2011秋華賞


魔法の牝系が演出する波乱

 2008年のローズSは桜花賞馬レジネッタが1番人気3着、オークス馬トールポピーは2番人気6着と崩れた。秋華賞ではトールポピーが1番人気、レジネッタは2番人気に支持されたものの、巻き返すどころかそれぞれ10着、8着と更に着順を下げてしまった。今年がそれに似た状況だとすると、その年の3連単10,982,020円という恐ろしい大荒れが再現される可能性がある。そこで、2007年のこの欄で使った秋華賞穴馬一覧をリサイクルして下に示した。顕著な血統的傾向を見出せるわけではないとしても、サンデーサイレンスUSAを別にすると、ノーザンテーストCANやブライアンズタイムUSA、フレンチデピュティUSAの活躍が目に付き、母が重賞勝ち馬である場合もかなりのパンチ力が期待できる。

 そのように大荒れ前提で見た場合、浮上するのがマイネソルシエール。母マイネソーサリスは2005年に1000万特別勝ち直後の愛知杯を13番人気で勝っており、その父がブライアンズタイムUSA。祖母の父ギャロップダイナはノーザンテーストCAN直仔で、シンボリルドルフを破って金星を挙げた1985年秋の天皇賞が13番人気だった。母ひとりで秋華賞大穴パターンを完結させてしまったようなものだが、現3歳が2世代目の産駒となる父ロージズインメイUSAにも、そろそろ一発があっていい。現役時代は4歳春からの4連勝でホイットニーHG1を制し、BCクラシックG1ではゴーストザッパーの2着、翌年にドバイワールドCG1を圧勝した競走成績は文句のないもの。ちなみにロージズインメイUSAのひとつ下で同じ勝負服で走ったキトゥンズジョイは同じ時期に米国の芝で活躍し、同じ年にそれぞれ日米で種牡馬となった。米国に残ったキトゥンズジョイの方はオーナーのラムジー夫妻に次々と重賞勝ち馬を提供し、先週は産駒ステファニーズキトゥンがアルシバイアディーズSでG1勝ちを果たした。それにあやかったロージズインメイUSA産駒の大駆けがないだろうか。


秋華賞 歴代穴馬の血統
年度着順人気馬名母の父
1996
1
5
ファビラスラフインFRFabulous DancerMercalleKaldoun
3
7
ロゼカラーShirley HeightsローザネイFRLyphard
1997
3
9
エイシンカチータバンブーアトラスエイシンハピネスノーザンテーストCAN
1998
2
14
ナリタルナパークブライアンズタイムUSAルナパークノーザンテーストCAN
1999
1
12
ブゼンキャンドルモガミFRブゼンスワンアスワン
2
10
クロックワークリアルシャダイUSAケイワンマリオンゲイメセンUSA
2000
1
10
ティコティコタックサッカーボーイワンアイドバンブーブライアンズタイムUSA
2
7
ヤマカツスズランジェイドロバリーUSAフジノタカコマチコリムスキーUSA
2002
3
7
シアリアスバイオタマモクロスコミニュケーションマルゼンスキー
2003
3
8
ヤマカツリリーティンバーカントリーUSAリンデンリリーミルジョージUSA
2004
2
5
ヤマニンシュクルトウカイテイオーヤマニンジュエリーNijinsky
3
10
ウイングレットタイキシャトルUSAエアウイングスサンデーサイレンスUSA
2005
3
5
ニシノナースコールブライアンズタイムUSAノーブルドノールノーザンテーストCAN
2006
2
5
アサヒライジングロイヤルタッチアサヒマーキュリーミナガワマンナ
2007
2
7
レインダンスダンスインザダークレンIIUSABob Back
2008
1
11
ブラックエンブレムウォーエンブレムUSAヴァンドノワールヘクタープロテクターUSA
2
8
ムードインディゴダンスインザダークリープフォージョイGBSharpo
3
16
プロヴィナージュフレンチデピュティUSAボーンスターサンデーサイレンスUSA
2010
2
6
アニメイトバイオゼンノロブロイレーゲンボーゲンフレンチデピュティUSA
母の太字は重賞勝ち馬

