンテーストCAN白老ファームG184324.1
ゴールドシップ2009/3/6ポイントフラッグ1998パストラリズムプルラリズムUSA出口牧場G121724.1
馬名未登録2009/3/16ツーオブハート1999プレイアローンUSALyphard社台ファーム  
ワナビーザベスト鹿2010/3/11シャープキック1996ペッパーキャロルニチドウアラシノーザンファーム  
リヤンドファミユ鹿2010/4/27オリエンタルアート1997エレクトロアートノーザンテーストCAN白老ファーム  
流産   ツーオブハート1999プレイアローンUSALyphard社台ファーム  
馬名未登録2011/5/13ヒカルラフィーネ2003ザスキートUSANureyev大道牧場  
馬名未登録鹿2011/5/31ポイントフラッグ1998パストラリズムプルラリズムUSA出口牧場  
   (2012/1/16)オリエンタルアート1997エレクトロアートノーザンテーストCAN白老ファーム  
   (2012/2/10)ツルマルクィーン2001ヤマフディノスヘクタープロテクターUSA木村牧場  
   (2012/2/28)ローリエ1996ナカミシュンランモガミFR田原橋本牧場  
   (2012/3/28)シャープキック1996ペッパーキャロルニチドウアラシノーザンファーム  
   (2012/4/10)セイランクイーン1999ケイシュウミリオンマグニテュードIRE青藍牧場  
 鹿2012/4/13フェートデュヴァン2000マーサズヴィンヤードUSANijinsky白老ファーム  
   (2012/5/18)ヒカルラフィーネ2003ザスキートUSANureyev大道牧場  
   (2012/5/19)ポイントフラッグ1998パストラリズムプルラリズムUSA出口牧場  

 この成功配合の頂点に立つオルフェーヴルは他との力差が歴然としており、既に菊花賞も勝っていて、そこから200m延びる距離を心配することもない。休み明けの前走のような粗相がなければ押し切って当然だろう。全兄のドリームジャーニーはクラシックで不振、翌年マイルに転じても不振、G3は勝ってもG1では歯が立たないという時期が続いて、本当に強くなったのは5歳を迎えてからだったが、そういった兄の試行錯誤をフィードバックして弟の成功につなげている部分もあるし、全兄弟といえども、そもそもの資質が違って当然という面もある。曲がりくねった道をたどって高みに至るか、まっすぐ頂点に到達するか、その過程は違うにしても、この兄弟の成長力を支えているのがノーザンテーストCAN4×3の近交といえる。ここから先はこじつけになってくるが、付け入る隙があるとすればこのノーザンテーストCAN色の強さではないだろうか。春の天皇賞はノーザンテーストCAN直仔アンバーシャダイと、その直系の孫メジロブライトが勝っている。ジャガーメイルの祖母の父もノーザンテーストCANだ。しかし、それはそれとして、85年の直仔ギャロップダイナから昨年の娘の仔トーセンジョーダンに至るまで、長きにわたって“秋”で示し続けている強い存在感に比べると、“春”のそれは希薄。もし何かに足元をすくわれることがあれば、そこ。

 同じステイゴールド×メジロマックイーンのフェイトフルウォーは、祖母マーサズヴィンヤードUSAが英三冠馬ニジンスキー×ベルモントS勝ち馬リヴァリッジという配合。祖母自身は、3歳秋も深まって、米国ベルモントパークのダート8.5Fで1勝を挙げたのみの凡庸な成績ながら、ミルリーフで知られる大富豪ポール・メロン氏のオーナーブリーディング馬という御令嬢であり、牝系は氏によって育てられた名門。5代母キーブリッジの産駒には米年度代表馬フォートマーシーや、同最優秀3歳牡馬で種牡馬としての成果が現代まで色褪せないキートゥザミントといったメロン氏の名馬が並ぶ。4代母グライディングバイの孫には英セントレジャーG1のシルヴァーペートリアークやアスコットゴールドCG1のパピノーがおり、メロン家を出ても、名門のバックボーンは少なからぬ影響力を保っている。牝系の格と重みで、ひょっとしたら逆転がないかという見立て。

 ギュスターヴクライの父ハーツクライはディープインパクトに最初に土を付け、結果的に先着を果たした唯一の日本馬となった。息子は前走で図らずも(?)父同様の偉業を達成したわけだが、ディープインパクト産駒がここに1頭も出てきていないのに、条件級からここに出てくるに至っただけでも賞賛に値する。そういった父の晩成型の資質とは別に、母ファビラスラフインFRはジャパンCでシングスピールにハナ差2着、祖母メルカルは4000mの牡馬古馬混合G1カドラン賞勝ちと、こちらの長距離戦に対する裏付けも十分過ぎるほど。サンデーサイレンスUSA+ノーザンダンサーのオーソドックスな組み合わせにトニービンIREからゼダーンGB、カルドゥンからフォルティノFRとグレイソヴリンの主流2本を受けている点もピリッとしたスパイスとしての効果が期待できる。

 ノーザンテーストCAN色がどうかと疑問を呈した舌の根も乾かぬうちにこういうのも何だが、やはりトーセンジョーダンは怖い。ジャガーメイルから母の父サンデーサイレンスUSAを引き去った形で、それとは別に祖母に備わった汎用性には現在進行形で底の見えない勢いがあるからだ。その父クラフティプロスペクターはミスタープロスペクター系でもスピードだけが武器といった評価のあったところにアグネスデジタルが登場した。このように突如として化ける力は父系としてのミスタープロスペクターが今なお発展を続ける原動力ともなっている。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2012.4.29
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