2011高松宮記念


ミスワキは魔法の杖

 スプリンターズSが暮れの中山に移って1200mの頂点に置かれたのが1990年。その後、1996年にはこのレースが1200mに短縮されて、他のカテゴリーと同様に春秋対称の形となった。それからもうかなりたつわけだが、スプリンターズS連覇を果たしたのは93、94年のサクラバクシンオーのみ。高松宮記念はまだ連覇したものがいない。高松宮記念→スプリンターズSやスプリンターズS→高松宮記念の連勝は、フラワーパーク、トロットスター、ビリーヴ、ローレルゲレイロの4頭が達成しているが、それより長い期間、力を保たなければいけない同一レース連覇というのはスプリント部門では特に難しいようだ。そのような偉業を達成しただけあって、サクラバクシンオーはスプリンター種牡馬の第一人者としての地位を長く保つことになるわけだが、大レースになると2002年のこのレースに勝ったショウナンカンプだけ。サンデーサイレンスUSAが余技(?)でスプリンターズSと高松宮記念合わせて6勝を挙げているのに比べると、見劣りがしたのも事実。しかし、昨年後半から流れが変わってきたようで、3歳のダッシャーゴーゴーがスプリンターズSG1で2位入線(4着降着)、2歳はグランプリボスが朝日杯G1に勝つなど、これまで得意なようで実は苦手な分野で実績を残すようになってきた。それまでもシーイズトウショウやカノヤザクラといった牝馬が大レースでいいところまで行くケースはあったが、底力で勝負できる牡馬が現れるようになったのはサクラバクシンオー産駒の傾向の変化だろう。ダッシャーゴーゴーは阪神1200mのセントウルSでグリーンバーディーの追い込みを凌ぎ、スプリンターズSG1でウルトラファンタジーAUSにハナまで迫った。短距離王国香港の強豪に唯一互角の勝負を挑める日本馬でもある。その底力がどこから来ているのかというと、やはり第一に母の父ミスワキの存在がある。ミスワキは直仔がブリーダーズCクラシックG1、凱旋門賞G1、ジャパンCG1の世界3大チャンピオンシップにすべて勝っている唯一の種牡馬だが、母の父としてはさらに優秀で、G1級だけをピックアップしても下表の通り豪華な顔ぶれ。多種多様な配合からサイレンススズカ、ダイラミ、そしてシーザスターズと複数のスーパースター級を送り出しているのも強調できる。リボー系の祖母の父もやはり名ブルードメアサイアーで、特に米国では娘の産駒にG1馬を量産している。母系に入って良く、大レース向きということでは母の父に共通する。全体に良血を隙間なく並べた配合で、何というか高級感がある。名スプリンター・サクラバクシンオーにとって初めて父親超えを期待できる産駒の登場といえる。

母の父ミスワキの成功
馬名 産地 生年 主な勝ち鞍
ヨハンクアッツFR Johann Quatz 1989 Sadler's Wells リュパン賞G1
エルナンドFR Hernando 1990 Niniski 仏ダービーG1、リュパン賞G1
ジムワキ Jimwaki 1993 Gem Master ブラジル大賞G1、J.A.デアルメイダプラード銀杯G1
タイキフォーチュンUSA 1993 シアトルダンサーUUSA NHKマイルC
サイレンススズカ 1994 サンデーサイレンスUSA 宝塚記念
ダイラミ Daylami 1994 Doyoun ブリーダーズCターフG1、キングジョージVI世&ク
イーンエリザベスSG1、愛チャンピオンSG1、エク
リプスSG1、コロネーションCG1、マンノウォーSG1、
仏2000ギニーG1
ドクターフォン Dr Fong 1995 Kris S. セントジェームズパレスSG1
ガリレオ Galileo 1998 Sadler's Wells 英ダービーG1、愛ダービーG1、キングジョージVI
世&クイーンエリザベスSG1
ブラックサムベラミー Black Sam Bellamy 1999 Sadler's Wells タタソールズゴールドCG1、ジョッキークラブ大賞G1
ランドシーア Landseer 1999 デインヒルUSA 仏2000ギニーG1、キーンランドターフマイルSG1
ザッツザプレンティ 2000 ダンスインザダーク 菊花賞
ダラハニ Dalakhani 2000 Darshaan 凱旋門賞G1、仏ダービーG1、リュパン賞G1、クリテ
リウムアンテルナシオナルG1
ロッツオブホープ Lots of Hope 2000 Candy Stripes ディアーナ大賞G1
マイタイフーン My Typhoon 2002 Giant's Causeway ダイアナSG1
シーザスターズ Sea the Stars 2006 Cape Cross 凱旋門賞G1、英ダービーG1、英2000ギニーG1、愛
チャンピオンSG1、エクリプスSG1、インターナショナ
ルSG1

 レッドスパーダはフェブラリーSのメイショウボーラーと同じ父と母の父の組み合わせ。メイショウボーラーには2006年のスプリンターズSでテイクオーバーターゲットAUSの2着に食い込んだ実績もあるし、父のタイキシャトルUSAは1997年のスプリンターズを3歳で制した。祖母はランパートH米G2など重賞2勝を挙げた活躍馬で、孫に2007年、2008年と2年連続で米年度代表馬となったカーリンが出た。母系の深いところには米国の異系血脈がたっぷりと入っているので、1200mで才能開花というケースは多いにある。

 同じタイキシャトル産駒の▲サマーウインドはダートの短距離で頂点に立ったが、現役時代のタイキシャトルUSAはダートから芝に転じて飛躍したということがあるし、母のシンウインドはスワンSと京王杯SCの勝ち馬。高松宮杯で2着の実績もある(ただし当時は2000m)。3代目に並ぶギャラントマン(ベルモントS)やタマナーFR(ヒデハヤテの父)といった名前は軽いタイムスリップ感を伴なうものだが、そういうアンバランスが逆に活力を生むこともあるのかも。4代母の父ヴィルモリンも、かつての名スプリンターの母系にしばしば見ることができる。

 ヘッドライナーは直線平坦コースでしか勝ち鞍がない従来型サクラバクシンオー産駒だが、母の父がヌレエフならパワーもあるはずだし、今どき珍しく全体にハイペリオン色の濃い配合なので、加齢による良い方への変化がある可能性も残している。祖母はデラウェアH米G1の勝ち馬で、曾孫にトゥザヴィクトリー、その仔にトゥザグローリーがいてタイムリーな牝系ともいえる。

 ショウナンアルバは秋華賞のブラックエンブレム、チューリップ賞のエアパスカル、シリウスSのキングスエンブレム、アンタレスSG3のウォータクティクスと同じ2005年生まれのウォーエンブレムUSA産駒。種付けに問題のあったウォーエンブレムUSAは種牡馬入り2年目に関係者の努力の甲斐あって34頭の産駒を得ることに成功した。それが2005年生まれの世代で、うち5頭が重賞勝ち馬となっているのだから優秀。ブラックエンブレムのような大駆けがあるかも。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2011.3.27
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