 ホエールキャプチャはカレンチャンのスプリンターズSG1勝ちで勢いに乗るクロフネUSAの産駒。こちらもローズSG2で春の雪辱を果たして勢いに乗っている。母の父がサンデーサイレンスUSAというパターンは朝日杯のフサイチリシャール、エンプレス杯などに勝ってヴィクトリアマイルG1・2着のブラボーデイジー、関東オークスのユキチャンなどがいて、成功といえば成功、G1に勝ち切れないといえばその通りなのだが、この馬の場合は牝系がひと味違う。3代母タレンティドガールは1987年のエリザベス女王杯でマックスビューティの三冠を阻止した名牝で、そこに名馬ナシュワンを配合して生まれたのが祖母エミネントガールGB。英国に発した小岩井の名門ビューチフルドリーマーGBに再び英国的良血を注入したことになる。そのあたりがこの秋の成長につながっているとすると、G1の壁はないようなものだ。

 アヴェンチュラは2008年の大波乱の戦犯となったトールポピーの全妹だが、こちらは骨折のために春を全休し、姉が3戦目でオークスを制した3歳春のキャンペーンを秋にずらした格好になる。祖父がトニービンIREとサンデーサイレンスUSA、3代目にヌレエフとエルグランセニョールというノーザンダンサーの代表的な直仔が並び、3代母マデリアがフランス3歳春の三冠牝馬、5代目にゼダーンGBとフォルティノFRのグレイソヴリン直仔が並ぶ血統表は高級感漂うデザインで隙がない。ただし、ジャングルポケットに京都内回りが似合わないのは懸念材料。

 凱旋門賞G1を制したデインドリームはドイツ産の牝馬。母はデインヒルUSA直仔でフランス牝系だからドイツらしさは半分くらいだが、サラブレッドの血統市場の国境が薄らいでくると、いつまでも門外不出のドイツ血統として残れるわけでもないし、西ヨーロッパの血統と組み合わされることで新たな活力が生まれる面もある。ピュアブリーゼは父母ともにドイツ産だが、母ピューリティーGERの両親は英愛仏米の混成で、やはり半分くらいのドイツ血統。父モンズーンはドイツの年度代表馬で種牡馬としても3度ドイツのチャンピオンとなり、産駒はシロッコからスタチェリータまで世界中の芝に適性を示す。母の父パントレセレブルUSAはデインドリームに破られるまで凱旋門賞のレコードを保持した名馬で、祖母の父ベーリングは仏ダービー馬、3代母の父もサドラーズウェルズと、徹底して欧州2400m型の種牡馬が配合された。父も母も2400m型でありながら、ノーザンダンサーやレイズアネイティヴを持つ母と、それらを持たない父との組み合わせによるアウトブリードで、これまでにないような力を引き出すのがこの配合の先端的な部分。

 カルマートは母キープクワイエットがノーザンテーストCAN4×3の近交馬で、サンデーサイレンスUSAも持つ。父のシンボリクリスエスUSA産駒にはサクセスブロッケン以外G2楽勝G1善戦というのパターンが多く、先週の南部杯のダノンカモンでもあと一歩足りなかった。3代母グローバルダイナもG3はいくらでも勝つがエリザベス女王杯3着、宝塚記念3着という馬だから、2、3着付けの狙いで面白いかも知れない。

 メモリアルイヤーは九州産で前走の霧島賞1500mが最長走破距離だから、何ぼなんでもという存在。母の父はサクラバクシンオーだし。それでも、サンデーサイレンスUSA直系の父の母系深くには、かつてのこのレースの穴馬に見られたヴェイグリーノーブルの血が潜み、母の父にはノーザンテーストCANがあり、ヌレエフ×ノーザンテーストを経由してノーザンダンサー4×5になっている。このように、客観的にはこのレースの穴馬の要素を豊富に持つ。3代母フジタカレディといえば、マックスビューティの母だから、対ホエールキャプチャに限っていえば、24年越しの遺恨を晴らす機会。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2011.10.16
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