2011マイルチャンピオンシップ


コレ師の海外開拓史

 ブリーダーズCマイルにヨーロッパのスプリンターを連れていけば成功するのではないかと最初に思いついたのは仏のロベール・コレ調教師ではないが、実際に成功させたのはコレ調教師が最初だった。欧州からは第1回のBCマイルに2頭、第2回に6頭が挑戦して、それぞれ帰化馬ロイヤルヒロイン、地元馬コジーンに敗れている。ラストタイクーンIREはそこまで、キングズスタンドS、スプリント選手権の2つのG1を含む5つの重賞勝ちすべてが5F(1000m)でのものだったが、1986年、サンタアニタでの第3回BCマイルG1に挑むと、単勝35倍の人気薄ながら好位から抜け出し、パレスミュージックUSAの追撃をアタマ差抑えて欧州勢によるマイル初制覇を達成した。その後、名牝ミエスクの連覇などを挟んで、1990年に勝ったロイヤルアカデミーIIUSAはラストタイクーンIREの系譜につながるスプリンターによる勝利だった。ブリーダーズCが面白かったのは、欧州から距離やダートや2歳馬をいろいろ挑戦させていた開発期で、そういったことがひと通り達成されてしまうと、近年のようにカテゴリを増やす方向に進まざるを得ないのだろうが、それが成功しているのかどうかは何ともいえない。脱線しました。ラストタイクーンIREのその後のシャトルスタリオンとしての成功、日本でも不振といわれる中、桜花賞馬アローキャリーを出したことは周知の通り。今回、ロベール・コレ調教師が連れてきたイモータルヴァースIREはラストタイクーンIREの姪にあたり、勝負服も同じ。今回の挑戦は日本競馬への対応ということになるが、これはコレ調教師、1987年のジャパンC、ルグロリューGBによって既に成功させている。父のピヴォタルは下表にあるように各世代2頭平均でG1勝ち馬を送る有能な種牡馬。ガリレオらのクールモア系種牡馬ほどプロモーションが盛んでないこともあって印象は地味だが、マイルで強く、時に2400mのクラシック馬も出すという種牡馬としては理想的な資質を備えている。日本では知名度が低いため毎年1頭程度が輸入されるだけで、それでは成績も上がらないので知名度も低いままという循環にあるが、その父ポーラーファルコンはヌレエフ系のスプリンター、コジーン血脈が入っていることからも日本向きの要素は多い。母はやはりロベール・コレ師の管理馬。10年前の今ごろ、現役最終戦となった仏G3フィユドレール賞ではスミヨン騎手を背に2着となった。父母ともにノーザンダンサー系×ナスルーラ系というオーソドックスな配合であり、それでいて3/4同血のヌレエフとサドラーズウェルズを組み合わせたり、3代目に軽いコジーンと重いミルリーフ、4代目に英セントレジャー馬バスティノとサヤジラオを対置するなど芸が細かい。3代母の産駒に愛ダービーのアイリッシュボール、孫に仏ダービーのビカラとアサート、愛セントレジャーのユーロバードがいる牝系も奥が深い。


静かな大種牡馬ピヴォタル 〜産駒のG1勝ち一覧〜
PIVOTAL 牡、1993年生、栗毛、英国産、父Polar Falcon、母Fearless Revival、母の父Cozzene
【主な成績】英で2、3歳時6戦4勝。ナンソープSG1(5F)、キングズスタンドSG2(芝6F)
産駒生年母の父G1勝ち鞍
ゴールデンアップルズGolden Applesf1998KaldounビヴァリーD.S(9.5F)
イエローリボンS(10F)
デルマーオークス(9F)
カイラキーKyllachym1998SongナンソープS(5F)
シルヴェスターレディSilvester Ladyf1998ソヴィエトスターUSAディアーナ賞(独オークス、2200m)
コーリストChoristf1999Chief SingerプリティポリーS(10F)
メガヘルツMegahertzf1999RahyジョンC.メービーH(9F)
イエローリボンS(10F)
ソムヌスSomnush2000Night ShiftスプリントC(6F)
モーリスドギース賞(1300m)
フォレ賞(1400m)
ピアレスPeeressf2001Primo DominieロッキンジS(8F)
サンチャリオットS(8F)
シーレSaoiref2002デインヒルUSA愛1000ギニー(8F)
エクセレントアートExcellent Artm2004Seeking the GoldセントジェームズパレスS(8F)
リーガルパレードRegal Paradeh2004KingmamboスプリントC(6F)
モーリスドギース賞(1300m)
ファルコFalcom2005Unbridledプールデッセデプーラン(仏2000ギニー、1600m)
ハーフウェイトゥヘヴンHalfway to Heavenf2005Indian RidgeサンチャリオットS(8F)
ナッソーS(9F192yds)
愛1000ギニー(8F)
ヴァーチャルVirtualm2005Exit to NowhereロッキンジS(8F)
サリスカSariskaf2006Muhtarram英オークス(12F10yds)
愛オークス(12F)
バズワードBuzzwordm2007デインヒルUSA独ダービー(2400m)
シユーニSiyounim2007デインヒルUSAジャンリュックラガルデール賞(2歳、1400m)
イモータルヴァースImmortal Versef2008Sadler's Wellsジャックルマロワ賞(1600m)
コロネーションS(8F)

 サプレザUSAはロベール・コレ師の子息ロドルフ・コレ師によって3度目の挑戦となる。同期の牝馬にゴルディコヴァというミエスク超えの1600mの名牝がいて、それでも間隙を縫うようにG1勝ち3つを積み上げたのだから勝負強さは大したものだ。地味な牝系にミスタープロスペクター系×プレザントタップを重ねたギャンブル性の高い配合で、ここまでの実績があれば賭けは成功しているし、ここ一番での爆発力も期待できる。

 キョウワジャンヌの母アサカフジUSAは名牝系に名種牡馬だけを配合されてきた隙のない名血。サンデーサイレンスUSA的底力とトニービンIRE的決め手を兼備したハーツクライを父に据えたことで、兄キョウワロアリング(北九州記念)や姉ヘイローフジ(京阪杯3着)より距離対応の幅が広がったことに加え、脚質面での機動性が増している。1600mならここ2戦以上の決め手を発揮できる可能性もある。

 リディルの母エリモピクシーは京都牝馬S3着のほか、愛知杯と福島牝馬Sの3着、エリザベス女王杯4着の成績を残す活躍馬。その全姉エリモシックは1997年にダンスパートナーをクビ差下してエリザベス女王杯を制した。ダンシングブレーヴUSA血脈の影響が強く、嵌れば強烈な脚を使えるし、タフなG1の流れの方が持ち味を生かせる。

 エイシンアポロンUSAの母は2歳時に愛G2デビュターントS(7F)に勝った。3歳時はクラシック路線を歩んで伸び悩み、アメリカンオークスG1でシーザリオの10着となって引退したが、3代母バリンデリー、4代母ミスマノンと遡る良血だけに、可能性としてはG1級のものがあったかもしれない。父はG1・6勝の21世紀最初の名馬で、この母との組み合わせではストームキャット、サドラーズウェルズ、リファールを経由してのノーザンダンサー4×3×4となる。力強さを優先するならこれ。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2011.11.21
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