2012有馬記念


ジャングルポケットの逆襲

 2012年の競馬もG1は東京大賞典を含めて残すところあと2つとなった。G1/Jpn1を種牡馬別に見るとディープインパクトとキングカメハメハが(香港を含め)5勝ずつ、ステイゴールドが3勝を挙げたのが目立つ。ディープインパクトには今回の出走馬がなく、キングカメハメハとステイゴールドが3頭ずつ出走させているあたりにはそれぞれの種牡馬の性質がよく表れていて、ディープインパクトの一発必中的な集中力、キングカメハメハの雑食性ともいえる意外なほどの渋太さ、ステイゴールドの集中と弛緩の落差の大きさなど、この1年でよく分かった気がする。それらと対照的に静かな1年を送ってしまったのがジャングルポケットで、G12勝2着2回3着1回の好成績を残した昨年に比べると、今年国内のG1では天皇賞(春)でトーセンジョーダンが2着になっただけ。種牡馬ランキングでも8位から16位へと転落してしまった。それでも、昨年が突出していただけで、G1では年に2度ほどあっといわせることがあるのが平常スタイル。香港ヴァーズG1でジャガーメイルが最低人気で僅差2着に入ったように、ジャングルポケットらしさは失われていないようだ。そこで不気味なのがダイワファルコン。ジャングルポケット産駒はオウケンブルースリ、クィーンスプマンテ、ジャガーメイルが重賞初制覇をG1で飾っているように急速に力をつけて一気の相手強化が応えない場合が多い。これは1代遡ったトニービンIREにも通じるもので、他馬には構わず自分の力を出し切ればよしとするグレイソヴリン的な特徴でもある。母のダイワルージュは新潟3歳Sに勝ち、阪神3歳牝馬S2着、桜花賞で3着の活躍馬だが、全弟ダイワメジャー、半妹ダイワスカーレットの存在が、その競走成績以上のポテンシャルを保証している。ダイワメジャーもダイワスカーレットもこのレースは距離に関していえば守備範囲外であっただろうが、それぞれ3着2回、1勝2着1回の好成績を収めていて、スピードの持続性を武器としてこの条件を乗り切っていた。サンデーサイレンスUSA×ノーザンテーストCANの母にジャングルポケットの配合はジャガーメイルと同じでもあるので、東京の2000mで止まったのに中山2500mでは止まらなかったということが起きても不思議とはいえない。3代目に並ぶノーザンダンサー直仔、ヌレエフとノーザンテーストCANの組み合わせも粘り強さにつながる。


