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香港の競馬は競走寿命の長いせん馬が中心なので強い馬は長く現役を続け、その間、下から上がってくる馬もいるため当然層が厚くなる。素材が主にオセアニア血統なので1200〜1600mに適し、その分野では世界屈指のレベルを誇る。日本でもこのレースを2000年にフェアリーキングプローンAUSが、06年にはブリッシュラックUSAが制し、スプリンターズSも06年のサイレントウィットネスAUS、昨年のウルトラファンタジーAUSで2勝を挙げた。しかし、その香港競馬も現在は新旧交代の時期を迎えていて、ウルトラファンタジーAUSより更に強かったセークリッドキングダムがシンガポール遠征で地元のロケットマンに敗れ、年度末の総決算ともいえるチャンピオンズマイルG1ではイクステンション、2000mのクイーンエリザベス2世CG1ではアンビシャスドラゴンという新勢力がそれぞれ強力な旧勢力を撃破してしまった。それを踏まえた香港最強クラスの構成がどうなっているのかを分かりやすく示しているのが去る5月27日に発表された「ワールドサラブレッドランキング」(http://www.IFHAOnline.com/)。これは昨年12月1日から本年5月23日に行われた競走についてのレーティングをトップ50までランキングしている。下表の「118」までが、そこから香港と日本の馬を抜粋したもので、そこへJRA発表のプレレーティングを合体させた。アパパネはワールドサラブレッドランキングには掲載されていないが、牝馬のセックスアローワンス4ポイントを加えると、実質的にはランキングに食い込むことになる。それを除くと日港仲良く5頭ずつ、短距離の香港、長距離の日本と棲み分けができていて、その中でそれなりの地位を占めるビューティーフラッシュNZとサムザップNZは、それぞれ長く旧勢力に頭を押さえつけられ、最近は新勢力の台頭に押され気味という微妙な立場でもある。一方の日本勢は近年の安田記念やマイルチャンピオンシップで、ダイワメジャーやウオッカといったより長い距離からのお客さんに席巻される事態が続いたように、長くこの部門では生え抜き(?)の中心勢力が不在だった。ショウワモダンが引退し、エーシンフォワードも今イチ信用を築けないままズルズルと、また今年も安田記念G1がやってきた。 |
| 日港国際レーティング比較 | ||||||
| S | M | I | L | 馬名 | 生年 | 性 |
| 122 | ヴィクトワールピサ | 2007 | 牡 | |||
| 121 | トランセンド | 2006 | 牡 | |||
| 120 | トゥザグローリー | 2007 | 牡 | |||
| 119 | Ambitious Dragon(NZ) | 2006 | セン | |||
| 119 | Irian(GER) | 2006 | セン | |||
| 119 | Sacred Kingdom(AUS) | 2003 | セン | |||
| 118 | Xtension(IRE) | 2007 | 牡 | |||
| 114 | アパパネ | 2007 | 牝 | |||
| 118 | ビューディーフラッシュNZ | 2005 | セン | |||
| 118 | ペルーサ | 2007 | 牡 | |||
| 118 | ルーラーシップ | 2007 | 牡 | |||
| 115 | エーシンフォワードUSA | 2005 | 牡 | |||
| 115 | 115 | サムザップNZ | 2004 | セン | ||
| 114 | スマイルジャック | 2005 | 牡 | |||
| 114 | ダノンヨーヨー | 2006 | 牡 | |||
| 113 | シルポート | 2005 | 牡 | |||
| 113 | リーチザクラウン | 2006 | 牡 | |||
| 112 | 112 | ジョーカプチーノ | 2006 | 牡 | ||
| 111 | 111 | サンカルロ | 2006 | 牡 | ||
| 111 | ストロングリターン | 2006 | 牡 | |||
| 111 | ライブコンサートIRE | 2004 | セン | |||
| 111 | リアルインパクト | 2008 | 牡 | |||
| 110 | ビービーガルダン | 2004 | 牡 | |||
| 109 | クレバートウショウ | 2006 | 牡 | |||
| 108 | コスモセンサー | 2007 | 牡 | |||
| 107 | リディル | 2007 | 牡 | |||
| − | シルクアーネスト | 2007 | 牡 | |||
| 5月27日発表の「ワールドサラブレッドランキング=日港抜粋=」 と出走馬のプレレーティングを合体 | ||||||
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○アパパネは少しずつしか勝たないので、レーティングの手法による限りはなかなか高い評価に至らないが、さすがに前走で破った相手はブエナビスタだから、3歳時のレーティングからは大きな上積みがあった。テイエムオペラオーに見るように、このような省エネ型名馬は信頼性が高く長く好成績を持続できるものだ。母ソルティビッドUSAが純北米血統で、実際に3歳1月までに短距離で3勝を挙げた後は不振が続いたので、娘の古馬となっての成長力がどうかと見ていたのだが、そのあたりの不安も前走で払拭した。少なくともこの距離なら、何の問題もなかった。父の産駒が先週の不良馬場(一部重)で芝ダート不問で4勝を挙げているように、晴雨兼用型なのも心強い。 ▲リディルの母エリモピクシーはエリザベス女王杯に勝ったエリモシックの全妹。このレースに先だって行われる英ダービーG1では、エリザベス女王陛下の持ち馬カールトンハウスが本命になっており、そういう縁でこちらも勢いづく可能性がないとはいえないだろう。母自身、エリザベス女王杯で4着となったり、1600mのオープン、ファイナルSに勝ったりとそれなりの実績がある。金鯱賞のパッシングパワーや函館記念3連覇のエリモハリアー、日経新春杯のエリモダンディーといった活躍馬が出る名血デプグリーフUSA系で、アグネスタキオン×ダンシングブレーヴUSAという爆発力のある種牡馬をしっかり受けとめる力のあるファミリーだ。 △サムザップNZは4代母が米国産で、そこにサートリストラム系、ソヴリンエディション系と続けてオセアニア血統が入り、母の父がミスタープロスペクター系のアメリカ馬、そして父シンコウキングIREがアイルランド産の高松宮記念勝ち馬。21世紀馬産の大きな流れである血統のグローバル化を体現しているかのようだ。昨年のスプリンターズS勝ち馬ウルトラファンタジーAUSの父がフェアリーキング直仔の人気種牡馬エンコスタデラゴだったように、オセアニア経由のフェアリーキング系は威力倍増と見ていいかも。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2011.6.5
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