2011皐月賞


立て黄金の三銃士

 日本軽種馬協会がインターネットで提供している血統情報サービス「JBISサーチ」http://www.jbis.or.jp/は手軽に様々なデータにアクセスできて重宝する。種牡馬ランキングもいろいろな形で出力することができて、たとえば「世代別」で抽出すると、産駒成績を生まれ年毎に絞った上でランキングができあがる。今年のクラシック世代である2008年生まれのランキングを重賞での収得賞金順に並び替えたのが表1。左端の「順位」は全収得賞金順でのものだから、産駒に重賞で強いものや大物がいれば全般順位下位から上昇していることが分かる。

 混戦と呼ばれる今年の牡馬クラシック、その第一弾である今回は、ディープインパクトとステイゴールド産駒が3頭ずつ、アグネスタキオンとロックオブジブラルタルIREが2頭ずつと、意外にもランキングには忠実な勢力分布になったのではないだろうか。ただ、1位ディープインパクト、2位アグネスタキオンは常識的な線としても、3位ステイゴールドは良い方の想定外として目をひく。これまで産駒が早い時期からクラシック路線に乗ってくる例はそれほどなく、あってもフィリーズレビューのマイネレーツェルや朝日杯のドリームジャーニー、東スポ2歳Sのナカヤマフェスタのような単発で、しかも、ドリームジャーニーやナカヤマフェスタが大きな成果を上げたのはクラシックより後のことだったという事実もある。今回のように一大勢力を形成して臨むのは初めてのことになる。


表1)世代別サイアーランキング(2008年生まれ、サラ総合、重賞収得賞金に並び替え)
順位種牡馬名出走勝利重賞勝ち収得賞金(万円)代表産駒
回数頭数回数頭数回数頭数全般重賞
1ディープインパクト385108674833111,78538,379マルセリーナ
2アグネスタキオン31310047367470,53731,123レーヴディソール
9ステイゴールド3557723193342,57417,871オルフェーヴル
5フジキセキ3128736312149,07616,764サダムパテック
4サクラバクシンオー3167638302154,07016,148グランプリボス
11クロフネUSA3257431233340,35115,627ホエールキャプチャ
17ワイルドラッシュUSA2836033236226,9289,310クラーベセクレタ
14ロックオブジブラルタルIRE2426922161130,8579,298エイシンオスマン
19ファルブラヴIRE1834418111120,8868,366ダンスファンタジア
6マンハッタンカフェ2728841331147,4618,096トレンドハンター
JBISサーチ(http://www.jbis.or.jp/)より。4月19日現在

表2) ステイゴールドのマイナー血統好み
産駒生年母の父主な成績
コスモプラチナ2003グルームダンサーUSA262マーメイドSG3
ソリッドプラチナム2003クリエイターGB226マーメイドS
ドリームジャーニー2004メジロマックイーン808有馬記念G1、宝塚記念G1
アルコセニョーラ2004モガンボUSA254新潟記念G3、福島記念
サンライズマックス2004ダンシングブレーヴUSA16エプソムCG3、小倉大賞典G3
マイネレーツェル2005サクラユタカオー27ローズS、フィリーズR
ナカヤマフェスタ2006タイトスポットUSA190宝塚記念G1、凱旋門賞G1・2着
シルクメビウス2006ポリッシュネイビーUSA288東海S、ユニコーンS
オルフェーヴル2008メジロマックイーン66スプリングSG2
ナカヤマナイト2008カコイーシーズUSA40共同通信杯G3
フェイトフルウォー2008メジロマックイーン66京成杯G3
※は産駒誕生年の母の父のブルードメアサイアーランキングにおける順位

 ステイゴールドと他のサンデーサイレンスUSA後継種牡馬との最大の違いは、活躍馬を出した配合相手の血統の多様さだろう。表2では重賞勝ち産駒の母の父が、当該馬が生まれた年のブルードメアサイアーランキングで何位だったかを示した。見れば数字が大きいのは分かりますよね。これは供用地の地理的な背景が大きいが、それによってサンデーサイレンスUSA血脈に備わっていた可能性を拡大したということは間違いのないところ。このレースはブライアンズタイムUSAのボックスとかサンデーサイレンスUSAのボックスで当たるというケースが多かったので、ステイゴールド産駒3頭のボックスで狙うという手もあるが、その中から1頭ピックアップするならナカヤマナイトだろう。母の父カコイーシーズUSAはアリダー直仔の欧州での活躍馬で、米国に渡ってターフクラシックG1に勝ったほか、ナシュワンにクビ差迫ったキングジョージVI世&クイーンエリザベスSG1の2着が光る。種牡馬としてはアリダー系らしいパワー優先の傾向を示して帝王賞のコンサートボーイや川崎記念のエスプリシーズらが代表産駒となった。母の父としてはこれまでエーデルワイス賞のマサノミネルバを出した程度だが、このあたりはむしろステイゴールドのマイナー志向に合致するものとしてプラスと捉えるべきだろう。祖母の父マルゼンスキーはスペシャルウィークをはじめサンデーサイレンスUSA血脈との相性の良さが証明済みの日高血統。3代母の産駒にマイナー重賞時代のスプリンターズSに勝ったウィニングスマイルがいるほかは、ダート色の強い地味なファミリーだが、そこに雑草的な逞しさを見出すこともできる。

 オルフェーヴルはドリームジャーニーの全弟で、母の父はメジロマックイーン。ドリームジャーニー誕生当時はブルードメアサイアーとして駆け出しであったため、ランキングでは問題にならない808位にあったメジロマックイーンも、ドリームジャーニーの活躍によって2008年には66位まで上昇した。▲フェイトフルウォーもメジロマックイーンの娘の仔なので、これら2頭の活躍による上乗せもあり、今年4月19日現在のブルードメアサイアーランキングでは21位まで上がってきた。ドリームジャーニーは朝日杯勝ちからクラシックで伸び悩み、古馬になって大変身を遂げたが、3歳になって停滞した点については軌道修正されてくるはずで、そのままドリームジャーニーの轍を踏むことはないだろう。オルフェーヴルの方は近親の活躍馬は全兄だけといっていいファミリーだが、フェイトフルウォーは英セントレジャーG1のシルヴァーペートリアークや、イングランディーレが挑戦した2004年のアスコットゴールドカップG1勝ち馬パピノーが出る牝系で奥が深い欧州型だけに、ダービーで真価を発揮しそうだ。

 対照的な良血エリート軍団といえるのがディープインパクト産駒の3頭。桜花賞馬マルセリーナのように十分な間隔を開けて臨むのが良いのか、あるいは敗戦を糧に軌道修正を施して大一番に向かうのがいいのか、そのあたり、初年度産駒が避けられない試行錯誤を強いられることにはなる。トーセンラーダノンバラードはいずれも母の父がミスタープロスペクター系。リファール4×4の前者はどちらかというと中山向きの瞬発力が持ち味ではないか。後者は昨年のNHKマイルCG1の覇者ダノンシャンティと同じヘイロー3×3で3代母も同じ名牝バラード。東京に向くのはこちらかも。

 最終的にはディープインパクトが話題を独占した感のあるこの世代の新種牡馬だが、デインヒルUSA系の大物ロックオブジブラルタルIREもギリギリになって2頭を送り込んできた。大レースに強い父系だけに、プレイエイシンオスマンの2頭には要注意。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2011.4.24
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