G1/Jpn1で振り返る2012年ここまで
月日レース名場所
距離


馬名性齢母の父
騎手タイム
単勝
オッズ
厩舎
1/25川崎記念川崎2100125スマートファルコン牡7ゴールドアリュールミシシッピアンUSA57武豊2.10.711.1 小崎
2/19フェブラリーS東京16001616テスタマッタ牡6TapitConcern57岩田1.35.4724.3 村山
3/25高松宮記念中京12001810カレンチャン牝5クロフネUSAトニービンIRE55池添1.10.323.9 安田隆
4/8桜花賞阪神16001810ジェンティルドンナ牝3ディープインパクトBertolini55岩田1.34.624.9 石坂
4/15皐月賞中山20001814ゴールドシップ牡3ステイゴールドメジロマックイーン57内田博2.01.347.1 須貝尚
4/29天皇賞(春)京都3200181ビートブラック牡5ミスキャストブライアンズタイムUSA58石橋脩3.13.814159.6 中村
4/29QエリザベスII世C沙田2000134ルーラーシップ牡5キングカメハメハトニービンIRE57リスポリ2.02.3825.5 角居
5/2かしわ記念船橋1600137エスポワールシチー牡7ゴールドアリュールブライアンズタイムUSA57佐藤哲1.36.533.6 安達
5/6NHKマイルC東京1600185カレンブラックヒル牡3ダイワメジャーGrindstone57秋山1.34.513.7 平田
5/13ヴィクトリアマイル東京16001812ホエールキャプチャ牝4クロフネUSAサンデーサイレンスUSA55横山典1.32.447.2 田中清
5/20優駿牝馬東京24001814ジェンティルドンナ牝3ディープインパクトBertolini55川田2.23.635.6 石坂
5/27東京優駿東京24001810ディープブリランテ牡3ディープインパクトLoup Sauvage57岩田2.23.838.5 矢作
6/3安田記念東京1600184ストロングリターン牡6シンボリクリスエスUSASmart Strike58福永1.31.326.7
6/24宝塚記念阪神22001611オルフェーヴル牡4ステイゴールドメジロマックイーン58池添2.10.913.2 池江寿
6/27帝王賞大井2000137ゴルトブリッツ牡5スペシャルウィークSeeking the Gold57川田2.03.023.0 吉田
7/11JDダービー大井20001111ハタノヴァンクール牡3キングカメハメハブライアンズタイムUSA56四位2.05.312.9
9/3スプリンターズS中山12001616ロードカナロア牡4キングカメハメハStorm Cat57岩田1.06.724.4 安田隆
10/8南部杯盛岡16001310エスポワールシチー牡7ゴールドアリュールブライアンズタイムUSA57佐藤哲1.35.911.1 安達
10/14秋華賞京都20001814ジェンティルドンナ牝3ディープインパクトBertolini55岩田2.00.411.3 石坂
10/21菊花賞京都3000181ゴールドシップ牡3ステイゴールドメジロマックイーン57内田博3.02.911.4 須貝尚
10/28天皇賞(秋)東京20001812エイシンフラッシュ牡5Kings BestPlatini58Mデムーロ1.57.3516.6 藤原英
11/5JBCスプリント川崎1400114タイセイレジェンド牡5キングカメハメハメジロマックイーン57内田博1.26.624.7 矢作
11/5JBCクラシック川崎2100139ワンダーアキュート牡6カリズマティックUSAPleasant Tap57和田2.12.5510.5 佐藤正
11/11エリザベス女王杯京都22001615レインボーダリア牝5ブライアンズタイムUSAノーザンテーストCAN56柴田善2.16.3723.0 二ノ宮
11/18マイルChp.京都1600181サダムパテック牡4フジキセキエリシオFR57武豊1.32.9410.5 西園
11/25ジャパンC東京24001715ジェンティルドンナ牝3ディープインパクトBertolini53岩田2.23.136.6 石坂
12/2JCダート阪神18001614ニホンピロアワーズ牡5ホワイトマズルGBアドマイヤベガ57酒井学1.48.8619.9 大橋
12/9香港スプリント沙田12001212ロードカナロア牡5キングカメハメハStorm Cat57岩田1.08.5034.0 安田隆
12/9阪神JF阪神1600181ローブティサージュ牝2ウォーエンブレムUSAシングスピールIRE54秋山1.34.258.1 須貝尚
12/16朝日杯FS中山16001614ロゴタイプ牡2ローエングリンサンデーサイレンスUSA55Mデムーロ1.33.4734.5 田中剛
12/19全日本2歳優駿川崎16001414サマリーズ牝2Hard SpunMr. Prospector54藤岡佑1.41.934.0 藤岡健

 ゴールドシップはこの秋3戦目。オルフェーヴル先輩のこの1年のハチャメチャぶりに比べると随分まじめに勤め上げた印象があるが、デビュー以来2連勝はしても3連勝はしたことがない。このあたりに秘められたステイゴールド性を見ることはできる。そしてまた、ドリームジャーニーとオルフェーヴルの兄弟よりもメジロマックイーン色が強く出ているとすると、ダイユウサクの強襲に屈して2着となった91年の母の父の姿がダブらないでもない。

 ルーラーシップの母エアグルーヴは優駿牝馬、天皇賞(秋)に勝った名牝であり、2度のジャパンCG1・2着は相手がピルサドスキーIREとエルコンドルパサーUSAだからむしろ勝ったレース以上に価値がある。有馬記念では3着、5着に終わっているが、それぞれジャパンCG1の激闘後であったせいもある。キングカメハメハとの配合では、トニービンIREに相性の良いミスタープロスペクター系のパターンであるだけでなく、父の持つヌレエフと祖母の父ノーザンテーストCANというダイワファルコンに共通する部分も浮かび上がる。

 97年にマーベラスサンデーとエアグルーヴをまとめて差し切ったのはブライアンズタイムUSA産駒のシルクジャスティスだった。過去8年連続サンデーサイレンスUSA直系が勝っているが、それ以前にはロベルト系が互角以上の戦果を上げ、特にブライアンズタイムUSA産駒にはマヤノトップガン、ナリタブライアンによる連勝もあった。スカイディグニティは父23歳時の種付けによる産駒。母の父が生まれたのも今から40年以上前なので、10年以上タイムスリップしたかのように思えるが、同じ牧場の生まれでこの配合によるレインボーダリアが今年のエリザベス女王杯に勝っている。父も母もリボー血脈を持ち、リアルシャダイと同じ牝系という点も、晩成の長距離砲としての伸びる余地を感じさせる。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2012.12.23
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