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英・愛リーディングサイアーというよりは実質欧州のリーディングサイアーとして君臨したサドラーズウェルズが王座を退いた後どうなったかを見ておくことは、長くサンデーサイレンスUSA時代が続いた日本の今後を展望する上でも大切なことだろう。90年と、92年から04年まで続いたサドラーズウェルズの首位は、一旦デインヒルUSAに引き取られ、08年はサドラーズウェルズ直仔のガリレオ、09年はデインヒルUSA直仔のデインヒルダンサー、10年は再びガリレオのものとなった。今年もあのフランケルや愛2000ギニーのロデリックオコナー、愛1000ギニーのミスティフォーミーをはじめ多くの活躍馬を擁するガリレオが突っ走る可能性が高いが、勢力でいうとガリレオとモンジューIREのサドラーズウェルズ系に対し、デインヒルUSAダンサーやダンシリらのデインヒルUSA系の2大政党の争いという構図が当分は続きそうだ。日本ではサンデーサイレンスUSAが去った後を別系統のメイショウサムソンやウオッカがつなぐと今年のダービーで浮き彫りになったように、サンデーサイレンスUSAの孫による派閥間闘争という様相を呈している。後継候補本命と見られたアグネスタキオンが早世し、新たなリーダーと目されるディープインパクトにも全幅の信頼は置き辛く、フジキセキ、ダンスインザダークといったベテランもなかなか自分の枠から一歩を踏み出さないといった状況で、予想外の勢力伸張を示しているのがステイゴールドといえるのではないだろうか。重賞勝ちだけでオルフェーヴルの日本ダービーG1、皐月賞G1、スプリングSG2、ナカヤマナイトの共同通信杯G3、フェイトフルウォーの京成杯G3、バウンシーチューンのフローラSG2と4頭で6勝の荒稼ぎ。特に2冠制覇が重い。全部3歳なので、その世代の質が突出しているともいえるのだが、そのような全弟の大活躍に触発されて、今回は◎ドリームジャーニーの復活があるかもしれない。父のステイゴールドがピークの能力を示したのは3月にドバイシーマクラシックG2に勝ち、12月に香港ヴァーズG1を制した7歳時。その父と同じ年齢になった。父の宝塚記念での戦績は4歳時がサイレンススズカの2着でエアグルーヴに先着、5歳時はグラスワンダーUSA、スペシャルウィークに続く3着、6歳時はテイエムオペラオーの4着、7歳時はメイショウドトウIREの4着と、尻すぼみといえなくもないが、皆出席を果たして全て掲示板を確保している。母の父メジロマックイーンは4歳時こそメジロライアンの2着に終わったが、6歳時には圧倒的人気に応えて勝っている。父も母の父も2歳時には活躍していないので、2歳チャンピオンになった息子と同列には扱えないにしても、こと宝塚記念G1を戦うにあたっては7歳という年齢を不安視する必要はなさそうだ。そのキーとなるのは恐らく4×3の近交となっているノーザンテーストCANで、これが早熟さと、長期間にわたって高い能力を維持するアンチエージング力(?)という相反する要素を支えているのではないだろうか。 昨年の宝塚記念G1では、グラスワンダーUSAの息子アーネストリーをスペシャルウィークの娘ブエナビスタが交わして99年のこのレースの仇討ち成立かと見えたところを、ステイゴールド産駒ナカヤマフェスタが交わした。ステイゴールドは99年の中長距離路線でほとんどスペシャルウィークとぶつかっていて、その6戦のうち京都大賞典を除く5回でスペシャルウィークの後塵を拝しているので、ゴール前で第二の仇討ちが成立したことになる。仇討ちというのは際限なく繰り返されるので近代国家では法律で禁止されているが、競馬の世界ではそのようなルールがなく、昨年の仇を今年討つということがあっても問題はない。そこで、○ブエナビスタの逆襲が怖い。一昨年の有馬記念G1のドリームジャーニー、昨年のこのレースと2度ステイゴールド産駒に負けているだけに、淡白なスペシャルウィーク産駒といえども反発のエネルギーは相当溜まっているだろう。そのような冗談はともかく(長々とすみませんでした)、2歳女王となった母のビワハイジが長い骨折休養と不振を経て引退戦となった5歳1月の京都牝馬特別を制して最後に花を咲かせたのもドイツの名門牝系に蓄えられた力によるものだとすると、そこへ更に欧州系、日本土着系の血を重ねられた配合にはまだ奥があり、簡単に燃え尽きるとは考え辛い。 今回は12頭が父系と母系のいずれかでサンデーサイレンスUSAの孫にあたる。一方で、父としての最大勢力は3頭出しのキングカメハメハとなる。そのうち2頭は母がサンデーサイレンスUSAの娘の名牝で、もう1頭がサンデーサイレンスUSAを持たない超名牝。母の格でいえば超名牝の仔ルーラーシップ、名牝の仔トゥザグローリー、そこそこの名牝の仔ローズキングダムの順となるだろう。しかし、サンデーサイレンスUSA王朝の第2の絶頂期である今は、サンデーサイレンスUSA血脈を生かしつつ発展を遂げる若いリーディングサイアーという構図が現実的かもしれない。▲トゥザグローリーは天皇賞(春)で勢いをそがれたが、さすがに3200mでは母トゥザヴィクトリーの個性の強さが足枷となったよう。母はジャパンCで6秒7負けた直後の有馬記念でマンハッタンカフェから0秒2差の3着に粘っている。前走の1秒7程度の差なら、楽々と挽回する可能性を持った血ともいえる。△ローズキングダムは大レースに手が届かなかった“バラ一族”に初めてG1をもたらした。過去の実績の蓄積よりも未来へ伸び行く勢いを重視すれば、このローザネイFR系には計り知れない力が秘められている。キングマンボ〜キングカメハメハとサンデーサイレンスUSA牝馬という先端的な配合の陰で無視出来ない力を及ぼしていると考えられるのはミルリーフ5×4やブレイクニーといった古風ともいえる英国ステイヤー血統で、年齢的に完成期を迎えるこれから、その良さも現れてくるのではないか。ちなみに母ローズバドは2001年のエリザベス女王杯でトゥザヴィクトリーからハナ差の2着。ここにも仇討ち物語が出てきましたね。 ルーラーシップの母エアグルーヴはウオッカが現れるまでは恐らく日本競馬史上牝馬としてはNo.1の競走馬であり、繁殖牝馬としても初仔アドマイヤグルーヴがエリザベス女王杯2勝という実績を残す。ただ、トニービンIREは直仔エアダブリン3着、エアグルーヴも3着、ナリタセンチュリー2着、母の父としても昨年アーネストリーが3着。阪神のG1では勝ち切れないかも。 エイシンフラッシュの父キングズベストは英2000ギニー馬。キングカメハメハと同じキングマンボ直仔で、英・愛リーディングサイアー・ガリレオの叔父にあたる。昨年の凱旋門賞でナカヤマフェスタを斥けたワークフォースの父でもある。母ムーンレディGERは独セントレジャーG2を制したステイヤーで、その父プラティニGERを経由して代表的ドイツ血脈ズルムーが入る。ポストSSを感じさせる異色の血。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2011.6.26
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