2012ダービー


ディープインパクトの豹変

 前年のオークス、ダービーではディープインパクト産駒が全コケしたので、今年のオークスもディープインパクト産駒を全部切ってみようという暴挙に出た人は私を含めて少なくなかっただろうし、そこまで徹底しなくてもいくらかの疑いを抱いた人が多かったであろうことはオークスの単勝オッズの示す通りだが、結果はジェンティルドンナとヴィルシーナがあっさり1、2着を占めた。脱帽である。そこで産駒の東京芝2400mに限った成績を調べてみると、下表で一目瞭然、昨年の苦手コースから今年は得意コースへと一変しているのだった。昨年はオークスとダービー合わせて10頭の産駒が出走し、今年も合計は同じだが、確率はドーンと跳ね上がると考えていい。ディープインパクトの父サンデーサイレンスUSAは、初年度にオークスとダービーに6頭出走させてそれぞれダンスパートナーとタヤスツヨシが勝った。2年目も6頭だったが、ダンスインザダークの2着が最高だった。量の面では既に父を凌いでおり、ここを勝てば質でも父の序盤の成績に並ぶ可能性があると考えて良さそうだ。

 東京のクラシックに先駆けてディープインパクトに吉報を届けたのはフランスで走る英国産の娘ビューティパーラー。仏1000ギニーG1で楽々と抜け出し、父の最初の海外クラシック制覇となった。ディープブリランテは母の父がビューティパーラーと同じヴィルデンシュタイン家の青い勝負服で仏G1イスパーン賞に勝ったルーソヴァージュ。90年代に大成功したリヴァーマン系のほぼ最後の大物で、種牡馬としては仏クロエ賞G3に勝った母ラヴアンドバブルズUSAのほか、オーストラリアで1頭G3勝ち馬を出しただけだが、ウオッカの母の父ルションのように、母系に潜んで主流血脈にナスルーラ血脈を補うことで効果を上げる場合がある。牝系は4代母バブルカンパニーFRの産駒に天皇賞(秋)のバブルガムフェロー(父サンデーサイレンスUSA)、3代母の産駒に菊花賞馬ザッツザプレンティ(ダンスインザダーク)、孫に阪神JFのショウナンパントル(サンデーサイレンスUSA)がいて、サンデーサイレンスUSAが導入された初期からずっと相性の良さを示してきた。5代母プロディースは仏G1サンタラリ賞に勝ち、仏オークス2着となった活躍馬。祖母の父はサンクルー大賞G1の勝ち馬で、その祖父はキングジョージVI世&クイーンエリザベスSG1勝ち馬バステッド。ディープインパクトとの配合ではバステッド4×5の近交となるので、2400mになってステイヤーとしての秘められた資質が明らかになるかも知れない。


東京2400mのディープインパクト
月日レース馬場馬名性齢着順人気単勝
オッズ
馬体
増減母の父
2012/5/20オークスG1ジェンティルドンナ牝3135.6460+4Bertolini
5/20オークスG1ヴィルシーナ牝3223.6432-2Machiavellian
5/20オークスG1キャトルフィーユ牝314723.0450+8Tejano Run
5/203歳未勝利リバーオリエンタル牡3    Green Desert
4/28青葉賞G2エタンダール牡321047.5430-2モンジューIRE
4/28青葉賞G2クランモンタナ牡37619.44700トニービンIRE
4/28青葉賞G2シルクキングリー牡31014131.94660Deputy Minister
4/28陣馬特別1000万下ファタモルガーナセン4135.6476-2エリシオFR
4/21メトロポリタンSOPスマートロビン牡4112.6534-6Lyphard
2/124歳上500万下エルヴィスバローズ牡4513.3480-4Mr. Prospector
2/5早春S1600万下ダコール牡4224.0456-2Unbridled
2/53歳500万下ジョングルール牡3111.7504-2Storm Cat
1/293歳未勝利ジェームズバローズ牡3423.8484-10Gone West
1/293歳未勝利トーセンプラネット牡310717.0492-8Polish Precedent
2011/11/273歳上500万下メジロダイボサツ牡3948.34540メジロライアン
5/29ダービーG1トーセンレーヴ牡39513.5464+8Caerleon
5/29ダービーG1トーセンラー牡311715.8432+2Lycius
5/29ダービーG1コティリオン牡314613.6476+8トニービンIRE
5/29ダービーG1リベルタス牡317116.24860Garde Royale
5/22オークスG1マルセリーナ牝3412.24520Marju
5/22オークスG1ハッピーグラス牝3817153.1442-6アフリートCAN
5/22オークスG1ハブルバブル牝39410.9446+6Loup Sauvage
5/22オークスG1メデタシ牝311941.0426+6クロフネUSA
5/22オークスG1グルヴェイグ牝314310.44420トニービンIRE
5/22オークスG1サイレントソニック牝31515123.3444-2Unbridled's Song
5/73歳未勝利メジロダイボサツ牡3336.2460-12メジロライアン
5/73歳未勝利トーセンエッジ牡3512.1464-6Nureyev
4/30青葉賞G2トーセンレーヴ牡3312.5460-2Caerleon

 ワールドエースの母は独オークスG1(芝2200m)、ポモーヌ賞G2(芝2700m)、サンタバーバラHG2(芝10F)でいずれも3着となった。ポモーヌ賞G2では勝ったヴァレアンシャンテから7 1/2馬身離されているので、距離が長ければ長いほどいいというものでもないが、アカテナンゴ×ビーマイゲストならステイヤーといっていい。母の半弟マンデュロは5歳時にイスパーン賞(芝1850m)、プリンスオブウェールズS(芝10F)、ジャックルマロワ賞(芝1600m)の3つのG1を含め2400mのフォワ賞G2まで5連勝を収めた名馬。4代母の産駒には独2000ギニーG2、ウニオンレネンG2に勝ったマンデルバウムもいるので、なかなかの名門牝系といえる。5代母以前はずっと英国なので、近年流行のいわゆるドイツ牝系と同じには扱えないが、英米血統にドイツの異色の血を加えてサンデーサイレンスUSAで仕上げるパターンはマンハッタンカフェやブエナビスタに通じるものだ。

 ディープインパクトによる包囲網に立ち向かうステイゴールド2騎という構図も成り立つ。ゴールドシップはオルフェーヴルと同じ母の父メジロマックイーンの配合で、牝系は桜花賞に勝った6代母梅城(競走名ハマカゼ)を経て下総御料牧場の星旗USAに遡る。メジロマックイーンはその3代母アサマユリが小岩井農場のアストニシメントGBに種正GB、星友USAという下総御料牧場の血を重ねているので、戦前の日本馬産の遺産がたっぷりと蓄積されている。ただ、祖母の父プルラリズムUSA、3代母の父トライバルチーフGBといった血に東京2400mでの力不足の恐れがなきにしもあらず。そのぶんの

 フェノーメノも祖母の父アヴェロフがシングシング直仔のマイラーで、3代母の父メジャーポーションもミドルパークSやサセックスSなどに勝ったマイラー。とはいえ、母の全兄インディジェナスIREはG2時代の香港国際ヴァーズに勝ち、1999年のジャパンCで12番人気ながらスペシャルウィークの2着に入った。そのときの4着はモンジューIRE、6着がステイゴールドだから立派な2着。母の父デインヒルUSAなら大勢逆転の大駆けも可。

 エタンダールは母の父モンジューが仏・愛ダービーG1と凱旋門賞G1に勝ち、種牡馬として英ダービー馬3頭、愛ダービー馬3頭を出し、祖母の父は英ダービー馬ハイライズを出した。一方、同じ牝系のクラレントは父が1996年のダービーでクビ差2着。母の父も英ダービーG1で猛然と追い込んでシャーラスタニに1/2馬身及ばず2着。このあたりはダービーの要素が濃密な血。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2012.5.27
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